
説明だけの文に、比喩を一つ置いてみる3分実験
こんな文があります。
新しい仕事を覚えるのに時間がかかった。
意味は分かります。
では、この文章に比喩を一つ入れると、どう変わるでしょうか。
まずやってみる
1. 元の文を読む
新しい仕事を覚えるのに時間がかかった。
まずは、このまま読んでください。
どんな大変さだったのか、どこまで想像できましたか?
2. 比喩を一つ入れる
新しい仕事を覚えるのは、知らない町で地図なしに道を探すようだった。
かなり印象が変わりました。
3. 別の比喩に変える
新しい仕事を覚えるのは、ピースの多いパズルを一枚ずつ埋めるようだった。
同じ「覚えるのに時間がかかった」でも、
- 道に迷う
- パズルを埋める
では、大変さの種類まで違って見えます。
4. 比喩を外してみる
もう一度、
新しい仕事を覚えるのに時間がかかった。
へ戻します。
比喩を入れると何が増え、逆に何が狭くなったでしょうか。
ここから種明かし
比喩は、知らないものを、知っているものに重ねて理解させる方法です。
ただし比喩を入れると、分かりやすくなる代わりに、見方が一つに寄ることがあります。
「地図なしで道を探す」なら迷いが強くなり、「パズル」なら少しずつ組み上がる感じが強くなります。
つまり比喩は、意味を足すだけでなく、意味の方向を選ぶ表現でもあります。
ここまでの答えを見比べてみよう
| <見るところ> | <たとえば> |
|---|---|
| 比喩なし | 事実をそのまま受け取れる |
| 道にたとえる | 迷い・不確かさ |
| パズルにたとえる | 部分を組み上げる感じ |
| 別の比喩にする | 同じ出来事でも別の意味が強くなる |
文章で見ると?
比喩は、飾りではなく「見方」を渡す
比喩には、
これは、こういうものとして見てください
と、読み手に一つの見方を渡す働きがあります。
だから内容に合っていなければ、分かりやすくするどころか誤解を生むこともあります。
記憶学で見ると?
新しい情報を、すでに知っているものと結びつけると、思い出す手がかりを持ちやすくなる場合があります。
ただし、比喩の方だけが強く残り、本来の意味がずれることもあります。
記憶OSから補足
(記憶OSは「脳のOS」の一部です)
連想記憶
一つの情報を、別の情報と結びつけて扱います。
脳のOSで見ると?
比喩理解
一つの出来事を、別のものの構造を借りて見直しました。
他には……
- 具体⇄抽象変換: 抽象的な大変さを、道やパズルという具体へ移す。
- 背景理解: その比喩が何を強調しているのかを見る。
- 本質抽出: 元の出来事のどの特徴を比喩として持ち運ぶかを選ぶ。
もう一度だけ
話し合いがなかなか進まなかった。
この文に比喩を一つ入れてください。

