
「何のためにやるの?」
「これ、将来使う?」
「別に面白くない」
勉強の意味が見えないとき、大人は説明を増やしたくなります。
「受験で必要だから」
「将来困るから」
「今やっておいた方がいいから」
どれも間違いとは限りません。
ただし、大人が価値を説明したことと、本人の中で意味がつながったことは別です。
「やる意味がない」には、少なくとも4つの違う状態があります。
- 目的が分からない
- 自分との関係が見えない
- 面白さがない
- 成果が遠すぎる
同じ「意味がない」でも、最初に動かす場所は違います。
→ 24項目から先に確認する:
子どもが勉強しないときの24項目チェックリスト
「役に立つ」と「面白い」は別
まず分けておきたいことがあります。
ある勉強が将来役に立つと思っていても、面白いとは限りません。
逆に、面白くても受験や仕事に直接つながらないこともあります。
学習の価値は一つではありません。
- やっていて面白い
- 将来や別の目標に役立つ
- 自分にとって大事
- でも負担が大きい
こうしたものが同時にあります。
だから、
「役に立つと分かれば、やる気が出る」
とは限りません。
「意味がない」と言われたら、まず何が足りないのかを分けます。
1.目的が分からないなら、「何のため」を一つに絞る
「この勉強は何のため?」
この問いに対して、受験、将来、仕事、教養、成績、進学……と全部説明すると、かえって遠くなることがあります。
見分けるポイント
本人が、
- 何を練習しているのか分からない
- 今日やる理由が分からない
- 課題を終えること自体が目的になっている
なら、「目的が分からない」が強いかもしれません。
最初に変えること
その課題の目的を、近い一つに絞ります。
たとえば、
- この10問は「分数の通分を迷わずできるようにする」
- この英文は「主語と動詞を見つける練習」
- この漢字は「明日の小テストで読めるようにする」
です。
家で試すなら
始める前に長く説明せず、
「これができると、何が一つ変わると思う?」
と本人側にも考えてもらいます。
大人の答えを当てさせる必要はありません。
本人なりの理由が一つ出れば十分です。
避けたいこと
「将来必要だから」で全部をまとめることです。
将来価値が悪いのではありません。
でも、今日の課題の目的としては遠すぎることがあります。
改善サイン
本人が、
「これは○○の練習」
「今日はここができればいい」
と言えるようになります。
2.自分との関係が見えないなら、本人側から接点を一つ作る
「役に立つよ」と言われても、
自分の何に関係するのか
が見えなければ、他人の価値のままです。
見分けるポイント
本人が、
- 「それ、私に関係ある?」
- 「自分は使わない」
- 「必要なのは分かるけど、自分事じゃない」
という反応をするなら、ここを見ます。
最初に変えること
本人の生活・興味・目標・困りごととの接点を、本人側から一つ作ります。
研究では、学習内容が自分の生活や目標にどう関係するかを本人が考える「self-generated utility value」の介入が使われています。
重要なのは、価値を押し込むことではなく、自分との接続を本人が作る余白です。
家で試すなら
たとえば、
「これ、どこかで使えそう?」
「今困っていることと関係ある?」
「好きなものとつなげるなら何がある?」
くらいの問いで十分です。
思いつかなければ、大人が例を一つ出してもよいでしょう。
ただし、その例を正解にしません。
避けたいこと
「ほら、将来こう役立つでしょ」と説明だけで押し切ることです。
特に「自分にはできそうにない」と感じている子に、「これは大事だから」と重要性だけを上げると、価値ではなく圧力として受け取られる場合があります。
改善サイン
本人から、
「これなら少し関係ある」
「ここは使うかも」
という自分の言葉が出ます。
3.面白さがないなら、「好きにさせる」より一度だけ注意が向く入口を作る
興味は、最初から完成している必要はありません。
「数学が好き」「歴史が好き」といった長く続く興味になる前に、
一時的に気になる
という段階があります。
見分けるポイント
