
全部説明する版と、一つだけ省く版を比べる3分実験
文章は、情報を足せば足すほど分かりやすくなるのでしょうか。
今回は逆に、一つだけ書かないことを試します。
まずやってみる
1. 全部説明する文章を読む
私は面接に遅刻しそうだったので、駅から会社まで走った。息が切れていて、受付でうまく話せなかった。焦っていたので、名前を言うときにも一度かんだ。
2. 「焦っていた」を消す
私は面接に遅刻しそうだったので、駅から会社まで走った。息が切れていて、受付でうまく話せなかった。名前を言うときにも一度かんだ。
「焦っていた」がなくても、焦りは伝わるでしょうか。
3. 今度は理由を一つ消す
駅から会社まで走った。息が切れていて、受付でうまく話せなかった。名前を言うときにも一度かんだ。
今度は「なぜ走っていた?」が分からなくなりました。
4. 何を残すべきか考える
消したあと、読み手は何を補える? 何を補えない?
を見ます。
ここから種明かし
文章では、書かれていないことも読者が前後から補うことがあります。
「焦っていた」を消しても、
- 走る
- 息が切れる
- うまく話せない
- 名前をかむ
から焦りを推測できます。
でも「面接に遅れそうだった」まで消すと、なぜ走ったのかは分かりにくくなります。
つまり省略とは、読者に任せても大丈夫な情報を見極める作業でもあります。
ここまでの答えを見比べてみよう
| <見るところ> | <たとえば> |
|---|---|
| 何も省かない | 状況が明確 |
| 「焦っていた」 | 行動から感情を推測できる |
| 遅刻しそうだった理由 | 「なぜ走った?」が残る |
| 省きすぎる | 必要な関係まで失う |
文章で見ると?
余白は「情報不足」と同じではない
書かないことで、読者が自分で意味を組み立てられる場合があります。
それが文章の余白になります。
ただし、必要な情報まで消せば、単に分からない文章になります。
記憶学で見ると?
情報が少なければ必ず覚えやすいわけではありません。
必要な手がかりまで消すと、かえって意味をつかみにくくなることがあります。
ここでは、省略と記憶を単純に結びつけず、理解に必要な手がかりを残すことを重視します。
脳のOSで見ると?
選ぶと捨てる
書ける情報を全部入れるのではなく、残すものと省くものを選びました。
他には……
- 前提把握: 読者がどこまで補えるかを考える。
- 境界理解: 余白と情報不足の境目を見る。
- 決める: 何を残し、何を読者に任せるかを決める。
- 仮説と検証: 実際に消してみて、意味が通るか確かめる。
もう一度だけ
彼は玄関で靴を履き直した。 外は雨だった。 傘を持っていなかった。 少し迷ってから、もう一度部屋へ戻った。
一文だけ消すなら、どれを消しますか?

