
広告や記事に「数字で証明」「満足度90%」と書いてあると、確かな話に見えることがあります。数字は比較の助けになりますが、書かれているだけで結論が証明されたわけではありません。何を数え、誰から集め、どんな条件で比べた数字なのかを見てみましょう。
90%と聞いたら分母を探す
架空の調査で「満足度90%」という結果が出たとします。10人に聞いて9人が満足した場合も、1,000人に聞いて900人が満足した場合も、割合は90%です。ただし結果のばらつきや代表性を考えると、人数の情報は重要です。
さらに、100人に案内して10人だけが回答し、その9人が満足した場合も「回答者の90%」とは書けます。しかし「案内した100人の90%が満足した」とは言えません。回答しなかった90人がどう感じたかは、調査結果からは分からないためです。
質問文で数字の意味が変わる
「利用して不満はありませんでしたか」と「友達にも勧めたいですか」は同じ質問ではありません。前者で「不満なし」と答えた人も、後者では「積極的には勧めない」と答えるかもしれません。
また、回答の選択肢が「とても満足・やや満足・普通・やや不満・不満」なのか、「満足・不満」の二択なのかでも割合は変わりえます。「満足度」という見出しだけでなく、何を満足に数えたのかを確認してみましょう。
増えた人数と増加率を分ける
架空の会員数が100人から150人になれば、50人増で増加率は50%です。別の会員数が10人から20人になれば、10人増で増加率は100%です。後者の伸び率が大きくても、人数の増え方では前者が大きくなります。
「成長率が2倍」といった表現を読むときも、何の率と比べて2倍なのかを確認します。増えた割合を表す数字と、増えた数量を表す数字は、答えている問いが異なります。
関係があっても原因と限らない
架空の調査で、朝食を食べる生徒の平均点が高かったとします。この数字だけで「朝食を食べれば誰でも点数が上がる」とは言えません。睡眠時間や家庭環境、生活リズム、本人の体調など、ほかの違いが関係しているかもしれないからです。
数字の間に関係があることと、一方が他方を生み出したことは別です。原因を確かめたいなら、ほかの条件をどう比較したか、別の説明をどの程度除けたかを見る必要があります。
平均が誰かの実感と合わない場合
架空の5人の待ち時間が1分、1分、1分、1分、16分だったとします。平均は(1+1+1+1+16)÷5=4分です。「平均待ち時間4分」は計算上正しいですが、実際に4分待った人はいません。
こういう場合、中央値は1分で、最長は16分です。平均だけでなく、値の広がりを示す数字があれば、実際の状況を想像しやすくなります。目的に合った統計量を選ぶことが大切です。
調査した時期が違えば結論も違う
新しいアプリの公開直後には好意的な人ばかり回答し、半年後には幅広い利用者が回答するかもしれません。二つの時期の満足度が違っていても、製品の品質だけが変化したとは限りません。回答者の構成や使い方が変わった可能性もあります。
「以前より悪化」「業界最高」などの比較表現には、いつ、誰を、どの方法で調べたかが必要です。方法の違う調査を同じ物差しのように並べると、誤解が起こりやすくなります。
自分で数字を作る実験
架空のクラスでアンケートをするつもりで、回答者10人のうち9人が賛成した場合と、回答者100人のうち90人が賛成した場合を書きます。どちらも90%ですが、次に「回答したのは全員か、一部か」「質問は全員同じか」を追加してみてください。
百分率だけでは答えられない質問が次々出てくるはずです。それらは数字が役に立たないという意味ではありません。数字を正しく使うために必要な説明がある、という意味です。
「証明」という言葉をどう読む?
数学では、前提から結論を論理的に導くことを証明と呼びます。一方、世の中の調査や実験の数字は、ある主張を支持する証拠になることはあっても、条件が変わっても必ず成り立つと示しているとは限りません。二つの「証明」の使われ方を混同しないようにしましょう。
数字が示している範囲を確かめる姿勢は、数字を疑って何も信じないこととは違います。出典や測定方法が明らかなら、むしろ安心して比較しやすくなります。
出典が明示されていても終わりではありません
「ある研究によると」と書かれていても、研究で測った対象や条件が記事の主張と違うかもしれません。小学生を対象にした調査結果を、年齢を問わず全員に当てはめるには別の根拠が必要です。
出典にアクセスできるなら、まず調査の目的と対象、何を結果として報告したかを確認します。記事の見出しが研究の結論を強く言い過ぎていないかも考えましょう。
数字の単位を入れ替えると意味が変わる
架空の店舗が一時間に60人を接客したとします。これは平均すると一分に一人の計算ですが、毎分必ず一人ずつ来たことを意味しません。一時的に10人が集中して来て、残りの時間は空いている場合もあります。
数字を別の単位へ換算するとき、合計を平均へ変えていることがあります。その変更によって、混雑の情報などが失われる可能性を忘れないようにしましょう。
「数字がある」と「答えがある」は違う
満足度90%という数字から、購入者の生活がどう変わったかを知りたい場合、別の質問が必要です。満足した人の割合は分かっても、満足した理由やどんな人に合ったかまでは分からないからです。
数字が一つあれば判断できることもあれば、追加の調査が必要なこともあります。数字の意味を狭く正確に読むことは、数字を軽視することではありません。
三つの問いを持ち帰る
数字を見たときは、最初に「何を数えたか」、次に「誰についての数字か」、最後に「その数字だけで結論が言えるか」を確かめてみましょう。広告でもニュースでも、必要な情報が分かると数字の使い道がはっきりします。
数字は判断を助ける道具です。大きく表示された割合より、数字が答えている質問と、答えていない質問を見分けることが重要です。

