感情OS 第3章|恐怖分解

これだけ覚えよう

  • 「怖い」でまとめず、「何が怖い?」をもう少し細かく見てみる。
  • 脚立が怖いなら、高さそのものではなく、「足元が沈みそう」「つかまる場所がない」が怖いのかもしれない。
  • さらに「もしそうなったら何が困る?」とたどると、別の心配が隠れていることもある。
  • 分けた結果、気持ちではなく、本当に危ない条件が見つかることもある。
  • 怖さを全部乗り越える必要はない。危ないならやめることも、恐怖を正しく使った判断。

三段目

脚立の三段目で、足が動かなくなる。

怖くない、と言ってみる。言っても、手は横木を握ったまま離れない。

言葉で押しのけようとしたが、押しのけられなかった。

だから、代わりに聞いてみる。

何が怖いのか。

高さ、と最初は思う。けれど、同じ高さの階段の途中では、こうならない。だとすると、高さではない。

脚立の脚が、片方だけ土の柔らかいところに乗っている。さっき、少し沈む感じがあった。

沈むこと。それだ。

もう一つある。

沈んで倒れたとき、掴むところが何もない。階段には手すりがある。ここには、自分が持っている枝しかない。

対象が二つに分かれた。高さではなく、沈むことと、掴むところがないこと。

分けたので、片方には手が届きかける。脚の下に何か敷けばいい、とまず思う。

思ってから、それが思いつきだと気づく。柔らかい土に板を一枚置いても、土が柔らかいことは変わらない。平らな台か、脚を据えられる場所か、下で押さえてくれる人か、そのどれかが要る。

今日は、どれもない。

もう片方も、同じところで止まる。掴むところは、今日は作れない。

ここまで来ても、まだ足は動かない。

だから、その先も言葉にする。

倒れたら、どうなるか。

腕か足を痛める。数週間、仕事にならない。仕事にならないと、今月の分が入らない。

そこまで言ってみて、止まる。

止まったところに、もう一つあった。

こちらが怖いのは、痛みではない。数週間、誰かに頼らないと暮らせなくなることのほうだ。頼める相手を、いま、すぐには思いつかない。

それは、脚立の上で解決することではなかった。

ここまでで、怖さが二つに分かれている。

一つは、こちらの側にある。頼める相手をすぐに思いつかない、ということ。これは、脚立を降りてから、時間をかけて扱う。

もう一つは、こちらの側にない。土が柔らかいことと、掴むところがないこと。これは、気持ちの持ち方では動かない。動かないものを、怖さを押しのけて越えるのは、勇気ではない。

降りる。

降りると、足はあっさり動いた。

脚立をたたんで、壁に立てかける。枝は、今日は切らない。台を借りるか、誰かがいる日にする。

怖さは減っていない。

減ったのは、それが何なのか分からない部分のほうだ。そして、残った怖さのうち、どこまでが自分の中の話で、どこからが足元の話なのかは、分かれている。


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