感情OS 第10章|比較停止

これだけ覚えよう

  • 人と比べて苦しくなったら、「本当に同じものを比べている?」と考える。
  • 他人について見えているのは一部分なのに、自分については失敗も悩みも全部知っている。
  • 「相手の一部分」と「自分の全部」を比べれば、自分が不利に見えやすい。
  • 比較を無理にやめようとするより、「自分はいま、相手の何を見ている?」と確かめる。
  • そこで気になったものは、本当は自分が欲しいものを教えてくれることもある。

窓一つ分

夜の電車から、家の並びが見える。

窓が、いくつも明るい。

一つの窓に、天井の照明と、食卓の端と、人の肩が見える。見えているのは、それだけだ。

こちらは、その窓を三秒で通り過ぎながら、そこに揃っているものを数えている。家族がいて、灯りがついていて、たぶん食事が並んでいる。三秒で、そこまで作る。

作ったもののほうが、実際に見えたものより、ずっと多い。

窓は、部屋を一つ分しか映さない。台所の流しに何が溜まっているかも、その部屋で今日どんな話があったかも、こちらの側からは見えない。

見えないところは、こちらが埋めている。

そして、自分の側は、埋めなくても全部知っている。今日の失敗も、机の上の紙の山も、返していない連絡も、全部こちらにある。

窓一つ分と、自分の全部を並べている。

これは、比べているのではなく、種類の違うものを重ねているだけだ。

けれど、やめられるかというと、やめられない。

次の駅までに、また三つの窓を見る。見ないようにすると、今度は見ないようにしていることを考えている。

だから、やめる代わりに、一つだけ拾う。

さっき、何を数えていたか。

窓の広さでも、家の新しさでもなかった。人の肩と、灯りの下に誰かがいることを数えていた。

それが、いま欲しいもののほうを指している。

欲しいものが分かっても、電車は同じ速さで走っている。窓は減らない。

ただ、次の窓では、数えるものが少し変わる。

家に着いて、灯りをつける。

誰かの電車からは、この窓も、一つ分だけ見えている。


人と比べて苦しくなったら、比較を5つに分ける

「比べるのをやめよう」と思っても、比較は勝手に起きます。そこで、比べたこと自体を失敗扱いせず、その比較で何を判定しようとしていたかを見ます。

結果比較 点数・収入・数字だけを並べる。→ 条件と期間も一緒に見る。

速度比較 相手の進み方を自分の遅さの証拠にする。→ 自分の前回との差へ戻す。

一部分比較 相手の見えている強みと、自分の全部を比べる。→ 見えていない条件を書き足す。

所属比較 周囲より下なら、自分の居場所までないように感じる。→ 能力評価と所属感を分ける。

欲求の手がかり 羨ましさの中に「自分も欲しい」がある。→ 相手の評価ではなく、自分が欲しい条件を一語にする。

例:「友達は80点、自分は62点」を情報へ戻す

この数字だけなら「自分の方が下」で終わります。しかし、友達は同じ教材を3周、自分は初見範囲が多かった、という条件が分かれば、次に必要なのは自己否定ではなく復習量の調整です。逆に条件を足しても差が残るなら、その単元だけ練習対象にできます。

比較を分けても苦しさが強い場合

比較が主因ではなく、テスト結果そのものから自信が落ちているなら点数が悪くて落ち込んだときの振り返りへ。勉強を続けること自体が重くなっているなら勉強がつらいときの見分け方の方が近いです。

比較から取るのは、次に変えられる条件か「自分が欲しいもの」の手がかりだけで十分です。人物全体の順位づけまで持ち帰らないことが、このページでの比較停止です。

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