第7回|「私は」を消しても、誰の話か分かる?

主語を減らしてみる3分実験

日本語では、主語を書かなくても意味が通じることがあります。

では、どこまで消しても大丈夫なのでしょうか。

まずやってみる

1. 元の文章を読む

私は朝7時に家を出た。私は駅まで歩いた。私は改札の前で友達を見つけた。私は友達と一緒に電車に乗った。

意味ははっきりしています。

でも、「私は」が何度も出てきます。

2. 二つ目以降の「私は」を消す

私は朝7時に家を出た。駅まで歩いた。改札の前で友達を見つけた。友達と一緒に電車に乗った。

誰が歩いたのか、分かりますか?

多くの場合、最初の「私」がそのまま続いていると読めます。

3. 人物を一人増やす

私は朝7時に家を出た。駅まで歩いた。改札の前で友達を見つけた。友達は急いでいた。電車に乗った。

最後の「電車に乗った」のは、誰でしょう。

  • 私?
  • 友達?
  • 二人?

少しあいまいになりました。

4. 必要な場所だけ主語を戻す

私は朝7時に家を出た。駅まで歩いた。改札の前で友達を見つけた。友達は急いでいた。二人で電車に乗った。

あるいは、

友達は急いでいた。私は先に電車に乗った。

主語は多ければいいのでも、少なければいいのでもありません。

ここから種明かし

文章では、書いていない情報も、前後から補って読まれます。

最初に「私は」と書けば、その後の動作も同じ人だと考えやすくなります。

でも途中で別の人物が出てくると、その前提が崩れることがあります。

つまり今回は、

読者が「誰の話だ」と思っているかを見ながら、主語を消す

実験でした。

ここまでの答えを見比べてみよう

<見るところ> <たとえば>
毎回「私は」 誰の行動か明確だが、繰り返しが多い
最初だけ「私は」 同じ人物が続くなら自然に読める
別人物が登場 主語なしだと曖昧になることがある
必要な場所だけ戻す 読み手が迷う場所だけ明確にできる

文章で見ると?

書かないことも、文章の一部

文章は、全部を明示しなくても読めます。

読者は、

  • 前の文
  • 直前の主語
  • 話の流れ

から、書かれていない部分を補います。

だから主語を消すときに見るべきなのは、

文法的に消せるか

だけではなく、

読者が迷わないか

です。

記憶学で見ると?

今回は、記憶とのつながりは強くありません。

ただし、文章を読むときには、少し前に出てきた人物や状況を保ちながら次の文を理解しています。

「私は」を省いても読めるのは、前の情報を使って補っているからです。

ここでは記憶術としてではなく、前の情報を使いながら文章を読むという程度に考えます。

脳のOSで見ると?

前提把握

「次の文も同じ人の行動だろう」という、読者側の前提を使いました。

他には……

  • 選ぶと捨てる: なくても意味が通る主語を外す。
  • 境界理解: どこから主語が必要になるかを見る。
  • 背景理解: 書かれていない主語を、前後の文から補う。
  • 仮説と検証: 主語を消してみて、本当に迷わず読めるか確かめる。

もう一度だけ

次の文章から、なくても意味が通る「彼は」を消してください。

彼は店に入った。彼は窓際の席に座った。彼はメニューを開いた。店員が水を持ってきた。彼は注文をした。

どこまで消せるでしょうか。

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