
車で同じ道を往復するとします。行きは時速60km、帰りは時速30kmでした。「60と30の平均だから45km/h」と答えたくなりますが、今回はそうなりません。結論からいうと、行きと帰りの距離が同じで、どちらもそれぞれ一定の速さだったなら、往復の平均速度は40km/hです。
このページでは、速さの公式を最初から説明するのではなく、同じ「60km/hと30km/h」でも、等距離か等時間か、さらに停車を含めるかで平均が変わることを比べます。速さ・距離・時間の基本的な関係は、既存の「速さの公式」でも確認できます。
まず「同じ距離」と「同じ時間」を比べる
片道60kmの架空の道を考えます。信号待ちや休憩時間はなく、示した速さで移動したものとします。
行きは60kmを時速60kmで走るので、所要時間は1時間。帰りは60kmを時速30kmで走るので、2時間かかります。合わせると、移動距離120km、移動時間3時間です。
| 区間 | 距離 | 速さ | 時間 |
|---|---|---|---|
| 行き | 60km | 60km/h | 1時間 |
| 帰り | 60km | 30km/h | 2時間 |
| 往復 | 120km | 計算する | 3時間 |
往復の平均速度は、120÷3=40km/hです。速さの平均ではなく、距離の合計を時間の合計で割りました。
では45km/hという数字は、まったく意味がないのでしょうか。そうではありません。例えば、最初の1時間を60km/h、次の1時間を30km/hで進めば、2時間で90km移動します。この場合は90÷2=45km/hです。つまり同じ時間ずつ走った平均なら45km/hになります。今回の往復は「同じ距離ずつ」であり、行き1時間・帰り2時間と時間が異なるのです。
遅い区間の影響が大きくなるわけ
帰りの速さを半分にすると、同じ60kmを進むために必要な時間は2倍になります。速い行きで1時間節約できたように見えても、遅い帰りに2時間を使います。「60km/hと30km/hを半々ずつ走った」という表現の半々が、距離の半分なのか、時間の半分なのかを見落とすと答えが変わります。
試しに帰りも60km/hだったらどうでしょう。片道1時間ずつで合計2時間、120÷2=60km/hです。帰りを40km/hに変えると、帰りは1.5時間、合計2.5時間なので48km/hになります。帰りを20km/hにすると、帰り3時間、合計4時間で30km/hです。
| 帰りの速さ | 帰りの時間 | 往復の平均速度 |
|---|---|---|
| 60km/h | 1時間 | 60km/h |
| 40km/h | 1.5時間 | 48km/h |
| 30km/h | 2時間 | 40km/h |
| 20km/h | 3時間 | 30km/h |
この表を眺めると、遅くなるほど帰りの所要時間が増え、平均も強く引き下げられることが分かります。値の大小だけを見たときには気づきにくい関係です。
距離が違うときはどうする?
行きに高速道路で80km、帰りは一般道を使って60kmという経路もあります。この場合、そもそも「往復は同じ距離」という条件を使えません。
架空の例として、行き80kmを時速80km、帰り60kmを時速40kmで走ったとしましょう。行き1時間、帰り1.5時間、距離は140kmです。平均速度は140÷2.5=56km/hとなります。
「同じ距離なら2ab÷(a+b)」という式を見たことがある人もいるかもしれません。しかし、その公式に当てはめる前に、距離の条件を確認する方が確実です。等距離でないなら、各区間の距離と時間を合計して計算できます。公式だけで処理しようとすると、どの条件で使えなくなるのかを見失いやすいのです。
何を固定したかを自分で切り替える
記事に付属する操作教材では、行きと帰りの距離、移動速度、停車時間を別々に指定できます。まず行きも帰りも60kmとして、60km/hと30km/hの等距離条件を計算してください。その後、行き1時間・帰り1時間という等時間条件に変えたら、同じ数字から求める平均がどう変化するでしょう。
ここで見比べているのは公式の名前ではありません。「どの条件を変えたのか」という問いです。等時間に変えたつもりで距離が以前のままなら、条件が混ざっています。違う条件の数値同士を比較しないことが、この教材の中心です。
信号待ちや休憩は、どこに入る?
出発してから目的地までの経過時間を含む平均速度を考えるなら、途中の停車も時間に入ります。一方、車の計器などに表示される平均速度は、機器や設定によって停車時間の扱いが異なることがあります。そのため「平均速度」とだけ聞いて数字を比較するなら、何の時間を使った値か確認する必要があります。
先ほどの片道60kmの例で、帰り道の途中に30分休憩したとします。移動時間は3時間のままですが、出発から帰着までの経過時間は3.5時間です。経過時間込みなら120÷3.5=約34.3km/hとなります。計算ミスではなく、平均する対象が変わったのです。
この違いは、旅行や配達を計画するときに大きく響きます。「動いている時間」だけを見積もるより、「止まっている時間」を別枠で足す方が、実際の到着予定を考えやすくなります。
今度は自分で答えを出してみる
片道24kmの道を、行きは時速48km、帰りは時速24kmで進みました。休憩はありません。往復の平均速度は何km/hでしょうか。
行きは24÷48=0.5時間。帰りは24÷24=1時間。合計距離48km、合計時間1.5時間なので、48÷1.5=32km/hです。48と24の平均である36km/hにはなりません。
では、行きと帰りの所要時間が30分ずつと決まっていた場合はどうでしょう。同じ48km/hと24km/hなら、進む距離が24kmと12kmに変わります。合計36kmを1時間で進むため、平均36km/hです。同じ二つの速さでも、「等距離」と「等時間」の条件で結果は違います。
身近な平均を見かけたときも、単に数字を足して割る前に、何を同じ重みで扱ってよいのかを確かめてみてください。平均値の間違いを防ぐだけでなく、なぜその値になるのかまで説明できるようになります。
この記事の道のりと走行条件は計算を理解するための架空の設定です。実際の道路で一定速度を保つことを勧めるものではありません。
操作して確かめる
記事の内容を自分で動かして試すには、往復の平均速度を比べるを使えます。
関連するOS・記憶学
往復の平均速度を求めるときは、距離が等しいのか時間が等しいのかを先に確かめます。この見方を別の場面にも広げたいときは、理解OS 第16章「前提把握」を読んでみてください。

