記憶OS 第9章|チャンク化

これだけ覚えよう

  • たくさんのものを、そのまま一つずつ覚えず、まとまりにして覚える。
  • たとえば7個をばらばらに持つ代わりに、「3個のまとまり+4個のまとまり」として持つ。
  • 慣れてくると、水泳の「腕・足・息」がまとめて「一かき」のように一つの動きとして扱えることもある。
  • ただし、まとめたせいで中身が分からなくなってはいけない。
  • 必要なら元の細かい部分へ戻せるまとまりにする。

一かき

はじめのころ、水の中には、やることが三つあった。

腕を回す。

足を打つ。

顔を横へ向けて、息を吸う。

三つのうち二つまでは、どうにかなる。三つ目を思い出したときには、たいてい一つ目が抜けている。息を吸おうとすると足が止まり、足を思い出すと腕が遅れる。

二十五メートルが遠い。遠いのは距離ではなく、数のほうだ。三つを、二十回以上、順に思い出さなければならない。

ある日、それが一つになる。

前の日と何も変わっていない。腕は同じ回り方をして、足は同じ数だけ打ち、顔は同じところで横を向く。減ったものは一つもない。

ただ、数えるときに、一つになっている。

一かき。

もう三つを思い出していない。思い出しているのは、一かき、次の一かき、その次の一かき。

やっていることは前と同じで、抱えている数だけが、三分の一になった。

こうなると、余りが出る。

三つを順に追いかけていたあいだ、頭には他のものを置く場所がなかった。いまは、壁までの距離を見ていられる。前を泳ぐ人との間隔も分かる。増えたのは能力ではなく、空いた席だ。

覚えることでも、同じことが起きる。

ばらばらに七つあると、七つ分の手が要る。三つと四つで一つずつのまとまりになると、二つ分で足りる。七つは、七つのままそこにある。捨てても縮めてもいない。数え方が変わっただけだ。

まとめるとき、中身を薄くしてはいけない。

薄くしたものは、あとで開いても、薄いまま出てくる。

一かきの中には、腕も足も息も、全部入っている。入っているから、フォームを直そうと思えば、いつでも三つに戻せる。

戻せるうちは、まとめてよい。


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