記憶OS 第17章|想起訓練

これだけ覚えよう

  • 思い出す練習は、机に向かっているときだけでなく、日常のすき間でもできる。
  • 電車を待ちながら、「昨日覚えたことは?」と自分に聞いてみる。
  • ノートもカードもなくていい。頭の中から取り出してみるだけでいい。
  • 出てこなかったら、あとで確かめればいい。出そうとしたことそのものが練習になる。
  • 「何かを見る時間」だけでなく、「何も見ずに思い出す時間」を普段の生活に入れる。

一日の中の、トレーニング室

電車を待つ三分で、昨日覚えたことを一つ、思い出してみる。

ノートは開かない。答え合わせも、その場ではしない。

それでも、道は、もう一度歩かれている。

筋トレは、ジムだけのものではない。階段をのぼるだけでも、体は使われている。

思い出す練習も、机の上でしかできないものではない。

道具なしで、一日の隙間へ、取り出すという動作を住まわせること。それが、想起訓練である。

準備は要らない。白紙も、カードも、机も要らない。

必要なのは、隙間の時間と、自分への短い問いだけだ。

信号待ちの三十秒。湯船の五分。寝る前の、電気を消したあとの数分。

問いは、難しくなくていい。

今日覚えたことを、三つ挙げると。

昨日の夕食は。その前の日は。

今朝から今までを、早送りで再生すると。

さっきの人の話の要点は、一言でいうと。

先週読んだ本には、何が書いてあった。

答えが出なくても、失敗ではない。うんうん唸っている時間こそが、道を歩いている時間である。

そして、出てこなかったものの正体は、消えかけている在庫の一覧だ。

棚卸しが、ただで済んだと思えばいい。気になったものだけ、あとで確かめておく。

隙間の中でも、一等地がある。

寝る前だ。

布団に入って、電気を消して、今日一日を頭の中で上映する。

朝から順に、早送りで。覚えたことのところだけ、少しゆっくり再生する。

このあと、夜勤が始まる。

整理係が働き出す前に、今日いちばん大事だったものを、机の上へ出しておく。

記憶のジムは、一日のあちこちに最初からあった。

電車を待つ三分。

湯船の五分。

消灯後の暗闇。

机を離れても、思い出すことは終わらない。

束E 外に出す

頭の中にあるあいだ、知識は分かった顔をしていられる。手へ出す。地図にする。声にする。誰かへ渡す。外へ出た瞬間、持っているものと、持っていないものが分かれる。


おすすめの記事