記憶OS 第7章|音読記憶

これだけ覚えよう

  • 覚えたいところを、声に出して読んでみる。
  • 黙って読むだけでなく、自分で言って、自分の声を聞くことになる。
  • 特に、英単語の発音、発表で使う文、どうしても頭に入らない一文などで試しやすい。
  • ただし、全部を何度も音読すればよいわけではない。意味を考えず読むだけでは足りない。
  • 普段は普通に読み、大事なところだけ声に出す、くらいでも使える。

三人で読む

小学一年生の宿題は、今日もどこかで音読である。

古くさく見えるけれど、あれは理にかなった伝統だった。

九九を、あなたは黙読で覚えただろうか。

しちしちしじゅうく。

口が、覚えている。何十年たっても、頭より先に口が言ってしまう。

声には、目とは別の通り道がある。

黙読は、目ひとりの仕事だ。

音読では、三人が働く。

目が、見る。口が、言う。耳が、聞く。

同じ一行に、一度で三回出会うことになる。

しかも耳が聞いているのは、自分の声である。声に出すとは、受け取った情報を、一度自分の体で作り直すことだ。

特に効く場所が、二つある。

外国語と、本番だ。

目でだけ覚えた単語は、読めるのに、会話で出てこない。口が、その音を一度も作ったことがないからだ。

言葉は、意味であると同時に、筋肉の運動でもある。

発表も同じで、原稿を黙って読み返した回数より、声に出した回数のほうが、当日の口を動かしてくれる。

緊張の中で出てくるのは、練習した文だけである。

ただし、音読には弱点がある。

遅い。そして、場所を選ぶ。

だから、全部は読まない。

普段は黙読で速く進み、ここぞという一行だけ、声に乗せる。

覚えたい定義。明日使う一言。何度読んでも入ってこない一文。

電車の中なら、口の中で小さく動かすだけでいい。

一年生の宿題は、読む練習であると同時に、一生使える道具の最初の手渡しだった。

大人になった私たちが、道具のほうを置いてきただけである。


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