
一週間前には余裕があったはずなのに、提出日の前日に急に忙しくなる。宿題でも仕事でも、こんな経験はないでしょうか。「自分が怠けていたから」とだけ考えると、次も同じ問題が起きたときに対処しにくくなります。
締め切り直前に仕事が増えたように感じる理由を、実際に増えた作業と、最初から見えていなかった作業に分けて考えます。
「作業時間」と「締め切りまでの時間」は違う
例として、月曜日に金曜日提出のレポートを受け取ったとします。本文を書くのに3時間、資料を探すのに1時間と見積もり、合計4時間だから木曜日に始めれば十分だと考えました。
ところが始めてみると、出典の確認に1時間、図の調整に40分、提出形式の修正に30分必要でした。さらに友達にチェックを頼むと、返事を受け取るまで半日かかりました。
作業時間は、3時間+1時間+1時間+40分+30分で6時間10分です。このほかに、ほかの人からの返事を待つ時間があります。待ち時間と自分の作業時間は足し方を分ける必要があります。待っている間に別の仕事ができる場合もあるからです。
見えない作業を表にする
次の表は説明のための架空の見積もりです。
| 作業 | 最初の見積もり | 実際に必要だった時間 |
|---|---|---|
| 資料探し | 60分 | 60分 |
| 本文を書く | 180分 | 180分 |
| 出典確認 | 0分 | 60分 |
| 図の調整 | 0分 | 40分 |
| 提出形式の修正 | 0分 | 30分 |
| 合計 | 240分 | 370分 |
予定が240分から370分になり、130分増えています。しかし、締め切り直前になってすべての仕事が新しく発生したわけではありません。最初の見積もりに含まれていなかった作業が、後から明らかになったのです。
この違いが分かると、「もっと速く作業する」以外の改善策が見えてきます。次回は最初から出典や提出形式を確認すればよいからです。
手戻りが生まれる場所
完成した文章を確認すると、最初に決めたテーマとずれていた。使った図の説明が間違っていた。提出するファイル形式が指定と違っていた。こうしたことは、後半で見つかるほど直す範囲が広がる場合があります。
たとえば10ページのレポートをすべて書いてから見出し構成を直すと、多数の段落を書き換える必要があるかもしれません。一方、見出しだけを先に作って確認すれば、修正の負担は小さくて済む可能性があります。
ただし「何でも細かく確認してから作業する」ことが最善とは限りません。確認に時間をかけすぎると、本文を書く時間を失います。早い段階で確かめるべきなのは、後から修正すると大きな手戻りになる条件です。
予定には余白が必要?
予定をぴったり組むと、想定外の仕事が一つ増えただけで締め切りに間に合わなくなります。だからといって、すべての作業を二倍の時間で見積もればよいわけでもありません。
過去の作業を記録し、「本文作成の時間は当たっていたが、参考文献の確認をいつも忘れていた」と分かれば、必要な項目を追加できます。新しい種類の作業なら、不確実な部分を先に小さく試してみます。
締め切り日から逆算する際には、自分が動ける時間だけでなく、相談相手の返信、印刷や提出システムの利用時間なども確認します。自分が頑張れば短くできる時間と、自分だけでは短くできない時間があるからです。
10分でできる見積もり実験
次の課題で、開始前に必要な作業を紙へ書きます。「考える」「資料を調べる」「下書きを作る」「確認する」「提出する」と分け、各項目に予想時間を書いてください。終わったら、実際にかかった時間を記録します。
重要なのは、予想と実際の差を責めることではありません。抜けていた作業は何か、思ったより時間がかかった作業は何か、ほかの人を待つ時間はあったかを見ます。これを数回繰り返すと、自分の仕事で見積もりが外れやすい箇所を発見できます。
予定が崩れたときにどこから直す?
締め切り前に遅れが分かったら、ただ作業時間を延ばすのではなく、残る作業を「絶対必要」「できれば必要」「今回は不要」に分けてみます。例えば、課題の提出に本文と出典が必須なら、見栄えのための細かな装飾より先にそれらを完成させます。ただし、教師や取引先が指定した必須条件を勝手に省略することはできません。
また、作業を他人に頼むときには、頼んだ瞬間に終わったことにしないでください。返信予定や確認に必要な時間も残ります。メールを送るのに5分で済んでも、翌日まで返事を待つなら、工程表では別の時間として扱います。
似た課題を何度も経験するなら、「最初の見積もり」「完成までに増えた作業」「やり直した理由」を記録しておくと次回に役立ちます。以前は必要なかった作業が、今回だけ発生したのか、毎回見落としているのかを分けます。
ここで大切なのは、すべてを事前に予測できるようになることではありません。予測できないことがあると分かったうえで、途中で確認できるタイミングを作ることです。計画の正確さだけでなく、予定が変わったときに立て直せるかも考えると、締め切りへの向き合い方が変わります。
作業時間と残り時間を混同しない実験
提出まで3日あり、必要な作業を「資料探し2時間、下書き3時間、見直し1時間」と見積もったとします。合計は6時間です。ただし、毎日2時間の作業時間が確保できること、資料がすぐ見つかること、書き直しが発生しないことを仮定しています。
初日に資料探しが4時間かかれば、見積もりは2時間不足します。ここで「締め切りが近づいたから急に仕事が増えた」と感じても、実際には初めの見積もりで見落としていた作業が見えた可能性があります。
自分で試すなら、作業前に工程と所要時間を書き、終わった後に実測との差だけを記録します。次回は「資料探しが予定より延びた場合」の余白を設けてみましょう。時間を延ばすだけでなく、何の見積もりが外れたかを分けることが、予定の改善につながります。
まとめ
締め切り直前に仕事が増えたように見えても、その一部は最初から必要だったのに見落としていた作業です。作業時間、待ち時間、手戻りを分けて考えると、次の計画で何を直すべきかが具体的になります。急ぐ工夫の前に、何が必要だったかを見えるようにすることが改善の出発点です。

