
「平均寿命は何歳」というニュースを見ると、自分はその年齢まで生きられるのだろうかと考えることがあるかもしれません。しかし平均寿命は、特定の一人がいつ亡くなるかを予言する数字ではありません。まず、平均寿命は何を平均した数字なのかを確かめてみましょう。
平均寿命は「0歳の平均余命」です
日本の総務省統計局は、平均寿命を「0歳における平均余命」と説明しています。平均余命とは、生命表で示される年齢別の死亡状況などに基づき、その年齢の人が平均してあと何年生きるかを表す指標です。平均寿命は、いま生きている人の寿命の単純平均という意味ではありません。
統計局「統計FAQ 02C-Q07 平均寿命」:https://www.stat.go.jp/library/faq/faq02/faq02c07.html。生命表には毎年の簡易生命表や、より詳しく作成する完全生命表などがあります。数字を引用する場合は、どの年の、どの表の値なのかを明記する必要があります。
すでに大人の人には別の問いがあります
0歳からの平均余命を表す平均寿命と、40歳の人における平均余命は、同じ数字ではありません。40歳まで生きてきた人については、「40歳の時点で、平均してあと何年か」という別の条件で計算します。
例えば架空の生命表で、0歳の平均余命を80年、40歳の平均余命を42年としたなら、40歳の人の平均的な到達年齢は40+42=82歳です。この80年・42年は説明用の架空の数字であり、現実の日本の生命表の値ではありません。平均寿命80歳だから40歳の人の残りは40年と単純に引き算するとは限らないことが分かります。
平均値は、全員が同じ年齢まで生きるという意味ではありません
架空の五人が70歳、75歳、80歳、85歳、90歳まで生きたなら、その五人の平均は80歳です。五人とも80歳で亡くなった場合も平均は80歳です。同じ平均でも分布は違います。
ただし、実際の平均寿命の計算方法をこの五人の平均で代用できるわけではありません。この例が示すのは、平均という一つの数字だけでは個人ごとのばらつきが分からないという数学的な性質です。生命表を読む際は、その指標の作り方まで戻る必要があります。
年ごとの違いをどう読みますか
平均寿命の数字が前年より増減したとしても、その一年で個々人の将来が同じ幅だけ伸び縮みしたわけではありません。生命表は人口集団の死亡状況をもとに作られる統計です。集団全体でどのような変化が観測されたかを示しますが、個人の健康状態や生活環境を全て表すわけではありません。
また、国や地域で比較するときは、同じ定義の指標か、同じ時点か、元データの作り方が比較可能かを確認します。平均寿命の数字を取り出して「この地域なら必ず長生きできる」と断定することはできません。
数字を読む小さな練習
「平均寿命」「40歳の平均余命」「最も多くの人が亡くなる年齢」という三つの表現を並べてみましょう。これらはどれも「寿命に関する数字」ですが、問いは違います。ニュースに載っているのがどの指標かを明確にするだけでも、読み間違いを減らせます。
平均寿命の統計を調べるときは、厚生労働省の生命表、または統計局が案内する定義から確認します。SNS上で切り取られた数字を見たら、性別、年、地域、対象となる年齢を探してください。
「平均寿命が延びた」の解釈も一つではありません
ある年の平均寿命が前年より高くなったとき、生活のあらゆる面が改善したという結論へすぐ進むことはできません。平均寿命は人口集団の死亡状況を反映した指標ですが、病気を抱えながら過ごす期間、生活上の支障、医療へのアクセスなど、別の情報もあります。
例えば「長く生きられること」と「元気に暮らせること」は似ていますが同じ指標ではありません。何を知りたいかに応じて、別の統計を見る必要があります。平均寿命だけで、その社会の暮らしやすさを一つの順位にするのは慎重であるべきです。
身近な「平均」と比較すると理解しやすくなります
テストの平均点が80点でも、全員が80点を取ったとは限りません。同じように平均寿命の数字も、全員が同じ年齢まで生きるという意味ではありません。ただし重要な違いがあります。テストの平均は観測した得点を足して人数で割れますが、生命表の平均寿命は死亡の年齢別状況を使って計算する指標です。
「平均」という言葉が共通していても、作り方まで同じと思い込まないようにします。統計を読むときは、名称と定義をセットで確認する習慣が役立ちます。
「長生きしやすい人」を平均から探せる?
平均寿命を見て、同じ年齢の人なら誰もが似た将来を持つと考えるのは適切ではありません。生命表の指標は集団の死亡状況から計算されており、一人一人の健康状態や将来の出来事を個別に判定したものではないからです。
自分や家族の健康について考えるとき、統計の数字を診断や予測の代わりに使うべきではありません。生活上の心配や具体的な症状がある場合は、一般統計と個別の医学的判断を分けて扱います。「平均より上か下か」だけで不安や安心を決めないことが大切です。
何を比べたいかを先に決める
都道府県の平均寿命を比べるなら、同じ年の同じ定義で比較する必要があります。しかし順位が分かったとしても、地域のすべての住民の個別の将来が決まるわけではありません。
地域の医療環境を知りたいなら、病院へのアクセスなどの情報も必要です。集団の寿命の指標を、一人の行動や地域のあらゆる事情の説明に使い回さないことが大切です。
自分自身の未来を決める数字ではありません
集団についての統計には、社会全体の変化を知る役割があります。しかし、そこから特定の一人が何歳まで生きるかを確定することはできません。平均寿命の数字を見たときは、自分の余命を当てはめるよりも、「どの年齢の、どの集団について、何を示す指標か」を読み取るところから始めてみましょう。

