
ゲームを開くと、ログインボーナスや連続達成の印が表示されることがあります。報酬があると始めやすい一方、いつの間にか「楽しいから遊ぶ」より「報酬を取り逃したくないから開く」が中心になることもあります。仕組みを考えるときは、何をすると報酬が出るのかと、本当に増やしたい行動は何かを区別します。
報酬が増やすのは「良い行動」とは限りません
架空の学習ゲームで「問題を一問解くごとに1点」もらえるとします。学びを深めてほしい作り手は、問題に取り組む回数が増えることを期待するでしょう。でも、同じ簡単な問題を何度も選ぶ方が点数を集めやすいなら、プレイヤーは難しい問題を避けるかもしれません。
点数が増えたことと、理解が深まったことは別です。報酬が目標に合っているかを確認するには、得点だけでなく、以前できなかった問題が解けるようになったかも見る必要があります。
連続記録を守ることが目的になる場面
七日連続でログインすると特典がもらえる仕組みを考えます。毎日少しずつ触れる習慣を作る助けになるかもしれません。一方、疲れている日でも記録を切りたくないという理由でログインする人がいるかもしれません。
同じ「七日連続」という記録でも、ゲームを楽しんだ七日間だったのか、特典だけを受け取った七日間だったのかは分かりません。もし自分が負担を感じているなら、「今日は報酬がなくても遊びたいか」と問い直してみると、本来の楽しさとの距離を確かめられます。
予定通りの報酬と、予想外の報酬
毎回必ず1点もらえる仕組みでは、次の行動で何が起こるかを予想できます。一定の確率で特別なアイテムが出る仕組みでは、同じ行動でも結果が変わります。ただし、結果が不確実な報酬は誰でも必ず熱中する、という話ではありません。ゲームの内容、プレイヤーの目的、時間や費用の制約も関係します。
特に金銭を払って抽選する仕組みでは、遊ぶ側が支払額や確率を把握することが重要です。欲しい報酬が出るまで続ければ必ず合理的だと考えないようにしましょう。すでに使った費用は、次の一回の確率を勝手に有利にするものではありません。
自分で設計するなら、報酬の条件を変えてみる
紙の上で三つの学習ゲーム案を作ります。Aは「解いた問題数」で点数が増える、Bは「昨日間違えた問題が解けたら」点数が増える、Cは「別の人に解き方を説明できたら」点数が増える仕組みです。どれが正解ということではありません。それぞれ増やしたい行動が違うのです。
Aは取り組み回数、Bは復習後の改善、Cは説明する力を促したい設計だと考えられます。一方で、Bでは最初に簡単に間違えてから解き直すような点数の抜け道もあり得ます。条件を作ったら、意図しない行動が有利にならないか試します。
得点表の外に残る価値
友達と協力した時間、面白い場面を見つけた喜び、失敗から考え直した経験。これらは点数で正確に測れない場合があります。点数化できないから無価値なのではありません。何を記録すると便利で、何を記録から外しているのかを考えることが大切です。
報酬があるから悪い、ない方がよいと決めつける必要もありません。始めるきっかけとして助けになる人もいます。問題になるのは、報酬の獲得が自分の目的とずれたのに、気づかず続けてしまうことです。
全員同じ報酬でも、感じ方は同じではありません
架空の学習イベントで、参加者全員に「毎日参加するとシールを一枚渡す」としたとします。シールを集めるのが楽しい人もいれば、すでに勉強が好きで、報酬の有無は気にならない人もいます。報酬があると始めやすくなる可能性と、報酬がなくなるとやめたくなる可能性は、同じ人にも異なる時期に起こり得ます。
「報酬を付けると必ず学習意欲が下がる」と一般化する必要はありません。自分の目標に合うか、負担が増えていないか、報酬なしでも続けたいかを定期的に確認すれば、仕組みに振り回されていないかを確かめられます。
一度つくったルールを、どう改善する?
A案の「問題数で得点が増える」ゲームで、簡単な問題ばかり選ぶ人が増えたとしましょう。すぐに得点を廃止する代わりに、「まだ解けなかった種類の問題を一問説明できたら加点」と条件を変える案も考えられます。ただし新しいルールにも、友達に答えを教えてもらうだけで得点を得るなどの抜け道が生まれるかもしれません。
報酬設計の改善は、一度の変更で完了するとは限りません。何が起きたら「目的に近づいた」と評価するかを先に決め、狙いと実際の行動のずれを観察することが必要です。
報酬をなくす前に、何が続いているかを見る
学習ゲームの点数を急に廃止した場合、使う人が減ったとしても、何が理由だったかすぐには分かりません。得点が好きだったのか、友達との競争が楽しかったのか、ほかに忙しい時期だったのか、説明はいくつもあります。
そこで、使う側が何を楽しんでいるかを尋ねたり、報酬を変更する理由を説明したりすることも設計の一部になります。「点数がない方が本物の学びだ」と決めつけるより、何の行動を支えたいのかに戻って仕組みを考えます。
報酬は「終わった」の印にもなります
課題を終えた日にカレンダーへ印を付ける行為は、他人から賞品を受け取る仕組みとは違います。自分の進み具合を確かめる記録として役立つ場合があります。一方、印を付けることが最優先になり、内容を確かめなくなるなら目的とのずれが生まれます。
自分で使う記録でも、何を数えるのかを決めましょう。学習した日数を記録するのか、できるようになったことを記録するのかで、得られる情報は違います。
「自分が何のために遊んでいるか」を選び直す
ゲームを開く前に、今日は何を楽しみたいのか、何分くらい使いたいのかを決めてみます。報酬を取りたい日があっても構いません。目的と時間を選んでいるなら、自分の行動を振り返れます。ゲームの報酬設計を知ることは、作り手だけでなく遊ぶ側にとっても、自分の選択を見直す手がかりになります。

