
スマートフォンのWi-Fi表示が最大なのに、動画が止まる。逆に表示の線が少なくても、意外と快適に使えることがあります。電波の強さと通信の速さは同じ数字ではありません。通信のどの部分が遅くなっているのかを、家の中で確かめる方法を考えてみましょう。
通信にはいくつもの区間がある
ウェブサイトを見るとき、スマートフォンからWi-Fiルーターへ無線でつながり、その先は回線事業者などのネットワークを通って目的のサーバーへ通信します。画面のWi-Fiマークが主に示すのは、端末とアクセスポイントの間の受信状態です。インターネット全体の速度を直接表しているわけではありません。
例えば無線区間が十分速くても、インターネット側の回線が混んでいれば動画の読み込みは遅くなります。反対に回線が速くても、遠くの部屋で無線の再送が多くなると、端末で感じる速度は下がります。大事なのは「どの区間の問題か」を分けることです。
また、Mbpsは一秒間に運べるビット数の単位です。画面に表示されるリンク速度は、アプリが実際にダウンロードできる速度とは異なります。通信には制御情報や待ち時間があり、他の機器との順番待ちもあるため、表示された理論値がそのまま手元の実測値になるわけではありません。
2.4GHzと5GHzを比べる前に
Wi-Fiでは2.4GHz帯や5GHz帯などが使われます。一般に2.4GHz帯は壁などがある場所でも届きやすいことがある一方、周辺機器との電波の干渉を受けやすい場合があります。5GHz帯は広いチャンネル幅などを利用して高速通信しやすい一方、一般に2.4GHz帯より壁や距離で電波が弱まりやすい性質があります。
「5GHzだからいつも速い」とは言えません。実際の速度は端末とルーターが対応する規格、チャンネル幅、周囲で同じ帯域を使う機器の数、ルーターの配置などで変わります。家の間取りが違えば最適な位置も違います。
さらに、電波の周波数とインターネット契約の上限速度は別の話です。周波数帯を切り替えて改善することもありますが、そもそも回線側が遅いときには効果が小さい場合があります。改善策を考える前に、原因を一つに決めつけないことが大切です。
部屋を移動して速度を測る小さな実験
スマートフォンを同じ機種、同じ回線、同じ測定サービスにして、ルーターの近く、隣の部屋、離れた部屋の三か所で速度を測ります。各場所で一回だけ測るのではなく、数回測ってばらつきも記録します。家族が大きなファイルを送っている時間と、そうでない時間は分けてみましょう。
仮に近くで80Mbps、離れた部屋で25Mbpsだったとしても、その差がすべて距離のせいとは限りません。測定した時間が違えば外部回線の混雑も変わります。できれば短い時間で条件を入れ替えて、同じ傾向が繰り返されるか確かめます。
数値が大きくてもウェブ会議が途切れる場合は、通信が遅れる時間や一時的な途切れにも目を向けます。動画の読み込みには速度が、会話には応答の遅れや安定性も影響します。何の用途で困っているかによって、見るべき数字が異なるのです。
何を変えると改善するのか
ルーターを床の隅や金属製の家具のすぐそばから、見通しのよい場所へ移してみると、障害物の影響を変えられます。ただし集合住宅や周辺の電波状況によって結果は異なります。設置場所を変える前後で同じ測定方法を使い、実際に改善したか確かめてください。
多数の端末を同時に接続していると、空いている時間帯より通信が遅くなることがあります。その場合は、端末を一台に減らした状態でもう一度測ります。こうすると、電波の届きにくさと利用者が多いことの影響を区別する材料になります。
回線が不安定なときにルーターの再起動が効果を持つ場合もありますが、再起動のたびに原因が分かるわけではありません。改善した時間だけを見て成功と判断せず、同じ問題が再発するかも確認しましょう。
速いWi-Fiの条件を一つにしない
動画視聴、オンライン授業、ゲーム、ファイル送信では必要な性能が少しずつ違います。速度が足りないのか、遅れが大きいのか、接続が途切れるのか。最初に困りごとを具体的に書くと、調べる順番が決まります。
家庭での安全な範囲の実験だけでも、電波マークだけでは説明できない違いが見つかるはずです。原因を特定したいときは、同じ端末・同じ測定方法で条件を一つずつ変えることが基本です。ルーターを買い替える判断は、その結果を見てからでも遅くありません。
速度だけでなく、実際に転送したいファイルの容量も分かると、必要な時間の目安を計算できます。次に、その理想的な数字と実測値を比べてみましょう。
通信速度と送信時間をつなぐ計算
例えば実測のダウンロード速度が40Mbpsで、ファイルの大きさが100MBだと仮定します。1バイトを8ビットとして概算すれば、100MBは800Mbです。単純に800÷40で約20秒となります。しかし現実には通信の制御情報、サーバー側の制限、再送、速度の変動などがあるため、実際の時間はこの数字からずれることがあります。
同じ端末で40Mbpsと表示された後に、動画の送信に40秒かかったとしても、即座にルーターの故障と断定するのは早計です。速度を測った相手と、ファイルを送った相手が違えば、通信経路やサーバーの処理も違います。測定の目的に近い試験を選ぶ必要があります。
また、「下り」が速くても「上り」が遅い契約や回線があります。動画を見るときと、自分の動画をアップロードするときでは向きが反対です。通信が速いか遅いかを考えるには、数値だけでなく、どの方向に、どの相手へ、何を送ったのかまで記録することが重要です。

