
ある子どもが算数の文章題を解けなかったとします。「数学の才能がない」と判断する前に、問題文を読めたか、必要な計算を知っているか、時間が足りたか、どこで止まったかを確認できます。
学習の成績だけで能力を決めつけると、改善できる条件を見落とすことがあります。一方で、練習の必要性を無視して「環境だけが原因」と考えるのも単純すぎます。両方を分けて考えましょう。
同じ「不正解」の中身は違う
架空の3人が同じ文章題を間違えました。Aさんは問題文の「少なくとも」の意味を取り違え、Bさんは式は合っていたのに筆算を間違え、Cさんは最後まで時間が足りませんでした。結果はいずれも不正解ですが、必要な手助けは違います。
Aさんには言葉の意味を確かめる活動、Bさんには計算過程の確認、Cさんには解く手順と時間配分の見直しが役立つかもしれません。もちろん一回の観察だけでそれぞれの原因が確定したわけではありませんが、何を調べるかは具体化できます。
評価を点数だけで終えず、途中のどこで止まったかを見ると次の練習を選びやすくなります。
練習量が同じでも条件は同じではない
Aさんが1時間、Bさんも1時間練習したとしても、Aさんは答えを見ながら同じ例題を繰り返し、Bさんは途中で本を閉じて自力で解いたとします。練習時間という数字は同じでも、取り組んだ操作が違います。
また前日に十分眠れなかった、周囲が騒がしかった、教材の説明が合わなかったなど、学習する条件も異なります。こうした要因がある可能性を考えることと、成績の原因を確定することは別です。改善できそうな条件を一つ選び、変化を確かめる姿勢が大切です。
問題を分けると、できている部分が見える
文章題を「言葉の理解→数量の関係→式→計算→答えの確認」に分けます。解けなかった子でも、数字を書き出すことや関係図を作ることはできるかもしれません。最初から全部をやり直さず、止まった位置を見つけられます。
たとえば「120円の物を3つ買う」という文なら、120×3と立式できるか、360円と計算できるか、答えに単位を付けられるかを別々に確かめます。式は作れるが計算だけ間違える人に、文章題の読み方を一から教えても、必要な練習からずれる可能性があります。
分解は人を細かく評価するためではなく、次に何を練習すればよいか具体化するための道具です。
条件を変えたときの結果を比べる
同じタイプの問題で、時間制限ありと時間制限なしを比べるとします。時間を延ばして正解できたなら、少なくとも「理解がまったくない」という説明は弱くなります。ただし、家で何度も同じ問題を見て覚えていた可能性もあります。
だから、問題の形式を少し変えた別の問題も試します。覚えた答えを繰り返しているだけか、考え方を使えるかを分けるためです。同じ結果が繰り返し見られて初めて、仮説への手がかりが増えます。
「できた」も分けて考える
一度だけ正解しても、別の日に同じような問題を解けるとは限りません。先生のヒントがあると解ける、例題を見ながらなら解ける、何も見ずに解ける、別の単元でも使える、という段階には違いがあります。
どの段階を目指しているか分からなければ、必要な練習も決めにくくなります。たとえば明日の授業の理解が目的ならヒントを受けて解くことに意味がありますが、試験本番を想定するなら自力で再現できるかを確かめる必要があります。
自分で試す:一つの「できない」を四つに分ける
最近難しかった課題を一つ選び、「必要な知識を知らない」「やり方は分かるが途中で間違う」「条件や時間が合わない」「結果の確認が不足している」のどこに近いか考えてみましょう。複数に当てはまっても構いません。
次に最も変えやすい条件を一つ決め、別の類題で試します。成績が変わらなければ、別の原因候補を検討します。最初の失敗を本人の固定した能力と結びつけないことが出発点です。
苦手な課題を小さくする目的
「文章題が苦手だから、計算問題だけを続ける」と決めた場合、計算の正確さは上がるかもしれません。しかし問題文から式を作る練習は不足したままです。必要な部分を分けることは、難しい活動を永久に避けるためではありません。
例えば文章題の難しさを、言葉の理解、式の作り方、計算の三つに分けます。計算ができる子なら、式の作り方を集中的に練習し、その後に元の文章題へ戻ります。小さく分けた練習が、最初の目的につながっているか確かめることが大切です。
できる条件と、まだできない条件を地図にする
Aさんは例題を見ながらなら正解でき、Bさんは口頭説明があれば解け、Cさんは自力で式を作れるが時間がかかるとします。三人とも「完璧にできる」状態ではないかもしれませんが、支援の必要な場所は違います。
「何もできない」と一括りにすると、Aさんが例題をまねる力やCさんの立式できる力を見落とします。解ける条件を確かめることで、次に増やす練習が見つかります。できた部分を褒めるだけではなく、何ができるか正確に説明することが重要です。
成績の変化が出るまで時間がかかる場合
練習方法を一回変えただけで点数が上がらなくても、方法が無意味だとは限りません。問題の種類や難度が違えば点数を比べにくいこともあります。反対に急に高得点になっても、出題がたまたま得意な問題に寄っていた可能性があります。
同じ技能を使ういくつかの問題で、ヒントの量やかかった時間も記録する方法があります。結果が変わったとき、何を変えたかを考えられるようにするためです。
人への評価ではなく、次の練習へつなげる
「あなたは能力が低い」では、どんな練習が必要なのか分かりません。一方、「式を作るところまではできたが、計算で符号を間違えた」なら、次に確かめる部分が明確になります。観察できた行動を言葉にすることで、評価が改善の手がかりになります。
同じ間違いが続いた場合も、最初から本人の才能のせいにしません。説明、問題の難度、練習方法を変えられるか考えましょう。変えた条件と結果を小さく記録すれば、何が役立ったかを後から振り返れます。
まとめ
「できない」という結果にはさまざまな理由があります。能力だけ、環境だけと決めつけず、途中の操作と条件を確かめれば、次に変えられる一歩が見つかります。

