感情OS 第2章|不安処理

これだけ覚えよう

  • 不安なときは、「今わかっていること」と「まだ起きていない想像」を分けてみる。
  • 返事が来ないと、「怒っているのかも」「忘れられたのかも」と、まだ起きていない話が頭の中で増えることがある。
  • 可能性を全部「考えすぎ」と消す必要はない。まだ分からないものは、分からないまま残していい。
  • そのうえで、「確認の連絡をする」「先に準備する」など、今できることを探す。
  • 不安をなくしてから動くのではなく、不安が残ったままでも手の届くことはできる。

まだ何時か決まっていない

土曜の朝、九時。

午後に人が来ることになっている。何時に着くかは、まだ決まっていない。前の日に、着く時間が分かったら連絡します、と言われた。

九時十分。まだ来ない。

九時二十分。まだ来ない。

その十分のあいだに、頭の中では、もっと長いことが起きている。

来られなくなったのかもしれない。こちらが日にちを間違えたのかもしれない。先週の返事の書き方が、そっけなかったのかもしれない。そもそも、来たくないのを断れずにいるのかもしれない。

一つ思いつくたびに、それがもう決まったことのように見える。

台所の椅子に座って、机の上の携帯を見ている。見ていても、画面は変わらない。

いま、目の前にあるものを言ってみる。

九時二十分。連絡はまだ来ていない。約束は土曜の午後で、こちらの記憶では今日だ。天気は晴れている。

それだけだ。

そのあとに続いていたものは、全部、まだ起きていない。起きていないのに、頭の中では起きた形をしている。区別がつかないのは、どちらも同じ場所で見えるからだ。

言葉にすると、少し分かれる。

分かれたところで、来られなくなった可能性がなくなるわけではない。可能性は残る。残るから、こちらは椅子から動けない。

この落ち着かなさは、悪いものではない。

もし何も感じなければ、九時二十分に携帯を見てはいない。予定が宙に浮いていることに気づいていない。落ち着かなさは、まだ決まっていない、ということを知らせるために鳴っている。

鳴っているものを止めようとしても、止まらない。

止まらないので、鳴らせたまま、いま手が届くことを一つだけする。

短く送る。何時ごろになりそうですか。

送ったところで、返事は来ない。すぐに来るものでもない。

もう一つ。

昼のものを、先に作っておく。

何時に来ても出せる形にしておくと、その一点は、返事を待たなくてよくなる。

作っているあいだ、頭の中の場面は、少し薄かった。

十時十五分に、返事が来る。

来なかった十分のことも、来た一行のことも、同じ土曜の午前に入っている。


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