
これだけ覚えよう
- 一つの場面でうまくいった「やり方」を、別の場面でも使えないか考える。
- 自転車で「まずまっすぐ進むだけ → できたら次を足す」と覚えたやり方は、新しい仕事を覚えるときにも使える。
- 持っていくのは、自転車そのものではなく、「一つずつできるようにしてから次を足す」という形。
- 表面が全然違う二つの場面でも、中のやり方が同じことがある。
- 「前に似たやり方でうまくいったことはない?」と探してみる。
砂利の音がする。ペダルに足が乗る。ハンドルを握る。前を見る。曲がる。止まる。全部を一度にやろうとして、腕が硬くなる。硬くなるから、倒れる。
膝から血が出ている。それを見ていると、横から一言だけ聞こえる。
まず、まっすぐだけ。
坂の下まで、白い線が引いてある。誰かが石で引いた線で、そこまでが十メートルということになっている。
曲がらない。止まらない。まっすぐ、十メートル。降りる。押して戻る。また十メートル。
サドルを支えていた手は、三回目からもう離れていた。離れたことは、後から聞いた。
七回目か、八回目に、まっすぐが体の中で静かになる。そこで、曲がるを足す。曲がるが静かになってから、止まるを足す。
*
十何年か経って、机の前に座っている。
手順書がある。受ける、確かめる、登録する、渡す、記録する。二十いくつが、一度に並んでいる。全部を覚えようとして、肩が上がる。上がるから、取りこぼす。
三日目に、付箋が十四枚になった。どれも途中で終わっている。
その付箋を見ていると、声が別の言葉で戻ってくる。
まず、一件だけ。
一件を、受けるから渡すまで通す。速さは測らない。次の工程は覚えない。同じ形の一件を、もう一度通す。
自転車には、倒れるという合図があった。机の上には、倒れる音がない。誰も止めないので、分からないところを飛ばしたまま先へ進める。だから、通れたかどうかを教えるものを、こちらで作る。手順書を見ずに端から端まで行けたら、紙の隅に線を一本引く。三本並んだら、次を足す。
一件目は、登録のところで一度止まった。手順書を開いた。その日は、線を引かない。
十メートルにあたる長さも、こちらで決め直す。あの十メートルは十秒で終わったが、この一件は半日かかる。一日に、一本しか引けない。
ハンドルもペダルも置いてきた。持ってきたのは、最初の十メートルだった。
三本目の線を引く。
紙を裏返して、次の工程の欄を開く。肩が、少し下りている。
この考え方を普通の言葉で読む
→ 解説版で読む

