
学校で「明日の行事が中止になるらしい」という話が広まったとします。最初は一人しか知らなかったのに、休み時間が終わるころには多くの人が話していました。噂はどういう速さで広まるのでしょうか。
ここでは、うわさの真偽を扱う前に、伝わり方の模型を作ります。実在の人の噂を拡散する実験はしません。紙のカードや架空の情報を使って、伝達の仕組みだけを考えます。
一人が二人ずつへ伝える模型
最初に1人が架空のニュースを知り、次の回にまだ知らない2人へ伝え、その2人が次の回にそれぞれ別の2人へ伝えると仮定します。新しく知る人数は1回目2人、2回目4人、3回目8人、4回目16人です。最初の1人を含む累計は1+2+4+8+16=31人になります。
このように一定倍率で増える計算は、短い時間の現象を理解するために便利です。しかし現実に毎回必ず二人へ伝わることはありません。同じ人へ何度も届くこともあれば、受け取っても伝えない人もいます。さらに学校の人数には上限があります。
31人という数字は架空の規則から得た結果であり、特定の学校やSNSの拡散速度を示していません。
同じ人へ届いたら、新しい人数は増えない
最初にAさんがBさんとCさんへ知らせ、BさんもCさんへ知らせたとします。伝えた回数は3回ですが、新しく知った人はBさんとCさんの2人だけです。Cさんへの二度目の知らせを「新しい一人」と数えると、広まった範囲を大きく見積もります。
情報の広がりを調べるときは「送られた回数」「受け取った人の数」「実際に内容を読んだ人の数」を分けます。投稿の表示回数と、異なる人の人数が一致しないことがあるのも、このような違いを考える手がかりになります。
一人が多くの人へ伝える場合
架空のネットワークで、一般の人は平均2人へ伝えるとします。一人だけ、部活動の連絡係のように多くの相手とつながる人がいて、その人は20人へ伝えられるとします。広がりはどの人が最初に受け取ったかでも変わります。
ただし、20人へ送れることと20人が信じることは同じではありません。相手がすでに知っていたり、内容を疑ったり、連絡を見落としたりする可能性があります。伝達経路が多いことだけでは、情報が事実として受け入れられたかを測れません。
止まる理由を模型へ加える
一度知らせを受け取った人が、新しい相手には伝えない場合を考えます。伝達する人の割合が小さくなれば、連鎖は途中で止まるかもしれません。仮に新しい人が次に伝える相手の期待人数が平均0.5人相当なら、増え続ける模型にはなりにくくなります。
これは単純化した分岐の考え方です。実際の伝達には人間関係、時間帯、情報への関心、媒体の仕組みなどが関係します。小数の「0.5人」は半人の相手がいる意味ではなく、多くの仮想的な試行を平均した数として解釈します。
広まった速さは正しさを示さない
「多くの人が話しているから事実だ」という推論には注意が必要です。全員が同じ一つの未確認情報から話を聞いたのなら、100人が口にしていても独立した100の証拠があるわけではありません。
学校の行事の例なら、公式連絡があるか、掲示が変更されたかを確かめます。話を聞いた人の人数を増やしても、最初の情報源が不明なら信頼性は改善しません。拡散の規模と、情報の確かさは別の指標です。
自分で試す:架空のカードで伝達図を描く
紙に10人分の丸を書き、誰が誰へ連絡できるか線で結びます。最初に一人の丸だけ色を付け、次の回でつながった相手へ情報が届くと仮定して色を増やします。すでに色が付いた丸は数え直しません。
次は中央の人から始める場合と、端の人から始める場合を比較しましょう。また、一部の線を消したとき何回で全員へ届くか考えます。線を増やせば到達は速くなる場合がありますが、それは情報が正しくなることとは違います。
全員に届いたとしても、全員が同じことを覚えるとは限らない
10人全員が同じ連絡を受け取っても、「明日の行事は延期」と「明日の行事は中止」を取り違える人が出るかもしれません。伝わった人数と、同じ内容を理解した人数は別です。
架空の10人に紙のカードで情報を伝えるとします。Aの方法は同じ文を見せて伝え、Bの方法は見た人が次の人へ口頭で伝えます。最後に最初の文とどれだけ内容が一致しているか比べます。ただし実験では最初から架空の無害な内容を使い、誰かの秘密や誤解を招く情報を利用しないでください。
内容が途中で変化することを観察すれば、拡散の速さだけを調べていたときと違う問いが生まれます。広まる数、内容の変化、受け取った人が正しいと信じたか、という三つは混同しないことが必要です。
「出所が複数」に見えても、実際は一つの場合
Aさんがある話をBさんとCさんへ送り、BさんとCさんがそれぞれDさんへ伝えたとします。Dさんは二人から同じ話を聞いたので「二つの情報源がある」と感じるかもしれません。しかし話の始まりがAさん一人なら、独立した二つの裏付けを得たことにはなりません。
ニュースで複数の記事が同じ発表を引用している場合も、情報の由来を確かめる価値があります。記事数の多さだけで根拠が独立していると推測しないことが重要です。公式な一次情報を確認できるなら、伝言の輪をたどるより確かな場合があります。
自分の意見と伝達の事実を分ける
噂に対して「きっと本当だと思う」「心配だから広めたい」と感じることはあります。しかし感じたことと確かめた事実は違います。受け取った時点では未確認であるなら、行動を起こす前に情報元を調べるという選択肢があります。
今回の模型を学ぶ目的は、情報を速く拡散する技術を身につけることではありません。速く広がった話だから正しいとは限らないと理解し、必要なときに立ち止まって確かめる判断材料を持つことです。
まとめ
噂の広がりは、誰とつながっているか、重複して届くか、受け取った人がさらに伝えるかで変わります。広く伝わった事実と、話の中身が正しいことを混同しないのが重要です。

