
文化祭の展示を一人で作ると6時間かかるとします。二人なら3時間、三人なら2時間で終わるのでしょうか。「人数が倍なら所要時間は半分」という考え方は、すべての仕事を人数で分けられる場合に近いものです。
実際には分けられない工程や、話し合い・確認が必要な工程があります。ここでは架空の作業計画を使い、同時に仕事を進めることの利点と限界を考えてみます。
全部を分割できる模型から始める
合計6時間分の単純な作業があり、すべてが独立しているとします。一人なら6時間、二人なら各3時間、三人なら各2時間です。これは作業内容が同じ量で分かれ、道具を待つ時間もないという理想条件です。
例えば600枚のカードを手書きし、一人が1時間100枚書けるとすれば、一人は6時間、二人はそれぞれ300枚で3時間です。ただし全員が同じ速度で書き、紙やペンが十分にある場合です。誰か一人だけ作業が遅かったら、全体が終わる時刻は最後の人に合わせて遅くなります。
分けられない作業がある場合
6時間のうち、最初の1時間は展示の設計、残り5時間はカード作成と仮定します。設計は全員で一つの案を決めてから始める必要があり、同時に何人いても1時間かかるとします。
二人で分担すれば、理想的には設計1時間+カード作成2.5時間=3.5時間です。三人なら1+5÷3≒2.67時間。六人でも1+5÷6≒1.83時間です。全体を単純に人数で割るより時間がかかるのは、1時間の設計作業を分割していないからです。
六人で作業してもゼロ時間には近づきません。最初の1時間は残ります。分けられる仕事の割合が小さいほど、人数を増やしたときの効果も小さくなります。
相談の時間を追加する
人数が増えた分だけ、相談する相手が増えることがあります。架空の条件として、二人の場合は相談が合計10分、三人は20分、六人は40分かかるとします。先ほどの計算へ加えると、二人は3時間40分、三人は約3時間、六人は2時間30分となります。
ここで相談時間をあらかじめ設定して計算しましたが、実際には会議を同時に開ける場合も、待ち時間が発生する場合もあります。人数が増えれば必ずこの分だけ時間が増えるという法則ではありません。
また、相談によってミスを未然に防げるなら、相談時間は単なる損失とも言い切れません。目先の作業速度と完成物の品質は別の評価軸です。
最後の一人が遅れる場合
三人にそれぞれ同じ量の作業を任せたのに、Aさん2時間、Bさん2時間、Cさん4時間かかったらどうなるでしょう。すべてがそろって完成という条件なら、全体が終わるまで4時間です。「2+2+4=8時間だから三人で割って約2.67時間」としてはいけません。
同時進行する作業の終了時刻は、必要な作業のうち最後に終わる工程へ左右されます。さらにCさんの資料が完成しないとAさんが最後の掲示を作れないなら、Aさんに空き時間ができても展示全体は完成しません。
誰に何を頼むか考えるときは、「仕事の合計時間」だけでなく「前の工程が終わらないと始められない関係」を図にする方法が役立ちます。
道具が一つしかない場合
全員が同じ印刷機を使い、カードを印刷する工程は一度に一人しかできないとします。人を10人に増やしても、印刷機が一時間に100枚しか印刷できなければ、600枚には少なくとも6時間必要です。
この条件では人数を増やすより、印刷機の稼働方法を改善する方が時間短縮につながるかもしれません。ただし追加の機械を買うには費用がかかります。人数の増加だけでは変えられない制約がどこにあるかを見つけます。
自分で試す:一人・二人・四人の表
架空の12時間分の仕事のうち、最初の2時間は分割できない準備、残り10時間は自由に分担できるとします。一人なら12時間、二人なら2+10÷2=7時間、四人なら2+10÷4=4.5時間です。
ここへ「二人では相談30分、四人では相談1.5時間」という条件を足します。二人は7.5時間、四人は6時間になります。二人から四人へ人数を倍にしても、所要時間は半分になりません。最後に人数を増やさず、準備を2時間から1時間に短くした場合を試してみましょう。どちらの改善が効果的か、条件によって結論が変わります。
作業を増やすより、依存関係を減らす方法
一人が終えないと次の人が始められない工程が多いと、担当者が何人いても待ち時間が増えます。展示物の設計図を一人だけが持っていて、ほかの人が何を作ればよいか知らない場合、設計者が休むと全員の作業が止まるかもしれません。
最初に作業内容と完成条件を共有しておけば、それぞれが独立に進められる部分が増える場合があります。ただし準備の話し合いに時間が必要なので、何分でも相談すればよいわけではありません。相談の目的は、後で待ち合わせる必要がない形へ仕事を整理することです。
作業者の人数を増やす前に、試すこと
まず作業を「同時にできるもの」「前の工程が必要なもの」「一つの道具しか使えないもの」に分けてみましょう。次に各工程の時間を書き、最後に終わるのはどの工程か探します。
例えば印刷に6時間、配布準備に4時間かかり、配布準備は印刷終了後でないと始められないなら、一人で順番に行えば10時間です。しかし印刷が100枚終わるごとに配布準備を始められるなら、一部を重ねて進められるかもしれません。実際に何時間短くなるかは作業の分け方で変わります。「人を増やす」という発想より先に、作業のつながりを確認する価値があります。
まとめ
仕事を同時に進めると速くなる場合はありますが、分けられない工程、相談、作業の依存関係、設備の制約によって効果は変わります。人数だけでなく、何を並行して進められるかを図にして考えることが大切です。

