
一つの文章から、焦点を三つ選んでみる3分実験
今回は、同じ出来事を使います。
ただし、誰を、何を、どんな意味を中心にするかによって、残す文章を変えます。
まずやってみる
1. 元の出来事を読む
夕方、駅を出ると急に雨が降ってきた。 私は傘を持っていなかった。 信号待ちをしていると、隣にいた女性が「駅前までなら入ります?」と声をかけてくれた。 二人で一つの傘に入り、交差点で別れた。 名前は聞かなかった。
この文章には、いくつもの要素があります。
2. 「人」を主役にする
名前も知らない人が、雨の中で傘に入れてくれた。
中心は「女性」です。
駅や信号、交差点などは消えました。
3. 「出来事」を主役にする
駅を出た直後に雨が降り、見知らぬ人の傘に入れてもらって駅前まで歩いた。
今度は、何が起きたかが中心です。
4. 「意味」を主役にする
名前も知らない人の親切を、私は今でも覚えている。
今度は、出来事そのものより、「自分に何が残ったか」が中心になりました。
どれも元は同じ出来事です。
ここから種明かし
文章には、書ける情報がたくさんあります。
でも、全部を同じ強さで書くと、
結局、何の話なのか
がぼやけることがあります。
そこで、
- 人を残す
- 出来事を残す
- 意味を残す
と焦点を選ぶと、同じ材料から別の文章ができます。
今回はタイトルを変える実験ではありません。
何を主役として残すかによって、文章そのものを編集する
実験です。
ここまでの答えを見比べてみよう
| <見るところ> | <たとえば> |
|---|---|
| 人を主役にする | 名前も知らない人が傘に入れてくれた |
| 出来事を主役にする | 雨が降り、傘に入れてもらって歩いた |
| 意味を主役にする | 見知らぬ人の親切が今も残っている |
| 消えるもの | 主役にしなかった細部 |
文章で見ると?
焦点を決めると、消すものが決まる
文章の中心は、最後にタイトルを付ければ決まるものではありません。
何を中心にするかによって、
- どの文を残すか
- どの細部を削るか
- どこから始めるか
まで変わります。
つまり焦点は、文章の「名前」ではなく、編集の基準になります。
記憶学で見ると?
一つの出来事を思い出すときも、毎回すべての細部を同じように取り出すわけではありません。
人物を手がかりにするのか、場所を手がかりにするのか、出来事の意味を手がかりにするのかで、思い出す内容は変わります。
今回の文章実験では、どの手がかりを中心にして出来事を組み直すかを見ています。
脳のOSで見ると?
選ぶと捨てる
元の出来事から、主役にする情報を選び、それ以外を弱めたり外したりしました。
他には……
- 本質抽出: その文章で一番残したいものを取り出す。
- 多角的視点: 人・出来事・意味という別の角度から見る。
- 全体→部分: 一つの出来事全体から、中心にする部分を選ぶ。
- 決める: 最終的に何を主役にするか決める。
もう一度だけ
次の出来事から、
- 人
- 出来事
- 意味
のどれか一つを主役にして、一文へ縮めてください。
電車で席を譲った。相手は何度も断ったが、最後には座って「ありがとう」と言った。降りる駅は同じだった。
別の主役を選ぶと、どんな一文になるでしょうか。

