思考OS 第8章|制約を置く

これだけ覚えよう

  • 自由すぎて何も浮かばないときは、わざと条件を一つつけてみる。
  • 「何でも好きに書いて」では止まっても、「五・七・五で書いて」なら考え始められることがある。
  • 選べるものを減らすと、残ったところに目を向けやすくなる。
  • 行き詰まったときは、条件を外すだけでなく、逆に一つ足してみる方法もある。
  • 「時間は10分だけ」「使う色は一色だけ」のように、考えやすくなる枠を作ってみる。

何でもいい、が、いちばん難しい

「何でもいいから、自由に書いて」

そう言われて、ペンが止まった経験はないだろうか。

白い紙。何を書いてもいい。

なのに、何も出てこない。

自由は、たくさん書けそうに見えて、いちばん人を固まらせる。

選べる道が多すぎると、人は、一歩も動けなくなる。

では、条件を一つ、置いてみる。

十七音で、詠む。

五・七・五。

季語を、一つ入れる。

とたんに、手が動き出す。

指を折って、音を数える。

季語は何があったか、と探す。

十八音になってしまった。どの一音を削るか、と考える。

さっきまで一行も出なかったのに、今は、削るものに迷っている。

減らしたのに、出てきた。

自由を奪われたはずなのに、動き出した。

使える条件を、あえて狭めること。それが、制約を置くである。

白紙は、可能性が無限にある。

無限は、手がかりがないということでもある。

どこから始めてもいい、は、どこから始めればいいか分からない、と同じだ。

そこへ、枠を一つ置く。

十七音、という壁ができる。季語、という手すりができる。

すると、無限に散っていた注意が、その枠の中に集まる。

散らばっていたときは動かなかった手が、狭い場所でなら、動く。

これは、俳句だけの話ではない。

「何か企画を出して」と言われると、出てこない。

「一つだけ条件をつけるなら」と、自分で枠を決める。

声を出さずに笑える企画。あるいは、飲み物一杯だけで成り立つ集まり。

条件を一つ置いた瞬間、いくつか浮かび始める。

制約は、可能性を奪うだけのものではない。

奪った分、残った場所を、濃く見せる。

行き詰まったとき、多くの人は、条件を外そうとする。

もっと自由に。もっと広く。枠を取り払えば、いい考えが出るはずだ、と。

けれど、逆のことをしたほうが、動き出すことがある。

わざと、条件を一つ足す。

色を一つに決める。時間を半分にする。使える道具を、一つに絞る。

狭くすると、それまで見えなかった使い道が、浮かび上がってくる。

広い野原に立たされると、どこへ足を出していいか分からない。

一本の細い道を引かれると、歩き出せる。

だから、何も浮かばないときは、まず、枠を一つ置いてみる。

自由がほしくて外した枠が、動けなくしていたのかもしれない。



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