第16回|同じ言葉をくり返すのは、本当に悪い?

残す版と、全部言い換える版を比べる3分実験

文章では、

同じ言葉を何度も使わない方がいい

と言われることがあります。

本当にそうでしょうか。

今回は、同じ言葉を残す版と言い換える版を作ります。

まずやってみる

1. まず、繰り返しのある文章を読む

私は毎朝、同じ橋を渡る。 雨の日も、その橋を渡る。 遅刻しそうな日も、その橋を走って渡る。 卒業の日も、きっと最後にその橋を渡る。

「橋」が何度も出ています。

少しくどいでしょうか。

それとも、何か残るでしょうか。

2. できるだけ言い換える

私は毎朝、同じ橋を渡る。 雨の日も、その場所を通る。 遅刻しそうな日も、川の上を走って抜ける。 卒業の日も、きっと最後にいつもの道を通る。

繰り返しは減りました。

でも、元の文章と同じ印象でしょうか。

3. 一つの言葉だけ意図的に残す

私は毎朝、同じ橋を渡る。 雨の日も、その橋を渡る。 遅刻しそうな日も、その橋を走って渡る。 卒業の日も、きっと最後にその橋を渡る。

「橋」が文章の中心として強くなります。

4. 残す言葉を変える

今度は「毎朝」を中心にしてみます。

毎朝、同じ橋を渡る。 毎朝、川の向こうへ学校に行く。 毎朝だったその道も、卒業したら通らなくなる。

同じ反復でも、中心が変わりました。

ここから種明かし

繰り返しには、少なくとも二種類あります。

一つは、

同じ言葉が続いて、ただ重くなっている繰り返し。

もう一つは、

同じ言葉を残すことで、中心やリズムを作る繰り返し。

つまり、

繰り返し=悪い

ではありません。

大切なのは、

なぜその言葉をもう一度出すのか

です。

ここまでの答えを見比べてみよう

<見るところ> <たとえば>
同じ語を毎回残す 中心が強く見える
全部言い換える 重複は減るが、中心がぼやけることもある
一部だけ残す 強調したい語を選べる
別の語を反復する 文章の中心そのものが変わる

文章で見ると?

言い換えと反復は、どちらも道具

同じ言葉が続いて不自然なら、言い換えは役に立ちます。

でも、重要な言葉まで毎回言い換えると、

結局、何の話だったのか

が弱くなることがあります。

文章では、

  • 同じだから変える
  • 大事だから残す

の両方があります。

記憶学で見ると?

同じ語が何度か現れると、その語が文章の中心だと気づきやすくなる場合があります。

一方、単なる繰り返しが多すぎると、すべて同じ調子になり、違いが見えにくくなることもあります。

今回は、

何を繰り返すかによって、読み手が中心として拾うものが変わる

という点を見る実験です。

脳のOSで見ると?

パターン認識

同じ言葉が繰り返されることで、文章の中に一つのパターンができることを見ました。

他には……

  • 言い換え: 同じ意味を別の表現へ変える。
  • 本質抽出: 何を中心語として残すかを考える。
  • 選ぶと捨てる: どの反復を残し、どれを消すか選ぶ。

もう一度だけ

次の文章で、「音」という言葉を残す版と、できるだけ言い換える版を作ってください。

夜になると、時計の音が聞こえた。 冷蔵庫の音も聞こえた。 外を走る車の音まで大きく感じた。

どちらの方が、その文章に合うでしょうか。

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