
A4のプリントを半分に折って切るとA5に、A3を半分にするとA4に近い大きさになります。何度も半分にしていくのに、紙の細長さがほぼ同じに見えるのはなぜでしょうか。ここには、平方根の一つである√2が隠れています。紙の大きさから数学の便利な設計を見つけてみましょう。
半分にしても同じ形が残る長方形
長い辺をL、短い辺をSとする長方形を考えます。この紙を長い辺に沿った長さが半分になるように切り、二つの小さな長方形を作ります。元の縦横比はL÷Sです。半分にした紙の辺はSとL÷2になります。
半分にした紙が元の紙と相似、つまり縦横の比が同じになるには、L÷S=S÷(L÷2)が成り立つ必要があります。式を整理すると、(L÷S)²=2です。正の長さだけを考えるので、L÷S=√2、約1.414になります。
この比率なら、半分にして紙を90度向きを変えると、元の紙と同じ細長さが保たれます。何度も折り、拡大や縮小をしても、図形の形が変わりにくい。これがA判の紙を扱いやすくしている大きな理由です。
A4の210mm×297mmで確かめる
一般的なA4は短辺210mm、長辺297mmです。297÷210は約1.4143で、√2に非常に近い値になります。A3は297mm×420mmで、これも長辺÷短辺は420÷297、約1.4141です。数値が完全に等しくないのは、紙の寸法が整数のミリメートルで決められていることも関係します。
A3を長辺側で半分にすれば、297mm×210mmの紙になります。向きを変えればA4の210mm×297mmと同じ寸法です。A4を半分にすると理想的には210mm×148.5mmですが、規格上のA5は148mm×210mmです。端数の扱いがあるので「計算上の半分と規格寸法がミリ単位で完全一致する」と思い込まないようにしましょう。
寸法の数字をただ暗記するより、紙を切っても縦横の比率が保たれるように作られた規格だと理解すると、なぜこの数になっているか説明できます。√2は飾りの数字ではなく、繰り返しの操作と結びついています。
面積はどう変わるのか
A0は、面積がおおむね1平方メートルになるよう設計された系列の出発点です。A1はその約半分、A2はさらに約半分というように進みます。A4はA0を4回半分にした大きさなので、面積はおおむね1÷16平方メートルです。
A4の実際の寸法から面積を計算すると、210×297=62,370平方ミリメートル。平方メートルへ直すには1,000,000で割るので、0.06237平方メートルです。1÷16=0.0625平方メートルに近くなります。ここにも、ミリメートル単位の寸法調整による差があります。
半分にするたびに面積は2分の1になりますが、辺の長さが両方とも2分の1になるわけではありません。縦も横も2分の1にしたら面積は4分の1になってしまいます。「面積が半分」と「長さが半分」は違うことも、この紙で確かめられます。
コピー機の拡大率に√2が出てくる
A4の原稿をA3の紙いっぱいに拡大したい場合、縦横の比を保って拡大する倍率は、長さについて約√2倍です。百分率では約141%に相当します。面積はおおむね2倍になりますが、コピー機の設定で「200%」を選ぶと長さが2倍になり、面積は4倍になるので混同に注意してください。
逆にA3からA4へ縮小する長さの倍率は約1÷√2、約70.7%です。コピー機で見かける「71%」という値には、この関係が隠れています。もちろん機器の印刷可能領域や余白設定によって、用紙全面へぴったり印刷されるとは限りません。
100%と71%と141%は、何を基準にしている数字なのかが重要です。紙の面積を何倍にするのか、文字の高さを何倍にするのかで、倍率の意味が違うと分かります。
A判とほかの紙は同じではない
すべての紙がこの比率で作られているわけではありません。写真用紙、はがき、新聞用の紙、海外で使われるレターサイズなどには別の寸法があります。これらを同じ方法で半分にしたとき、形が保たれるとは限りません。
ISO 216はA系列などの紙の寸法を定める規格です。ただし国内で使われる紙にはJISなどとの関係もあり、用途によって別の規格が使われます。日常で手にする紙を比べ、縦横の比率を計算してみると、標準化の意味が具体的になります。
自宅のプリンターで用紙設定を間違えると、意図した場所で図が切れたり、余白が変わったりします。形の比率がそろっていると拡大・縮小しやすくなりますが、紙の種類や印刷可能範囲まで同じになるわけではありません。
倍率が合っても余白まで同じにはならない
A4の原稿をA3に約141%で拡大しても、プリンターによっては外側の文字が切れることがあります。用紙の縦横比がそろっていることと、印刷機が用紙の端までインクを載せられることは別だからです。原稿に余白を設けることには、読みやすさだけでなく印刷上の意味もあります。
また、A4横向きの図をA3縦向きの紙へそのまま拡大した場合、紙の向きが合わず意図しない縮小や回転が起こることもあります。寸法の比例が成立することと、印刷設定が自動で一致することを混同しないでください。
紙を切らずに平方根を理解する
A4を一枚用意し、210mmと297mmという二つの長さを書いてみましょう。297÷210を計算し、√2のおおよその値1.4142と比べます。次に短辺をそのままに、長辺を半分にした148.5mmの長方形を紙に描き、その縦横比がやはり約1.414になることを確かめます。
実物を切らなくても、長方形を方眼紙に描いて考えられます。単に√2を暗記するより、なぜ同じ比率が繰り返し現れるのかが見えてくるはずです。
紙の規格は、数学を生活で使いやすくする工夫の例です。「半分にしたら面積は変わるのに形は保てる」という一見不思議な性質を、一つの式から説明できるようになります。

