第8回|同じ出来事を、別の人から書いたら?

視点人物を変えてみる3分実験

同じ出来事でも、誰が書くかで文章に入るものは変わります。

今回は、出来事そのものは変えずに、書く人だけを変えます。

まずやってみる

1. まず「自分」から書いた文章を読む

発表の途中で、私は次の言葉が出てこなくなった。教室が急に静かになった気がした。隣にいたユウキが、小さな声で最初の一言を教えてくれた。

これは、発表している本人から見た文章です。

2. ユウキから書く

発表の途中で、隣にいたタクミが急に黙った。少し待っても続きが出てこなかったので、僕は次の文の最初だけを小声で言った。

入る情報が変わりました。

本人の文章にあった、

教室が急に静かになった気がした。

はなくなっています。

3. 聞いていた人から書く

発表の途中で、一人が急に話すのをやめた。隣の子が何かを小声で言うと、少しして発表がまた始まった。

さらに情報が減りました。

聞いていた人には、本人の頭の中は分かりません。

4. 三つを比べる

同じ出来事なのに、

  • 本人
  • 隣の人
  • 聞いていた人

で、何を書くかが変わりました。

何が一番大きく変わったでしょう。

ここから種明かし

視点を変えると、事実そのものが別の出来事になるわけではありません。

変わるのは、

その人が知っていること、見えていること、感じていること

です。

本人なら、

言葉が出てこない 静かになった気がする

と書けます。

でも客席の人には、それが本当にどう感じられていたのかまでは分かりません。

だから視点を変えると、書ける情報そのものに制限がかかるのです。

ここまでの答えを見比べてみよう

<見るところ> <たとえば>
発表している本人 言葉が出ない、自分がどう感じたか
隣のユウキ 本人が黙った、自分が助けた
聞いていた人 発表が止まり、また始まった
共通していること 発表が一度止まり、隣の人の助けで再開した

文章で見ると?

視点は「カメラの位置」だけではない

視点を変えるというと、

どこから見ているか

だけを考えがちです。

でも文章では、

その人は何を知っているか

も重要です。

別の人物には、本人の気持ちをそのまま書けません。

つまり視点を変えると、書ける情報そのものに制限がかかるのです。

記憶学で見ると?

同じ出来事を別の立場から考えると、出来事を違う関係から組み直すことになります。

ただし、別視点で考えれば記憶が必ず正確になるわけではありません。

むしろ、実際には分からないことまで想像で補ってしまう可能性もあります。

今回は、

自分が知っていることと、想像していることを区別しながら再構成する

という使い方です。

脳のOSで見ると?

多角的視点

同じ出来事を、一人の立場だけで固定せず、別の人から見直しました。

他には……

  • 前提把握: その人物が何を知っているかを確認する。
  • 背景理解: 行動の後ろにある事情を見る。
  • 境界理解: その人物が「知っていること」と「知らないこと」の境目を見る。

もう一度だけ

次の場面を、二人の立場から一文ずつ書いてください。

バスに乗ろうとした人が、発車直前に走ってきた。運転手はドアをもう一度開けた。

  • 走ってきた人
  • 運転手

では、同じ出来事がどう変わって見えるでしょうか。

おすすめの記事