同じニュースでもグラフで結論が変わる? 「何を比べたか」を読み解く

ニュースで「先月より減少」「年初より増加」という二つの見出しを見たことはないでしょうか。どちらかが必ず間違っているとは限りません。同じ数字を、違う期間・違う集団・違う方法で集計している可能性があります。グラフの線が上がったか下がったかを読む前に、まず比べているものを確かめてみましょう。

比べる月を変えると増減が逆になる

架空の街の商店街について、ある商品の月間販売件数を考えます。1月は300件、2月は420件、3月は390件でした。3月を2月と比べれば30件減っています。しかし1月と比べれば90件増えています。「前月より減少」と「年初より増加」は両立します。

計算すると、3月の前月比は(390-420)÷420で約7.1%減、1月比は(390-300)÷300で30%増です。どちらも架空データからの正しい計算ですが、基準月を隠したまま見出しだけ読めば、反対の結論に見えるでしょう。

同じ数値でも、どこからどこまでを比較したのかが分からなければ意味を判断できません。グラフを見る最初の質問は「何を、いつと比べたのか」です。

月間と年間を混ぜると何が起きる?

今年の4月だけを見ると、架空のイベント予約件数が前年4月より減ったとします。一方で年間の合計は前年を上回るかもしれません。たとえば前年4月は2,000件、今年4月は1,600件であっても、残りの11か月で差を取り返すことはできます。

ここで「今年は減っている」と発表するなら、それが4月単月のことか、年初からの累計か、直近12か月の合計かを書かなければ読み手は判断できません。見出しでは短く省略されやすい期間こそ、グラフの横軸や注記で確かめましょう。

グラフが扱う「対象」が変わっていないか

昨年の調査対象は市内の商店3店、今年は新しく参加した2店を加えた5店だったらどうでしょう。5店の合計が増えたとしても、以前からあった3店の販売件数が増えたとは言えません。集計対象を増やしただけで合計が増えた可能性があります。

また、新店が参加したことで、以前の店から買い物客が移った場合もあります。ある店だけのグラフで「売上が落ちた」と言えても、商店街全体の販売状況とは違う話かもしれません。集計対象の店舗や販売条件が同じか確かめる必要があります。

速報値と確定値は同じ状態の数字?

集計の途中で、まだ確定していない数字が混ざる場合もあります。架空のイベント来場件数で、ある日の速報値が900件、後日確認された確定値が950件だったとします。これは必ずしも実際の来場者が増えたという意味ではありません。数え漏れや入力の修正が反映された可能性があります。

「昨日の発表では900件だったのに、今日は950件になった」という二つの数字を見たら、集計の時点・対象・定義を調べます。速報値と確定値を同じ状態の数字として差し引くと、実際には起きていない変化を読み取ってしまうことがあります。

平均値の線がなめらかでも現場は揺れます

毎日の数字が大きく上下すると、グラフでは7日間平均などを使って変動をならすことがあります。平均を見ると大きな方向が分かりやすくなる反面、一日の急増や急減が見えにくくなる場合があります。平滑化する前のデータと後のデータを比べると、印象が変わることがあります。

平均化の方法にも種類があります。直近7日間の値をすべて同じ重みで使う方式と、最近の日を重視する方式では、線の動き方が違います。グラフに「移動平均」とあれば、何日分か、どのように計算したかを確かめることが大切です。

数字は正しくても説明が足りないことがあります

「利用回数が増えた」という事実だけでは、その原因が新しい施設なのか、催し物なのか、人口増加なのか判断できません。変化した数字は結果であり、その理由を示す証拠が別に必要だからです。「増えた」と「ある施策のおかげで増えた」の間には、もう一段階の説明があります。

複数の出来事が同時に起きている場合、数字の変化を一つの原因に結びつけるには比較対象や追加の調査が必要です。原因を断定する前に、別の説明が考えられるかを確かめましょう。

二つの見出しを作って確かめる

先ほどの架空の販売件数300・420・390を使い、「3月の販売件数は前月より約7.1%減少」と「3月の販売件数は1月より30%増加」という見出しを作ってください。

次に、数値の始点と終点をそれぞれ見出しへ書き足します。「2月420件→3月390件」「1月300件→3月390件」となれば、どちらも正しいことが分かります。別の基準で計算した変化を、同じものの評価として混ぜない練習です。

さらに3月だけを取り出した見出しも作り、比較相手を書けない場合には増減という言葉が使えないことを確かめましょう。

折れ線が二本あるときに確認すること

売上の推移を示す二本の線があり、一方は円、もう一方は件数で表されていたとします。別々の縦軸を使っている場合、線が同じ高さになっても、同じ金額や同じ割合を表しているわけではありません。線の交点だけを見て「同じになった」と言わず、左右の目盛りと単位を確かめましょう。

また、線が似た形で上がったとしても、二つの数値の間に原因と結果の関係があるとは限りません。景気や季節など、共通の別要因が動いている可能性もあります。

報道のグラフを作り直す実験

架空の販売件数300・420・390を折れ線グラフにします。まず1月から3月までを描き、全体の動きを見てください。次に2月と3月だけを拡大して描くと、下落が中心のグラフになります。同じ3月390件でも、表示期間を変えれば目に入る変化が変わります。

両方のグラフに、横軸の「1月〜3月」「2月〜3月」と縦軸の「販売件数(件)」を明記します。グラフがどちらの印象を与えるかだけでなく、基準にした期間を読む人へ伝えているかまで確認しましょう。

グラフを読むときの順番

最初に縦軸が人数・回数・割合のどれかを読み、次に横軸の期間、集計対象、比較する基準を見ます。その後で数字の変化を読み取り、最後に理由の説明が根拠を伴っているかを考えます。

ここでは比較期間や調査対象、集計方法が変わると、同じ現象の説明が違って見えることが中心です。ニュースを読んだら「何が、誰に対して、いつからいつまで変わったのか」を文章にしてみてください。

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