感情OS 第8章|評価恐怖対処

これだけ覚えよう

  • 誰かの悪い評価を、「自分全部への評価」に広げない。
  • 「このスプーンは少し厚い」と言われたなら、言われたのは厚みについてであって、作った人のすべてではない。
  • 評価を受けたら、「誰が?」「何について?」「どんな基準で?」と分けてみる。
  • 直したほうがいい情報なら使えばいいし、好みの違いなら、そのままにすることもできる。
  • 一人の一言から使える部分だけ取り出して、残りまで自分の評価にしない。

通りすがりの一言

手作り市に、木のスプーンを十二本並べた。

朝のうちに七本売れて、昼過ぎに、一人が立ち止まった。

手に取って、ひっくり返して、置いた。

置きながら、言った。この値段なら、もう少し薄く削ってあるものが買える。

その一言が、帰りの車の中でも鳴っていた。七本売れたことは、もう思い出せなくなっていた。

家で、その言葉をもう一度置いてみる。

言ったのは誰か。

名前を知らない人だ。通りかかって、二十秒立ち止まった。この先も会わないかもしれない。

何について言ったか。

厚みと値段について言った。木の種類にも、口当たりにも、触れていない。スプーンぜんぶではなく、削りの厚みという一点についての話だった。

どの基準で言ったか。

たぶん、値段に対する削りの手間を基準にしている。その基準では、この一本は負けている。負けているのは事実だ。

三つに分けると、残るものが変わる。

残ったのは、こちらの人格ではなく、厚みだった。

厚みは、直せる。

直したければ直せばいいし、直さない理由もある。厚いほうが、熱い汁物でも持ち手が熱くならない。これはこちらが選んで、そうしていた。

だから、その一言は、直す情報として使える部分と、好みとして受け取っておく部分に分かれる。

分かれても、まだ痛い。

痛いのは、二十秒の相手に、こちらの半年を測られたように感じたからだ。

測られてはいない。相手が見たのは厚みで、半年ではない。半年は、相手の視界に入っていない。

全員から良い言葉をもらう並べ方は、たぶんない。薄く削れば、別の人が持ち手の熱さを言う。

次の市には、厚いのと薄いのを、両方持っていくことにした。

そして、また並べる。

並べないと、誰の言葉も来ない。誰の言葉も来ないほうが静かだが、静かなだけだ。


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