「人前で話すのが怖い」を、一つの怖さにしない

「人前で話すのが怖い」

そう言うと、一つの大きな怖さに見えます。

でも、同じ「怖い」でも、

「途中で頭が真っ白になるのが怖い」

のと、

「言葉に詰まったところを見られるのが怖い」

のと、

「変な人だと思われるのが怖い」

のとでは、少し違います。

終わったあとに、

「あの失敗を何度も思い出しそうで嫌だ」

という怖さまで入っていることもあります。

人前そのものが一枚の壁なのではなく、その奥に別々の怖さが何枚か重なっている。

そんな場合は、「人前が怖い」の一言だけでは、まだ中身がよく見えていません。

同じ壇上でも、怖がっているものは違う

明日の発表が怖い二人がいるとします。

一人は、

「途中で何を話すか分からなくなったらどうしよう」

と思っている。

もう一人は、

「失敗したところを見られて、能力がないと思われたら嫌だ」

と思っている。

二人とも口にするのは、

「発表が怖い」

です。

でも、前者なら、話す順番を短く手元に残すことが助けになるかもしれない。

後者は、原稿を完璧に覚えても怖さがあまり減らないかもしれません。

怖さの中身が違えば、届く対策も違います。

だから「勇気を出す」の前に、

何が起きるのが怖いのか

まで言葉にしてみる。

「それが起きたら」の先へ一度だけ進む

怖さは、ときどき途中で文章が切れています。

「頭が真っ白になったら……」
「笑われたら……」
「失敗したら……」

この「……」の中が見えないままだと、そこから先だけが底なしになります。

では、頭が真っ白になったら何が起きるのか。

少し黙るかもしれない。
手元を見るかもしれない。
言い直すかもしれない。

それを見た人がどう思うかまでは、自分には決められない。

それでも「何が起きるか」を最後まで少し具体的にすると、怖さの形が変わることがあります。

さらに、

「失敗が怖い」

の奥に、

「能力がないと思われるのが怖い」

がいて、

その奥に、

「期待を裏切るのが怖い」

がいることもあります。

最初に見えていた怖さと、本当に足を止めている怖さが同じとは限りません。

分けても、怖いものは怖い

ここで大事なのは、

「分解すれば怖くなくなる」

という話にしないことです。

発表前に心臓が速くなることもある。
声が震えることもある。

分けても残る怖さはあります。

ただ、

「人前」という巨大な一枚の壁だったものが、

「言葉を忘れる」
「見られる」
「評価される」
「あとで思い出す」

という別々のものに戻れば、少なくとも全部を同時に相手にしなくてよくなります。

怖さの大きさを、そのまま対象の大きさだと思わない。

「怖い」と感じたら、その次に一つだけ置いてみる。

何が、怖い?

そこまで言えたとき、壁だったものに初めて手をかけられます。


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