
ひとつの言葉から、頭の中を探してみる3分実験
「3分実験室」は、3分前後でひとつの小さな頭の実験をして、あとから「今どんな頭の使い方をした?」を見ていくシリーズです。
「傘」と聞いたら、何を思い浮かべますか?
まずは、思いついたものをそのまま出してみましょう。
まずやってみる
1.「傘」から5個
「傘」と聞いて思いつくものを、30秒で5個書いてください。
2.今度は、違う方向から探してみる
さっきとは少し違うところから、「傘」について考えてみます。
人なら?
傘で思い出す人は?
場所なら?
傘で思い出す場所は?
昔なら?
子どもの頃の傘で覚えていることは?
気持ちなら?
傘に関係する、嬉しかったことや嫌だったことは?
ほかにも、こんなふうに考えられます。
| <考え方> | <たとえば> |
|---|---|
| 事実 | 傘にはどんな種類がある? |
| 経験 | 最近、傘を使ったのはいつ? |
| 過去 | 子どもの頃の傘の記憶は? |
| 人 | 傘で思い出す人は? |
| 場所 | 傘で思い出す場所は? |
| 感情 | 嬉しかった・嫌だった記憶は? |
| 物語 | 傘が出てくる映画やアニメは? |
| 比較 | 昔の傘と今の傘は何が違う? |
| もしも | 傘がなかったら? |
| 視点を変える | 自分が傘だったら何が見える? |
全部やる必要はありません。
たとえば、
傘 → 人
傘 → 場所
傘 → 過去
のように考えてみます。
このシリーズでは、この「人」「場所」「過去」のようなものを「入口」と呼ぶことにします。
この中から気になる入口を一つか二つ選んで、最初の5個にはなかったものを3個考えてみてください。
3.出てきたものを、一つだけ細かくする
今までに出したものの中から、自分の経験につながりそうなものを一つ選んでください。
たとえば、
学校の帰り道
昔使っていた傘
一緒に歩いた友達
風で傘が壊れた日
などです。
選んだものについて、次から答えやすいものを2つくらい考えてみてください。
どこだった?
誰かいた?
何が起きた?
何が見えた?
どんな気持ちだった?
全部答えなくても大丈夫です。
4.30秒で話してみる
今思い出したことを、誰かに話すつもりで30秒くらいにまとめてください。
声に出しても、書いても構いません。
ここから種明かし
最初に出した5個と、そのあとの答えを見比べてみてください。
最初は、
雨
長靴
水たまり
梅雨
ビニール傘
のようなものだったかもしれません。
ところが、「人なら?」と考えたら、
小学生のころ一緒に帰った友達
が浮かんだかもしれません。
「昔なら?」と考えたら、
親に買ってもらった黄色い傘
を思い出したかもしれません。
「経験なら?」と考えたら、
台風の日に傘が壊れた
という出来事が浮かんだかもしれません。
同じ「傘」でも、
人から考える
場所から考える
昔のことから考える
と変えるだけで、思い浮かぶものも変わることがあります。
「みんなが知っている傘」から「自分の傘」へ
最初の、
雨
日傘
折りたたみ傘
は、ほかの人も思いつきやすいものです。
一方、
小学生のころ友達と傘を振り回した
駅で傘をなくした
初めて日傘を買った
という話は、自分自身の経験です。
「人」「場所」「過去」「経験」などから考えてみると、一般的な言葉だけでなく、自分自身の記憶まで思い出すことがあります。
一つを細かくすると?
たとえば、
「小学生のころ、傘を振り回して遊んだ」
という記憶が出たとします。
そこから、
誰といた?
どこだった?
何色の傘だった?
そのときどう思った?
と考えると、
学校の帰り道だった
友達がいた
黄色い傘だった
面白くて何度もやっていた
と、最初にはなかったことまで思い出すかもしれません。
一つの出来事でも、少しずつ細かく見ていくと、思い出せることが増える場合があります。
30秒にすると、また別のことをする
頭の中には、
小学校
黄色い傘
友達
雨
先生に怒られた
楽しかった
と、いろいろなものが浮かんでいるかもしれません。
でも30秒ですべて話す必要はありません。
何を残す?
何から話す?
どこを省く?
と考えて、一つの話にまとめます。
ここまでの答えを見比べてみよう
| <見るところ> | <たとえば> |
|---|---|
| 最初の5個 | 雨、長靴、水たまり |
| 「人」「場所」「昔」などから考えたあと | 友達、学校の帰り道、昔の傘 |
| 一つを細かくしたあと | 人、場所、気持ちまで思い出した |
| 30秒にしたとき | 残すものと省くものを選んだ |
自分の答えが、最初から最後までどう変わったかを見てみてください。
記憶学で見ると?
何を手掛かりにするかで、思い出す内容も変わる
「傘について何か思い出して」では出なかったことが、「傘で思い出す人は?」「昔なら?」では出てくることがあります。思い出すときには、何を手掛かりにするかも関係します。
他には……
- 知識と自分の経験: 「雨」「長靴」のような一般的な知識と、「学校の帰り道」のような自分自身の出来事は、同じ「傘」からでも別の形で思い浮かぶことがあります。
- 精緻化: 覚えたいことを、人・場所・出来事・気持ちなど、ほかの情報と結びつけて覚えます。
脳のOSで見ると?
多角的視点(思考OS 第13章)
同じ「傘」でも、「人なら?」「場所なら?」「昔なら?」と見る位置を変えると、考えられる内容が変わります。一つの対象を一方向だけから見る必要はありません。
他には……
- 構造分解(理解OS 第12章): 一つの出来事を、人・場所・出来事・気持ちなどに分けて見る。
- 具体⇄抽象変換(理解OS 第3章): 「傘」という大きな言葉から、「黄色い傘」「学校の帰り道」のような具体へ降りる。
- 選ぶと捨てる(思考OS 第10章): 思い浮かんだものから、30秒で話す内容を選ぶ。
- ストーリー化(理解OS 第21章:話として並べ直す): バラバラに思い出した情報を、一つの話になるように並べ直す。
もう一度だけ
次のお題は、
「靴」
です。
今度は、
- 「靴」から思いつくものを5個
- 「人」「場所」「昔」「気持ち」などから考えて3個
- その中から、自分の経験につながるものを一つ選ぶ
- 少し細かくする
- 30秒でまとめる
までやってみてください。
「傘」のときと比べて、思い浮かんだものや思い出したことには、どんな違いがあったでしょうか。
今日の実験はここまでです。

