目標を数字にすると何が見えなくなる? 指標だけが良くなる落とし穴

「図書室の利用を増やそう」という目標に対して、学校が「入室者数を月2,000人にする」と決めたとします。数字があれば進捗を確かめられます。しかし同じ人が一日に何度も入室しただけでも、回数として増えてしまうかもしれません。

数字の目標は行動を整理するために役立ちます。ただし、測りやすい数字と、本当に実現したい状態は一致するとは限らないという問題があります。架空の例を使って考えましょう。

測るものを決めた瞬間に、こぼれるものがある

図書室を利用する目的が「必要な情報を見つけ、落ち着いて学習できること」だとします。入室者数が多ければ利用が広がっている可能性はありますが、探した本が見つかったか、席を使えたか、満足したかは分かりません。

そこで入室者数に加え、目的の資料が見つかった人の割合、滞在できた時間、必要な相談を受けられたかなどを確かめる方法もあります。ただし、あらゆることを数え始めると記録の手間が大きくなるため、目的に関係する少数の指標から始めます。

数字は大切な情報ですが、数字を選ぶことで何を見ないかも決まるという点が重要です。

指標を改善しても、目的が改善するとは限らない

架空の図書室で、入室者数が月1,500回から2,100回になりました。目標2,000回は達成です。しかし、実人数が300人から250人に減っていたらどうでしょう。少人数が頻繁に使っているだけかもしれません。

利用回数と実人数は別です。「図書室を知ってもらう」のが目的なら、実人数の減少は気になるでしょう。一方、利用を習慣化してもらう目的なら、同じ人の利用回数が増えることにも意味があるかもしれません。最初の目的を確かめないと良し悪しを判断できません。

「目標の数字を達成した」と「目指す状態に近づいた」は、同じ文章として扱わないことが大切です。

数えやすいものへ仕事が寄る可能性

学校が入室回数だけを評価するとしたら、図書室へ短時間立ち寄る活動ばかり増やす方が目標に近づくかもしれません。しかし、その活動が読書や調べ学習にどれほど役立つかは別です。

これは「数字で評価すると必ず不正が起きる」という断定ではありません。人は評価の対象に注意を向けやすいので、数え方が行動を変える可能性を最初から考えておく必要があるという話です。

指標を設計するときに「この数字を増やすだけなら、目的を達成しなくても可能ではないか」と問いかけると、穴が見つかりやすくなります。

二つの数字を組み合わせる

架空の相談窓口で、A班は一日に100件の問い合わせに返事をし、解決した件数は40件です。B班は60件に返事をし、解決した件数は45件です。対応件数ならAが上、解決件数ならBが上です。

解決した件数を対応件数で割ると、Aは40%、Bは75%です。ただし、B班が難しい問い合わせを避けていたのなら、比較は適切でないかもしれません。逆にA班が簡単な問い合わせを大量に担当していた可能性もあります。二つの数字を組み合わせても、仕事の内容まですべて分かるわけではありません。

それでも一つの指標だけより、何が違うかを考える材料は増えます。

指標を増やしすぎても困る

問題を避けようとして、目標を20個並べたらどうなるでしょう。各数字の記録と報告に時間を使い、本来の活動に使う時間が減るかもしれません。また、指標同士の重要度が決まっていないと、数字が食い違ったときに判断できません。

まず中心となる目的を一文にし、それに近い数字を一つ、見落としやすい副作用を調べる数字を一つ選んでみます。その後、必要なら追加します。測定のための仕事を最小限にすることも大切です。

自分で試す:図書室の目標を修正する

「利用者数を増やす」という数字だけの目標を作り、次に「初めて利用する人も資料を見つけられる」という条件を加えます。入室回数、初利用者数、相談後に資料が見つかった人の数のうち、どれを調べれば目的に近づけるでしょう。

最後に「数字は良くなるが、実際には困る状態」を一つ考えてみてください。反例を先に作れば、評価方法の弱点を改善しやすくなります。数字を使うことと、数字だけに従うことを分ける練習です。

一つの指標が二つの行動を同時に動かすことがある

架空の相談窓口で「対応件数」を強く評価すると、担当者は短い相談を優先したくなるかもしれません。それ自体は悪いとは限りませんが、時間のかかる相談が後回しになるなら、窓口の目的を十分に果たせていない可能性があります。

一方、解決率だけを評価すると、難しい相談を受け付けることに消極的になるかもしれません。どちらも数字を悪用した人がいると断定する話ではありません。測る指標を変えたとき、人がどんな仕事へ注意を向けるかを考える思考実験です。

最初の目的を文章で残す

「図書室の利用回数を増やす」ではなく「調べたいことを自分で調べられる人を増やす」と決めた場合、利用回数は数ある手段の一つになります。利用回数が一時的に減っても、必要な資料へアクセスできる人が増えていれば、目標へ近づいている可能性があります。

ここで大切なのは、都合のよい結果が出た後で目的を書き換えないことです。最初に目的を決め、指標の意味と限界を共有しておきます。改善活動が途中で変わったなら、なぜ変えたかを記録しておけば、数字だけでは見えない判断も説明できます。

指標を少なくするための質問

「この数字が上がっても、目的を達成していない場合はあるか」「この数字が下がっても、目的へ近づいている場合はあるか」の二つを考えてみます。両方に簡単な反例が見つかるなら、一つの指標だけを成功条件にするのは危険かもしれません。

反例を探すのは数字を否定するためではありません。数字が何を測り、何を測っていないかを明確にすることで、同じ数字をより正しく使えるようにするためです。

まとめ

数値目標は進み具合を確かめる道具です。しかし測りやすい数字だけを伸ばしても、目的が改善するとは限りません。目標と指標の違いを保つことが大切です。

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