理解OS 第20章|図式化

これだけ覚えよう

  • 言葉だけで分かりにくいときは、丸・線・矢印で紙に描いてみる。
  • 「AがBにつながる」「BとCが関係する」のような話は、一枚に置くと同時に見やすくなる。
  • 図にすると、話している人どうしが「どこが違うのか」を同じ紙の上で指せる。
  • ただし、図は現実そのものではない。描かなかったものは、図の中では見えなくなる。
  • きれいな図を作る必要はない。「何と何がどうつながっている?」が見えれば十分。

同じ紙を、見る

会議が、二時間続いている。

全員が同じ企画について話している。同じ言葉も使っている。

それなのに、話は少しもかみ合わない。

誰かが立ち上がり、ホワイトボードに丸を描く。そこから線を伸ばし、別の丸へつなぐ。

部屋が静かになった。

全員が、初めて同じものを見たからである。

言葉には、隠れた制約がある。

一列にしか、並べられないのだ。

文章は、どんなに複雑な内容でも、一本の紐として流れていく。

けれども、現実は一列ではない。

一つの出来事が、いくつもの出来事につながる。別々に起きたように見えることが、実は同じ原因から生まれていることもある。さらに、最後に起きたことが、最初の原因をもっと大きくすることもある。

寝不足で集中できず、宿題に時間がかかり、寝るのが遅くなって、また寝不足になる。

文章の中では順番にしか読めなかった関係を、一枚の上へ同時に置く。それが、図式化である。

図は、説明を短くする道具ではない。
世界を同時に見るための道具である。

話し合いがかみ合わないとき、言葉の意味が違うとは限らない。

同じ「売上を増やす」という言葉を使いながら、ある人は新しい客を増やすことを考えている。別の人は、商品の質を高め、もう一度来てもらうことを考えている。

言葉だけで話しているあいだは、その違いが見えにくい。

紙に書けば、指させるようになる。

「私は、ここが先だと思う」

「その前に、これが必要ではないか」

「この二つは、つながっていないのではないか」

ホワイトボードの一枚が起こすのは、意見の統一ではない。

ずれの、可視化である。

輪にすると、初めて見えるものもある。

忙しいから、確認を減らす。

確認を減らしたために、ミスが増える。

ミスを直すために、さらに時間がなくなる。

言葉で追っていると、「忙しいから仕方がない」という話に見える。

けれど図の上では、忙しさが自分自身を増やしている。

どこへ手を入れるかは、その輪を見てから決められる。

ただし、図は現実そのものではない。

何を中央に置くか。何を大きく描くか。どの関係を線で結ぶか。

その選び方によって、同じ出来事でも違う図になる。

図に描かれたものは、重要に見える。図の外へ置かれたものは、存在しないように見える。

だから、ときどき線の外側を見る。

「この図には、何が描かれていないのだろう?」

言葉で行き詰まったら、道具を替えてほしい。

丸と、矢印と、線だけでいい。画力は、一切関係がない。

美しく描く必要も、最初から正しく描く必要もない。描きながら、線を消し、丸を足し、位置を入れ替えればいい。

その紙の上で、二人が同じ場所を指せたなら、それだけで、二時間分の会話より前へ進んでいる。



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