
友達が「このゲーム、みんな知っているよ」と言いました。クラスで話題になっているなら、本当に広く知られているのかもしれません。でも、その友達がいう「みんな」は、仲のよい人たちだけのことかもしれません。よく聞く言葉ほど、誰を数えた結果なのかを考える必要があります。
今回は「みんな」という言葉を否定するのではなく、誰について確かめたいのか、誰から答えを集めたのかを分ける方法を考えます。
10人中9人が知っていても、全校の9割とは限らない
架空の学校に300人の生徒がいるとします。ゲーム好きの集まりにいる10人へ聞いたところ、9人が新しいゲームを知っていました。回答者の90%です。ここまでは計算できます。9÷10×100=90%です。
では、学校全体の90%がそのゲームを知っていると言えるでしょうか。ゲーム好きの10人を選んだ時点で、学校全体とは違う集まりになっています。友達の周囲で話題になっていても、別のクラスではほとんど知られていない可能性があります。
「聞いた10人のうち9人が知っていた」という文と、「学校全体の9割が知っている」という文では、対象の範囲が違います。数字が正しくても、対象をすり替えると間違った情報になります。
誰に聞くかだけで結果が変わる
今度は同じ学校で、ゲーム好きの10人ではなく、複数の学年から人数を決めて30人に聞いたとしましょう。知っていたのは15人でした。割合は15÷30×100=50%です。90%と50%、どちらかが計算ミスをしたわけではありません。答えた人の集まりが違うため、結果が変わったと考えられます。
ただし、30人に聞けばそれだけで学校全体を正確に代表できるわけでもありません。休み時間に話しやすい人だけを選ぶと、友達関係や学年に偏りが残ることがあります。理想は、調べたい集団から、特定の種類の人ばかり選ばれない方法を考えることです。
また、人数が少なければ偶然によるばらつきも大きくなります。10人中9人という結果と、1,000人中900人という結果は、同じ90%でも推定の安定性が違います。ここで「何人に聞いたか」も重要になります。
「知っている」の意味もそろえないと比べられない
ある人はゲームの名前を聞いたことがあるだけで「知っている」と答えます。別の人は遊んだ経験がないので「知らない」と答えます。このままでは、同じ質問に別の基準で答えていることになります。
そこで、「名前を見たり聞いたりしたことがありますか」「内容を一つ説明できますか」「遊んだことがありますか」と質問を分けます。三つの質問では、得られる割合が違うかもしれません。目的が「宣伝を見た経験」なら一番目、「遊び方の理解」なら二番目、「利用経験」なら三番目が近いでしょう。
調べるものを先に定義することは、難しい研究だけの作業ではありません。学校のアンケートでも、友達との話でも、誤解を減らす助けになります。
同じ学校でも、調べたい集団によって答えが違う
「全校生徒が知っているか」を調べたいなら、全学年の生徒が対象です。一方、「新入生に知られているか」を知りたいなら、新入生だけを調べます。最初にどちらの質問をしたかったかによって、必要な調査対象が変わります。
例えばゲームについて、新入生の20人に聞いたら15人が知っていて、上級生の20人に聞いたら5人が知っていたとします。新入生の標本では75%、上級生の標本では25%です。合わせた40人では20÷40=50%ですが、学校全体の学年ごとの人数が違えば、50%をそのまま全校の比率とみなすことはできません。
どの集団を表す数字なのか決めずに割合を計算すると、数字の意味があいまいになります。答えなかった人をどう数えるかという問題とは別に、ここでは最初から誰を調べたいのかを中心に考えます。
確率的に選ぶことと、たまたま選ぶことは違う
「無作為に選ぶ」という言葉は、「何となく選ぶ」という意味ではありません。全員が選ばれる機会を持つように、名簿から乱数などを使って人を選ぶ方法があります。ただし、選ばれた人が答えない場合や、名簿に載っていない人がいる場合など、別の問題も残ります。
身近な調査で完全な統計調査をするのは難しくても、質問する相手が似た人に偏っていないかを見直すことはできます。例えば一学年だけでなく複数の学年へ尋ねる、仲良しグループだけに聞かない、調査の日時を記録する、といった工夫です。
結果を解釈するときには、集め方そのものも情報の一部として示すと、読む側が判断しやすくなります。
実験:「みんな」を三段階に書き換える
次の言葉を、確かめられる形へ変えてみましょう。「この曲はみんな知っている」。まず「私の友達5人全員が知っている」。次に「クラス30人のうち何人が知っているか調べたい」。最後に「学校300人でどれほど知られているか知りたい」。
三つは似ていても、必要な調べ方が違います。最初は手元で確認できます。二番目は全員に尋ねることも可能かもしれません。三番目は、質問の仕方と選び方を考えなければなりません。
この変換をすると、「みんな」を嘘だと責めずに「誰の話?」と具体的に聞けます。相手を責めるためではなく、話の範囲を共有するための質問です。
見えない人を「存在しない人」にしない
SNSのアンケートでは投稿を見た人の一部しか投票していないかもしれません。さらに投票した人の中でも、その話題に強く関心のある人が多い可能性があります。「投票者の7割」と「SNSを使う人の7割」は別の数字です。結果がどれほど広がるかは調査の設計次第であり、投票ボタンの近くに表示された大きな数字だけでは決まりません。情報を見るときには、答えなかった人・質問を見なかった人を想像することが役立ちます。
まとめ
「みんな知っている」という言葉を数字として扱うなら、調べたい集団・実際に答えた人・質問の意味を分けます。身近な10人の意見にも価値はありますが、そのまま全校や社会全体の数字にはできません。主張がどこまで広がるかは、集めた情報の範囲によって決まります。

