第4回|「すごく」を全部消したら、弱くなる?

強調する言葉を削ってみる3分実験

「すごく」「とても」「本当に」。

文章を書くと、つい使いたくなる言葉です。

でも、これを消したら文章は弱くなるのでしょうか。

まずやってみる

1. 元の文を読む

昨日の試合は、すごく緊張した。相手はとても強かった。でも、最後に本当にうれしいことが起きた。

「強い気持ち」がたくさん入っています。

2. 強調する言葉だけ消す

昨日の試合は緊張した。相手は強かった。でも、最後にうれしいことが起きた。

どうでしょう。

少しすっきりしました。

でも、何か物足りないでしょうか。

3. 一か所だけ具体に変える

たとえば、

試合前、靴ひもを結び直す手が震えていた。

前半は、一度も相手のゴール前まで行けなかった。

終了間際、同点のシュートが入った。

「すごく」を戻さずに、強さを伝えてみます。

4. どこに強調語を残すか決める

全部消す必要はありません。

逆に、全部入れる必要もありません。

どこは言葉で強める? どこは具体で見せる?

を選んでください。

ここから種明かし

「すごく」は、程度を強くする言葉です。

でも、

すごく緊張した

と

靴ひもを結び直す手が震えていた

では、読者が受け取る情報の種類が違います。

前者は評価を直接渡します。

後者は場面を渡します。

今回は、

強調語を減らし、その代わりに具体を置けるか

を試しました。

ここまでの答えを見比べてみよう

<見るところ> <たとえば>
強調語あり すごく緊張した。
強調語なし 緊張した。
具体に変える 靴ひもを結び直す手が震えていた。
相手の強さを具体にする 前半は一度も相手のゴール前まで行けなかった。

文章で見ると?

強く言うか、見せるか

強調語は悪い言葉ではありません。

短く気持ちを伝えたいときには便利です。

ただ、何度も使うと、

何が、どれくらい、どうすごかったのか

が全部同じ言葉の中に入ってしまいます。

そこで一部だけでも具体に変えると、文章の表情が増えます。

記憶学で見ると?

「すごく緊張した」という情報は、意味は分かりますが、場面の手がかりは少なめです。

そこに、

  • 手が震えた
  • ゴール前まで行けなかった
  • 終了間際に同点になった

のような出来事が加わると、その文章を後から思い出すときに使える情報も増えます。

ただし、具体表現なら何でも記憶に残るわけではありません。

ここでは、一つの評価語だけより、出来事との結びつきが増えると考えます。

記憶OSから補足

(記憶OSは「脳のOS」の一部です)

イメージ記憶

「緊張」という言葉を、震える手のような場面へ変えると、言葉だけではなくイメージとして扱える材料も増えます。

脳のOSで見ると?

選ぶと捨てる

まず、「すごく」「とても」「本当に」を一度外し、どこに強さを残すか選び直しました。

他には……

  • 具体⇄抽象変換: 抽象的な強さを、出来事や動きへ変える。
  • 本質抽出: 何を一番強く伝えたいのかを取り出す。
  • 決める: どこを強調し、どこは普通に書くかを決める。

もう一度だけ

次の文から「とても」を消して、別の方法で強さを伝えてください。

その店は、とても混んでいた。

4本を通して

第1〜4回では、文章に対して次の四つの操作をしました。

  1. 足す
  2. 分ける
  3. 並べ替える
  4. 削る

文章を上手に書く方法を覚える前に、

文章は、動かせるものだ

と体験するための最初の4本です。

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