早く終わる仕事から始めるべき? 待ち時間を数字で考える

学校の文化祭で、三つの印刷作業を一台のプリンターに頼むとします。作業Aは2分、Bは6分、Cは10分。どれも一台の機械で順番にしか処理できません。最初にどれを印刷しても、全部が終わるまでの時間は18分です。それなら順番は気にしなくてよいのでしょうか。

実は、全作業が終わるまでの時間と、各作業が終わるまでに待つ時間は違います。ここではそれを数字で確かめましょう。これは順番によって仕事の進み方が変わる仕組みを理解するための架空の例です。

全部終わる時間は同じでも、途中の待ち時間が違う

プリンターが空で、三つの作業は同時に依頼され、途中で作業を中断できないとします。作業時間は正確に分かり、印刷の準備や紙の交換に追加時間はかからない設定です。

まず長い作業から C→B→A の順に印刷します。

  • Cは10分後に完了します。
  • BはCの後に始まるので16分後に完了します。
  • Aは最後なので18分後に完了します。

各作業が完了するまでの時間の合計は 10+16+18=44分、平均は 約14.7分 です。

次に短い作業から A→B→C の順に印刷します。

  • Aは2分後に完了します。
  • BはAの後なので8分後に完了します。
  • Cは最後なので18分後に完了します。

合計は 2+8+18=28分、平均は 約9.3分。全部が終わる時間はどちらも18分ですが、短い作業から始めた方は、三つの作業が完了するまでの平均時間が約5.3分短くなりました。

「待ち時間」は何を数えるかで違う

今まで比べたのは依頼時刻から完了までの時間、つまり完了時間です。純粋に作業が始まるまでの待ち時間だけを数えるなら、A→B→Cでは Aが0分、Bが2分、Cが8分で合計10分です。C→B→Aでは Cが0分、Bが10分、Aが16分で合計26分です。

順番 完了時刻の合計 開始前の待ち時間合計 全作業完了まで
A→B→C 28分 10分 18分
C→B→A 44分 26分 18分

いずれの数え方でも、この条件では短い作業を先にした方が有利です。ただし、それぞれが何を表す数字なのかを混ぜないことが大切です。

どうして短い作業からだと有利になるの?

長い作業を最初に置くと、その時間を後ろのすべての作業が待つことになります。10分の仕事を先にすると、後ろの2件がそれぞれ10分待ちます。反対に2分の仕事を先に置けば、後ろの2件はそれぞれ2分だけ待ちます。

二つの作業XとYを並べ、時間をx分、y分とします。X→Yの完了時刻の合計は x+(x+y)=2x+y。Y→Xなら 2y+x です。xがyより短ければ 2x+y の方が小さくなります。

つまり、短い作業を前へ入れ替えると、二つの作業の完了時刻の合計を小さくできるのです。隣り合う仕事についてこれを繰り返すと、作業時間の短い順が合計完了時間を最小にします。これは「全作業が最初から利用可能」「一台で処理」「途中で中断しない」などの条件のもとで成立する考え方です。

では、仕事は全部短い順にすればよい?

そうとは限りません。例えば作業Cは10分かかりますが、印刷が終わらないと30人が準備を始められないとします。一方、Aは2分で終わっても、使うのは明日の午後です。この場合、三つの作業の平均待ち時間を短くすることが、文化祭全体の目的と一致しないかもしれません。

仕事には締め切り、重要度、依存関係、準備に必要な人、失敗のリスクがあります。「誰がいつ必要とするか」を加えると、単純な短い順では足りなくなります。緊急の連絡や安全に関わる作業を、短い作業の後ろへ無条件に回すわけにもいきません。

ここから分かるのは、平均待ち時間を最小にする順番と、目的を達成しやすい順番は別の問いだということです。

途中から新しい仕事が入ってきたら?

先ほどの計算では、A・B・Cは開始時点ですべて依頼済みでした。もしCを印刷し始めた5分後にAが来たなら、すでに進んでいるCを止めてよいかどうかが問題になります。止めると用紙やインクが無駄になるかもしれませんし、再開時に準備時間が必要かもしれません。

また、作業時間が予想できない場合もあります。2分だと思った印刷がエラーで15分かかったら、短い順に並べたつもりでも結果は変わります。理論上の最適な順番をそのまま現実へ移す前に、何が分かっていて、何が途中で変わり得るかを考える必要があります。

自分で試そう:別の三つの作業で比べる

今度は5分、7分、12分の作業を考えます。短い順なら完了時刻は5分、12分、24分で合計41分。長い順なら12分、19分、24分で合計55分です。どちらも全部終わるのは24分ですが、合計完了時間は14分違います。

さらに、もし最長の12分の作業だけに強い締め切りがあったらどうでしょう。今度は合計完了時間だけでは答えられません。締め切り時刻を書き加え、遅れる作業が出るかを確認してください。

一つの指標でよい順番でも、別の指標ではよくないことがある。 この視点が、仕事の段取りを考えるときに役立ちます。

日常生活ではどう使う?

返信するだけの短い連絡と、まとまった時間が必要な資料作成が並んでいるとき、短いものから処理すると「終わった件数」が早く増えます。待っている相手が多ければ、その効果もあります。

一方で、細かな用事ばかりを優先して、まとまった作業をいつまでも始められないことがあります。自分が何を減らしたいのか——待っている人の時間なのか、締め切り遅れなのか、作業の切り替えなのか——を決めてから順番を考えます。

まとめ:最初に「何を短くしたいか」を決める

三つの作業の合計時間が同じでも、短い作業から処理すると平均完了時間を短くできる場合があります。けれども、急ぎの作業や他の作業の開始条件があるなら、その順番が最善とは限りません。

仕事の順番を決める前に、全体の終了時刻・個々の待ち時間・締め切り・重要度を分けてみましょう。数学で分かる部分と、目的によって判断が変わる部分を区別することで、段取りの理由を説明できるようになります。

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