「役に立つのは分かる。でも退屈」
なら、utilityではなくinterest側の問題です。
最初に変えること
一度だけ注意が向く入口を作ります。
たとえば、
- 結果を予想する
- 意外な例を一つ見る
- 二つを比べる
- 「どっちだと思う?」から入る
- 本人が知っているものとつなぐ
- 少し選べる余地を作る
です。
家で試すなら
地理なら「この2県、どちらが人口が多いと思う?」。
理科なら「この条件を変えるとどうなる?」。
英語なら、本人が知っているゲームや曲の一文を見る。
大がかりな演出は必要ありません。
避けたいこと
「役に立つと分かれば面白くなる」と同一視することです。
また、動画・ご褒美・派手な演出だけで、長い興味まで作れると期待しない方がよいでしょう。
改善サイン
- 質問が一つ出る
- もう一例を見たがる
- 自分から比較する
- 「なんで?」が出る
こうした小さい反応で十分です。
4.成果が遠すぎるなら、「将来のため」と「今日やる理由」を分ける
受験、進学、就職。
大切な目標ほど、今から見ると遠いことがあります。
遠い目標は消す必要はありません。
ただし、それだけでは今日の一問につながりにくいことがあります。
見分けるポイント
本人が、
- 受験までまだ何か月もある
- 合格できるか分からない
- 今日一日やっても何も変わらない
と感じているなら、成果までの時間が遠すぎる可能性があります。
最初に変えること
遠い結果を残したまま、近い価値を別に置きます。
たとえば、
- 今週の小テスト
- 今月の苦手単元
- 今日できるようにする一技能
- 明日の授業が少し分かる
です。
家で試すなら
「高校のために勉強しよう」ではなく、
「今日やると、明日の何が一つ楽になる?」
を考えます。
遠い目標と近い目標を、二層で持ちます。
避けたいこと
将来目標を否定することです。
また、すべてを即時報酬に変える必要もありません。
近い価値は、「今日やる意味」を見えるようにするために置きます。
改善サイン
本人が、遠い結果だけでなく、
「今日はここ」
「今週はこれ」
を言えるようになります。
4つは「意味」という言葉の中で混ざりやすい
| 状態 | 最初に見るもの | 最初に試すこと |
|---|---|---|
| 目的が分からない | この課題は何を練習するのか | 目的を近い一つに絞る |
| 自分との関係がない | 本人の生活・目標との接点 | 本人側から接点を一つ作る |
| 面白さがない | 一時的な興味の入口 | 疑問・比較・予想を一つ入れる |
| 成果が遠い | 今日の行動までの時間距離 | 遠い目標+近い目標の二層にする |
「意味がない」と言われたら、価値を説明する前に、どの意味がないのかを見ます。
改善したかは、「勉強が好きになった?」だけで見ない
見る候補は、
- 今日やる理由を本人が言える
- 自分との接点が一つ出る
- 質問や興味が一つ出る
- 近い目標へ自分から動ける
- 催促の前に次の行動を選べる
です。
「好きになった」まで行かなくても、意味との接続が一つ増えれば変化は起きています。
意味は、説明されるだけでは自分の意味にならない
大人が価値を知っていることと、本人が価値を感じることは別です。
だから、
やる意味を教えるより、自分との接点を一つ作る。
を第一候補にします。
「役に立つ」「面白い」「近い」を分けると、同じ「意味がない」でも次の一手が変わります。
→ 6つの根っこ全体の最初の一手:
勉強の「やる気」を出させる前に|6つの根っこ別・最初に試すこと
この整理について
この記事は、Situated Expectancy-Value Theory、utility-value intervention、interest development、temporal distanceに関する研究を、家庭で使いやすい形へ整理したものです。
特に、本人が自分との関連を考えるutility-value interventionには一定の研究がありますが、全員に同じ効果が出るわけではありません。
また、「役に立つと思えば面白くなる」「将来価値を説明すれば必ず動く」とは扱っていません。


