
数学の公式を何度書いても忘れる。テストになると形が出てこない。似た公式が混ざる。
そんなときは、「公式をもっと暗記する」前に、公式のどの部分で止まっているかを確認します。
最初に、最近使った公式を一つだけ選んでください。ノートを閉じて、次の順番で試します。
- 公式の形を書けるか
- 記号が何を表すか説明できるか
- 何の関係を表す公式か説明できるか
- 授業で導き方を扱った公式なら、考え方をたどれるか
- 簡単な問題で使えるか
全部できなければ「暗記力がない」と決めるのではなく、止まった場所を次の勉強にします。
1. 公式の形だけ出ないなら、まず「見ずに書く」
公式を見ながら何度も写すと、書いている間はできたように感じます。
でも、テストでは公式が隠れていることがあります。
そこで一度だけ、
公式名や問題の手がかりを見る → ノートを閉じる → 公式を書く
を試します。
出なかったら答えを確認し、その直後にもう一度閉じて書きます。
記憶研究では、学んだ情報を自分で思い出す retrieval practice が、その後の想起を助けることが多くの研究で示されています。
「10回写したか」ではなく、見ずに何回出せたかを確認します。
2. 形は書けるのに記号の意味が言えないなら、公式を一行の文字列にしない
公式の形は再現できる。
でも、「この文字は何?」と聞かれると説明できない。
この状態なら、公式を一つの文字列として覚えているだけになっている可能性があります。
公式の横に長い説明を書く必要はありません。
- 左辺は何を表すか
- 右辺の各記号は何か
- どんな量同士の関係か
を短く確認します。
文部科学省の高等学校数学の学習指導要領では、基本的な概念や原理・法則を体系的に理解し、数学的に表現・処理する技能を身に付けることが目標として示されています。
公式も「形を知っている」だけで終わらせず、何を表す式なのかまで確認すると、暗記と理解を分けて見られます。
3. 導き方を習った公式なら、「戻り道」を一つ持つ
すべての公式を毎回ゼロから証明する必要はありません。
ただし、授業や教科書で導き方を扱った公式なら、
「どういう関係からこの形になったか」
を一度たどれると、完全に形を忘れたときの戻り道になります。
ここで大切なのは、導出を新たな丸暗記にしないことです。
- 何を出発点にしたか
- どこを変形したか
- 最後にどの形になったか
という流れだけ確認します。
もし導き方そのものを学習していない公式なら、無理に自分で導こうとせず、教科書・授業の扱いに合わせます。
4. 似た公式が混ざるなら、「一個ずつ」より「違い」を見る
公式Aは覚えた。公式Bも覚えた。 でも問題になるとAとBが混ざる。
この場合、Aを10回、Bを10回と別々に書いても、混同の原因が残ることがあります。
二つを並べて、
- 何を求める公式か
- 使う量は何か
- 式の形のどこが違うか
- どんな条件・場面で使うか
を比較します。
覚える対象を「公式A」「公式B」だけではなく、AとBを見分ける条件まで広げます。
5. 公式は書けるのに問題で使えないなら、別の段階を見る
公式を見ずに書ける。記号の意味も分かる。
それでも問題になると、
「どの公式を使えばいいか分からない」
なら、公式暗記だけの問題ではありません。
これは、
- 問題文から何が分かっているか拾う
- 何を求めるか決める
- 使えそうな関係を選ぶ
という「選択・応用」の段階です。
公式そのものを覚える勉強を増やすより、問題の条件と公式を結び付ける練習へ移ります。
「あたまの道具箱」では、この先の問題を「数学の応用問題が解けないとき」で分けて扱っています。
6. 翌日に消えるなら、公式カードを「見る道具」ではなく「テスト道具」にする
公式カードを作るなら、表に公式を書いて眺め続けるより、
表:
- 公式名
- 使う場面の手がかり
裏:
- 公式
- 記号の意味
- 必要なら短い関係説明
のようにして、答えを隠せる形にします。
翌日は、カードを開く前に書きます。
出た公式はいったん外す。 出なかった公式だけ戻す。
学習を時間的に分散することは、詰め込んで連続して学習する場合より長期保持に有利になることが、研究をまとめたメタ分析で報告されています。
7. 15分ならこの順番
5分:一つの公式を分解する
- 形
- 記号
- 意味
- 関係
- 使う場面
を確認します。
5分:見ずに再現する
ノートを閉じ、公式を書きます。
出なければ確認し、もう一度閉じます。
5分:簡単な一問で使う
ここで公式は書けるのに使えないなら、次に直すのは暗記ではなく問題との接続です。
まとめ
数学の公式が覚えられないときは、
- 公式の形が出ない
- 記号の意味が分からない
- 何の関係を表すか分からない
- 似た公式と混ざる
- 公式は出るが、どれを使うか選べない
- 当日は出るが、翌日抜ける
を分けて確認します。
公式を10回書く前に、一つの公式をどこまで説明・再現できるかを見る。
止まった場所が分かれば、「暗記」「理解」「区別」「応用」を同じ勉強として繰り返さずに済みます。
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関連するページ
- 数学の応用問題が解けないとき — 公式は出るがどれを使うか分からない場合
- 勉強しても頭に入らないとき — 公式の意味・理解以前で止まる場合
参考資料
- 文部科学省「高等学校学習指導要領」
https://www.mext.go.jp/content/20220324-mxt_kouhou02-000021499_1.pdf
- 文部科学省「高等学校学習指導要領解説」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1407074.htm
- McDermott, K. B. (2021). Practicing Retrieval Facilitates Learning.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33006925/
- Cepeda, N. J. et al. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis.



