
電子レンジの中で、お弁当を載せた丸い皿がゆっくり回ることがあります。皿を回しているのは見た目をよくするためではありません。温め方のむらを減らす工夫の一つです。ただし最近は、皿が回らないフラットな電子レンジもあります。回す製品と回さない製品では、何を変えているのでしょうか。
電子レンジは何を使って温めるのか
電子レンジはマイクロ波という電磁波を使います。食品がマイクロ波のエネルギーを吸収すると、内部で熱が生まれます。食品に含まれる水分などが加熱に関係しますが、「水だけを加熱する」という説明では不十分です。物質の性質や構造によって吸収のされ方が異なるからです。
米国FDAの解説では、マイクロ波が庫内の金属壁で反射し、食品に吸収されて熱へ変わると説明されています。食品に熱が生じても、厚い食品の奥まで一度に同じ温度になるわけではありません。加熱された部分から別の部分へ熱が伝わる時間も必要です。
「電子レンジは必ず食べ物の中心から温まる」というイメージは正しくありません。食品の形、大きさ、成分、置く位置によって加熱の分布が変わります。周囲だけ熱いのに中央が冷たいという結果も起こり得るのです。
庫内には温まりやすい場所ができる
電子レンジの金属壁で反射したマイクロ波は、庫内で複雑に重なり合います。場所によってエネルギーの強い部分と弱い部分が生じることがあります。そのため、食品をまったく動かさずに加熱すると、位置による温まり方のむらが起こり得ます。
回転皿のある製品では、食品の位置をゆっくり変えることで、食品の各部分が異なる電磁波の分布を通過するようにします。これにより、ある場所だけが温まり続ける状態を減らすことが期待できます。ただし回転するだけですべてのむらが消えるわけではありません。
例えば四角い大きなお弁当と、小さな丸いお椀では、同じ回転でも食品の各部分が通る経路は異なります。皿の中央付近は大きく移動しないため、食品の置き方にも意味があります。ただし最適な置き方は機器の加熱方式と説明書に従う必要があります。
回転しないタイプはどうしているのか
フラットな電子レンジでは、食品を動かさない代わりに、電磁波の分布を変える仕組みなどを使って加熱を均一に近づける設計があります。回転皿が見えないからといって、何も工夫せず一か所だけへ電波を当てているとは限りません。
センサーで食品の状態を推定し、加熱出力や時間を調整する製品もあります。しかし、センサーが使われているから必ず全体が同じ温度になるわけではありません。メーカーや機種によって検出方法、加熱方法、適する食品が違います。
各家電メーカーは、加熱むらを抑えるためのセンサーや制御の工夫を紹介しています。回転する方式とフラットな方式を比べるなら、「皿があるか」だけでなく「電磁波をどう分散させるか」「食品の状態をどう測るか」を調べるのがよいでしょう。
200gと400gでは時間は2倍か
食品の量が増えれば、同じ温度まで温めるのに必要な熱も増える傾向があります。単純な理想モデルで、同じ種類・同じ初期温度の食品なら、200gに比べ400gは必要な熱量がおおむね2倍になると考えられます。しかし、加熱時間が正確に2倍になるとは限りません。
熱が逃げる量、容器の形、食品の厚さ、電磁波の吸収のされ方が変わるからです。冷凍された部分が残っている場合は、氷を溶かすためのエネルギーも関係します。同じ重量でも平たく広げた食品と厚く積んだ食品では仕上がりが違うことがあります。
仮に400Wの加熱出力が60秒続き、そのすべてが食品に吸収されたとする理想計算なら、食品へ渡るエネルギーは400×60=24000Jです。これは食品の温度上昇を考えるための仮定で、実際の吸収量を保証する数値ではありません。出力設定と実際に食品が受け取る熱を区別してください。
かき混ぜる理由は電波の問題だけではない
温まり方のむらができた食品をかき混ぜると、熱い部分と冷たい部分が混ざり、温度差が小さくなりやすくなります。これはマイクロ波を再び当てる仕組みではなく、食品自体の内部で熱を移動させる操作です。形が崩れやすい食品や混ぜにくい食品では、加熱方法や放置時間を取扱説明書に従って調整する必要があります。
さらに、加熱が終わった直後は食品の内部で熱が移動し続けることがあります。外側だけを測って「全体が十分温まった」と決めつけないことが大切です。食品の安全な温め方は種類や量、保管状態にも左右されるため、専用の加熱指示を優先してください。回転皿と混ぜる操作は、どちらもむらを減らす助けになりますが、働く場所と段階が異なります。
安全な観察は加熱後に行う
家庭で確かめるなら、食品の表面と中心の温度差があるか、かき混ぜた後に均一になるかを観察する程度にしましょう。熱い食品や蒸気はやけどの危険があるため、無理に手で触って確かめてはいけません。取り扱いは説明書に従ってください。
回転皿がある機器で皿が回らなくなった場合、無理に運転を続けてはいけません。パナソニックの案内では、回転しない状態では加熱むらから焦げや発煙につながる危険があるとされています。故障が疑われるなら使用を中止し、適切な点検を受ける必要があります。
アルミホイルなど金属を勝手に庫内へ入れて実験することも避けてください。使用できる容器は製品の注意書きに従う必要があります。仕組みを知るために危険な条件を試す必要はありません。
回転の目的を一言で説明してみる
丸皿の役割を「食品を均一に温めるため」と覚えるだけでは、なぜ回転しない機種も使えるのか説明できません。「電磁波の当たり方にむらがあるため、食品の位置を変えて加熱の偏りを減らす」というところまで考えると、仕組みが分かります。
加熱のむらは、電磁波の分布だけでなく、食品の厚み、形、温度、成分によっても生じます。回転はその一部へ対応する方法です。どの原因へ、どの仕組みで対応しているのかを分けて考えると、電子レンジの中の動きが意味のある工夫に見えてきます。

