第17回|比喩を一つ入れると、何が増えて何が減る?

説明だけの文に、比喩を一つ置いてみる3分実験

こんな文があります。

新しい仕事を覚えるのに時間がかかった。

意味は分かります。

では、この文章に比喩を一つ入れると、どう変わるでしょうか。

まずやってみる

1. 元の文を読む

新しい仕事を覚えるのに時間がかかった。

まずは、このまま読んでください。

どんな大変さだったのか、どこまで想像できましたか?

2. 比喩を一つ入れる

新しい仕事を覚えるのは、知らない町で地図なしに道を探すようだった。

かなり印象が変わりました。

3. 別の比喩に変える

新しい仕事を覚えるのは、ピースの多いパズルを一枚ずつ埋めるようだった。

同じ「覚えるのに時間がかかった」でも、

  • 道に迷う
  • パズルを埋める

では、大変さの種類まで違って見えます。

4. 比喩を外してみる

もう一度、

新しい仕事を覚えるのに時間がかかった。

へ戻します。

比喩を入れると何が増え、逆に何が狭くなったでしょうか。

ここから種明かし

比喩は、知らないものを、知っているものに重ねて理解させる方法です。

ただし比喩を入れると、分かりやすくなる代わりに、見方が一つに寄ることがあります。

「地図なしで道を探す」なら迷いが強くなり、「パズル」なら少しずつ組み上がる感じが強くなります。

つまり比喩は、意味を足すだけでなく、意味の方向を選ぶ表現でもあります。

ここまでの答えを見比べてみよう

<見るところ> <たとえば>
比喩なし 事実をそのまま受け取れる
道にたとえる 迷い・不確かさ
パズルにたとえる 部分を組み上げる感じ
別の比喩にする 同じ出来事でも別の意味が強くなる

文章で見ると?

比喩は、飾りではなく「見方」を渡す

比喩には、

これは、こういうものとして見てください

と、読み手に一つの見方を渡す働きがあります。

だから内容に合っていなければ、分かりやすくするどころか誤解を生むこともあります。

記憶学で見ると?

新しい情報を、すでに知っているものと結びつけると、思い出す手がかりを持ちやすくなる場合があります。

ただし、比喩の方だけが強く残り、本来の意味がずれることもあります。

記憶OSから補足

(記憶OSは「脳のOS」の一部です)

連想記憶

一つの情報を、別の情報と結びつけて扱います。

脳のOSで見ると?

比喩理解

一つの出来事を、別のものの構造を借りて見直しました。

他には……

  • 具体⇄抽象変換: 抽象的な大変さを、道やパズルという具体へ移す。
  • 背景理解: その比喩が何を強調しているのかを見る。
  • 本質抽出: 元の出来事のどの特徴を比喩として持ち運ぶかを選ぶ。

もう一度だけ

話し合いがなかなか進まなかった。

この文に比喩を一つ入れてください。

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