
「もっと高い目標を立てればやる気が出る」と言われることがあります。確かに、今より少し難しい目標に挑戦すると、工夫する理由が見つかる人もいます。しかし、目標が大きすぎて何から始めればよいか分からなくなることもあります。大切なのは、数字の大きさだけで目標を評価しないことです。
10点アップと50点アップを比べる
次のテストで点数を10点上げる目標と、50点上げる目標を考えてみます。いまの得点が45点なのか90点なのか、科目や試験の難しさはどうかによって、現実的な難しさは変わります。100点満点で90点の人が50点アップすることはできません。数値だけを比べて高い方を選ぶことには限界があります。
また、目標を達成したかどうかと、取り組みから何を学んだかは別です。目標に5点届かなくても、前回できなかった単元を理解できたかもしれません。逆に、目標の点数は達成したのに、たまたま得意な問題が多かっただけかもしれません。
「高い目標」が行動に変わる条件
目標を見ただけでは、次に何をすべきかは決まりません。例えば「数学で80点を取る」には、「関数の文章題を説明できるようにする」「符号ミスを減らす」「制限時間内に見直す」といった異なる課題が含まれることがあります。
ここでやることを小さく分けるのは、目標を下げるためではありません。目標に近づくための方法を選ぶためです。ただし、細かく分けた作業を終えるだけで点数が上がると保証されるわけでもありません。作業と結果のつながりを確かめます。
高く設定することと、失敗を許さないことは違います
難しい目標に挑むとき、到達できなければ全部失敗だと考えると、学習の途中で得た改善が見えなくなることがあります。例えば一か月で英単語300語を覚える目標に対し、250語を自力で説明できるようになった場合、目標達成には届いていませんが、何も進まなかったわけではありません。
もちろん、試験の合否や提出期限のように明確な基準がある場面では、達成と未達を分ける必要があります。重要なのは、結果の判定と、次の改善材料を集めることを分けることです。目標に届かなかった事実を曖昧にしなくても、得られた情報は残せます。
目標を途中で変えてはいけない?
初めに立てた目標に固執した結果、体調や新しい事情に対応できなくなる場合があります。反対に、少し難しく感じたからといってすぐに下げ続けると、挑戦の機会を失うこともあります。
そこで、先に見直し条件を決めます。「二週間の学習記録を見て方法を変える」「残り時間と未習得単元を比較して優先順位を見直す」といった条件です。点数の目標と、使う方法を同時に変更すると、どちらの変更が影響したか分かりにくくなります。まず方法の変更で対応できるか検討します。
自分の目標を三つの問いで確かめる
目標が高いか低いかを考える前に、①自分で何を変えられるか、②進んだことをどう確かめるか、③届かない場合に何を見直すか、の三つを書いてください。結果の数字と毎日の行動を別々に記録すると、「頑張ったつもり」と「本当に変わったこと」の差が見つかります。
例えば毎日30分勉強すると決めたなら、30分実行できたかは活動の記録です。苦手だった問題を説明できるようになったかは、別の結果の記録です。この二つを比べて初めて、今のやり方が目的に近づいているか判断できます。
達成率が同じでも、経験したことは違います
Aさんは10問を目標にして9問、Bさんは100問を目標にして90問解いたとします。達成率はどちらも90%ですが、取り組んだ問題数も、得られた経験も違います。達成率だけで努力や学習効果を比べることはできません。
逆に、たくさんの問題を解けば必ず成長が大きいとも言えません。既にできる問題を繰り返した場合と、苦手な問題を一つ説明できるようになった場合では、学習目的との距離が違います。目標の高さ、活動量、成果の質を一つの数字へ押し込まないようにしましょう。
目標が一つだと、見落とすものがある
「本を一か月で五冊読む」が目標なら、読む冊数は分かりやすい数字です。しかし、内容を理解できたか、読んだことを生活で使えたかは別に確かめる必要があります。五冊読み終えるために、分からない箇所を飛ばしてしまうこともあり得ます。
目標を増やせばよいということでもありません。確認したいのは、数字を追うことで目的から離れていないかです。たとえば読んだ冊数を記録しつつ、一冊につき「使ってみたい考え方」を一つ書けば、活動と得たものを別々に見ることができます。
目標に届かなかったときの比較対象
英単語を300語覚える目標で250語できたなら、達成率は約83.3%です。しかし前月は100語しかできなかった人と、前月は280語できた人とでは、同じ250語でも評価したい点が違うかもしれません。目標との差だけでなく、以前の自分から何が変わったかも参考になります。
ただし、前月より増えたというだけで十分とも限りません。試験までに必要な水準があるなら、その水準との差も確認します。自分の変化と目的地までの距離は、どちらか片方ではなく両方を見ることができます。
やる気が出ない日も、評価の材料になります
目標を掲げた直後は取り組めても、一週間後には負担になっているかもしれません。「何日目に難しくなったか」「何をしようとしたところで止まったか」を記録すれば、目標の高さだけでなく、方法や環境の問題を考えられます。
達成のために休息を削ったり、無理を重ねたりすることを当然としないでください。目標は自分の行動を助ける道具であり、生活の条件を無視してよい理由ではありません。
自分にとって意味のある高さを選ぶ
目標の役目は、大きな数字を掲げることではなく、行動と判断に方向を与えることです。少し難しい目標が力になる人もいれば、当面の課題を絞った方が前へ進む人もいます。数字を上げることそのものより、条件と方法が見えているかを確かめてみましょう。

