第24回|「うまい文章」って、結局何?

同じ出来事を、四つの目的で書き分ける最後の3分実験

ここまで23回、文章をいろいろな方向へ動かしてきました。

最後に、こんな問いを置きます。

うまい文章とは、どんな文章でしょうか。

まずは答えを決めず、同じ出来事を四通りに書いてみます。

まずやってみる

1. 共通する事実を読む

明日の遠足は、雨の予報のため金曜日に延期になった。

これを、目的別に変えます。

2. 「すぐ行動してほしい」文章

明日の遠足は延期です。金曜日に行います。明日は通常授業なので、教科書を持ってきてください。

必要なのは、まず行動です。

3. 「出来事を残したい」文章

玄関に置いていた遠足のリュックを、もう一度部屋へ戻した。明日は雨らしい。楽しみにしていた遠足は金曜日になった。

事実は同じでも、場面が増えました。

4. 「一目で知らせたい」文章

遠足、雨予報で金曜日に延期

短さが優先されています。

5. 「理由まで理解してほしい」文章

明日は雨の予報が出ているため、安全を考えて遠足を金曜日に延期します。

今度は理由とのつながりが中心です。

では、四つの中で一番「うまい文章」はどれでしょうか。

ここから種明かし

一つには決められません。

なぜなら、目的が違うからです。

  • 行動してほしい
  • 場面を残したい
  • 一目で知らせたい
  • 理由まで分かってほしい

目的が変われば、必要な文章も変わります。

つまり、

短いから上手 具体的だから上手 比喩があるから上手 情景が浮かぶから上手

と、一つの基準だけでは決められません。

ここまでの答えを見比べてみよう

<見るところ> <たとえば>
行動が目的 明日は通常授業。教科書を持ってくる
記録が目的 リュックを部屋へ戻した場面を書く
一覧性が目的 遠足、金曜日に延期
理解が目的 雨予報→安全を考えて延期
共通点 目的に合わせて、残す情報と形を変える

文章で見ると?

「上手さ」より先に、目的を置く

文章を直すとき、

もっと短く もっと具体的に もっと印象的に

と考えることがあります。

でも、その前に、

この文章で何を起こしたい?

を決めると、必要な修正が変わります。

行動してほしい文章なら、情景を増やしすぎない方がよいことがあります。

物語なら、短さより場面を残した方がよいことがあります。

そこで、このシリーズでは「うまい文章」をいったん、

目的に必要なものが、読み手に届く形になっている文章

と置いてみます。

これも絶対の定義ではありません。

別の目的を置けば、また定義を作り直せます。

記憶学で見ると?

文章の目的によって、「何を覚えてほしいか」も変わります。

遠足の連絡なら、

  • 延期
  • 金曜日
  • 明日は通常授業

が残れば十分かもしれません。

一方、日記なら、リュックを戻した場面の方を残したいかもしれません。

つまり記憶について考えるときも、

何を残したいのかを先に決める

必要があります。

脳のOSで見ると?

再定義

「うまい文章」という曖昧な言葉を、これまでの実験を使って定義し直しました。

他には……

  • 場合分け: 文章の目的ごとに、必要な書き方を分ける。
  • 前提把握: 誰が何のために読む文章なのかを見る。
  • 選ぶと捨てる: 目的に必要な情報を残し、不要なものを外す。
  • 決める: この文章で何を起こしたいかを決める。

もう一度だけ

最後の実験です。

同じ出来事を二通りに書いてください。

電車が20分遅れた。

一つは「家族へ知らせる文章」。 もう一つは「あとで自分が読み返す日記」。

どちらも、その目的に合っていれば正解です。

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