
昨日、いつもと違うやり方で勉強したらテストで良い点が取れました。「この方法なら次も成功する」と思いたくなります。でも、結果が一度良かっただけでは、その方法が原因だとはまだ決まりません。問題が得意な範囲だったのかもしれませんし、たまたま体調が良かったのかもしれません。
だからといって、新しい方法を全部疑う必要もありません。一度の成功を次に何を確かめるかという手がかりに変えるのが、科学的な考え方の使いどころです。
成功には「方法の効果」以外も混ざります
架空の例として、Aさんが英単語を声に出して覚え、その翌日の小テストで10問中9問正解したとします。前の小テストは10問中6問だったので、「音読で3問分伸びた」と結論を出したくなります。
しかし、前回と今回では問題の難しさや、単語を以前から知っていた割合が違うかもしれません。復習にかけた時間も違うかもしれません。9点と6点という結果は事実でも、「音読のおかげで3点上がった」は、まだ説明の候補です。
ここで考えたいのは「音読が効かない」という反対の結論ではありません。「音読による効果があるなら、どの条件をそろえればもう一度確かめられるか」という次の問いです。
比べる相手がいないと、方法の効果が見えにくい
Aさんが音読だけで10回勉強し、毎回点が上がったとしましょう。練習を続けたこと自体で成績が伸びているかもしれません。では、音読する日としない日を比べれば確かでしょうか。単語の種類が違えば、また別の条件が混ざります。
身近に試すなら、難しさが近いと考えられる単語の組A・組Bを用意し、学習時間を同じにします。Aは声に出して覚え、Bは黙読で覚え、翌日に答えを見ずに意味を確かめます。ただし、組の難しさが本当に同じかは分からないので、結果をそのまま音読の効果とは呼びません。
次はAとBに割り当てる方法を逆にするなど、条件の偏りを減らす工夫をします。それでも、自分一人の小さな実験で全員に通用する結論が出るわけではありません。目的は、自分の判断を一度の印象だけに任せないことです。
「再現した」といえる条件を先に決める
同じやり方を繰り返して、成功したときだけ記録すると、いつも良い結果が出ているように見えます。例えば5回試して得点が8、5、9、6、8点だったなら、平均は(8+5+9+6+8)÷5=7.2点です。「9点だった日」だけを取り出すと、全体の様子を見失います。
試す前に「一週間後に何も見ずに答えられる単語数」「同じ学習時間での正答数」など、測るものを決めておくと便利です。直後に答えられることと、一週間後に覚えていることは違うため、どちらを成功と呼ぶかでも結論が変わります。
また、期待より結果が悪い日も残します。失敗の記録は新しい方法を否定するためではなく、「どんな条件で通用しにくいか」を知る材料です。
うまくいった理由は、一つとは限りません
例えば友達と問題を出し合った日に点が上がったとします。友達と話したから、声に出したから、問題を思い出したから、勉強時間が長くなったから。いくつもの説明が考えられます。
ここで方法の名前だけを比べても、どの部分が役に立ったかは分かりません。友達と勉強する活動を「互いに説明する」「答えを見ずに思い出す」「分からないところを質問する」に分けてみると、別の日にも使える操作が見えてきます。
ただし、要素を一つずつ切り離すと、元のやり方の良さが失われることもあります。友達と励まし合うことが取り組みやすさを生んでいた可能性もあるからです。分解は原因を考える道具ですが、どんな行動も一要素だけで説明できるとは限りません。
たった一回の失敗にも、学べることはあります
新しいやり方で点が下がったら、すぐに捨てるべきでしょうか。もし試した日に寝不足で集中できなかったなら、方法自体の評価を決めるには早いかもしれません。
一方、問題集の解説を長く読む方法で、何度繰り返しても自力で解けないなら、説明を読むだけで終わっている可能性を考えられます。単なる気分や気合いの問題にせず、答えを見ずに解く場面を増やすなど、何を変えるか試す方が具体的です。
方法を続けるか変えるかを決めるのは、成功回数の印象だけではありません。本人の目標、続ける費用、結果のばらつき、ほかの方法と比べたときの違いを総合して考えます。
実験:同じ方法を「場所」で変えてみる
例えば覚えたことを家では説明できるのに、学校では思い出せないとします。家ではノートが机にあり、学校では何も見られないのかもしれません。場所の違いと、答えを見ることができる条件の違いが混ざっています。
そこで家でもノートを閉じて説明する、時間を空けて試す、例題を少し変えるなど、使える手がかりを少しずつ減らしてみます。それでできるようになれば、ただ読んでいたときとは別の力を確かめられます。
ここでも、一日で完璧にできなくても問題ありません。「何を見るとできるか」「何も見ないとどこで止まるか」が分かれば、次の練習が決めやすくなります。
別の人にも当てはまるとは限りません
Aさんに向いた方法がBさんにも向いているかは、まだ別の問いです。経験の差、使える時間、覚えたい内容、学びやすい環境が違えば、同じ練習の結果も変わり得ます。自分の実験で分かったことを「誰にでも効果がある」と言い換えず、「自分はこの条件で試して、こうなった」と残す方が正確です。逆に他人の成功談を読むときも、成功した手順だけでなく、いつ、何を、何回試したのかを尋ねてみましょう。
まとめ
一度成功した方法は、続けて調べる価値のある候補です。でも、結果が良かったことと、その方法のおかげだったことは別です。比べる条件を考え、測るものを決め、うまくいかなかった回も残すと、偶然の成功を自分に役立つ方法へ近づけられます。

