第20回|書かない情報を一つ決めると、文章は強くなる?

全部説明する版と、一つだけ省く版を比べる3分実験

文章は、情報を足せば足すほど分かりやすくなるのでしょうか。

今回は逆に、一つだけ書かないことを試します。

まずやってみる

1. 全部説明する文章を読む

私は面接に遅刻しそうだったので、駅から会社まで走った。息が切れていて、受付でうまく話せなかった。焦っていたので、名前を言うときにも一度かんだ。

2. 「焦っていた」を消す

私は面接に遅刻しそうだったので、駅から会社まで走った。息が切れていて、受付でうまく話せなかった。名前を言うときにも一度かんだ。

「焦っていた」がなくても、焦りは伝わるでしょうか。

3. 今度は理由を一つ消す

駅から会社まで走った。息が切れていて、受付でうまく話せなかった。名前を言うときにも一度かんだ。

今度は「なぜ走っていた?」が分からなくなりました。

4. 何を残すべきか考える

消したあと、読み手は何を補える? 何を補えない?

を見ます。

ここから種明かし

文章では、書かれていないことも読者が前後から補うことがあります。

「焦っていた」を消しても、

  • 走る
  • 息が切れる
  • うまく話せない
  • 名前をかむ

から焦りを推測できます。

でも「面接に遅れそうだった」まで消すと、なぜ走ったのかは分かりにくくなります。

つまり省略とは、読者に任せても大丈夫な情報を見極める作業でもあります。

ここまでの答えを見比べてみよう

<見るところ> <たとえば>
何も省かない 状況が明確
「焦っていた」 行動から感情を推測できる
遅刻しそうだった理由 「なぜ走った?」が残る
省きすぎる 必要な関係まで失う

文章で見ると?

余白は「情報不足」と同じではない

書かないことで、読者が自分で意味を組み立てられる場合があります。

それが文章の余白になります。

ただし、必要な情報まで消せば、単に分からない文章になります。

記憶学で見ると?

情報が少なければ必ず覚えやすいわけではありません。

必要な手がかりまで消すと、かえって意味をつかみにくくなることがあります。

ここでは、省略と記憶を単純に結びつけず、理解に必要な手がかりを残すことを重視します。

脳のOSで見ると?

選ぶと捨てる

書ける情報を全部入れるのではなく、残すものと省くものを選びました。

他には……

  • 前提把握: 読者がどこまで補えるかを考える。
  • 境界理解: 余白と情報不足の境目を見る。
  • 決める: 何を残し、何を読者に任せるかを決める。
  • 仮説と検証: 実際に消してみて、意味が通るか確かめる。

もう一度だけ

彼は玄関で靴を履き直した。 外は雨だった。 傘を持っていなかった。 少し迷ってから、もう一度部屋へ戻った。

一文だけ消すなら、どれを消しますか?

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