質疑応答のやり方|最初に答え、そのあと補足する

質疑応答で答えが長くなりすぎる人は、最初から背景を全部説明しようとしがちです。基本は、質問に対する答えを最初の一文で返し、その後に理由・根拠・補足を足すことです。これだけで、聞き手は「結局何が答えなのか」を見失いにくくなります。

まず質問の種類を見分ける

質問には役割があります。

  • Yes / No を求める質問
  • 理由を求める「なぜ」
  • 方法を求める「どうやって」
  • 数値や事実を求める質問
  • 意見を求める質問
  • 前提を確認する質問

「なぜ?」と聞かれているのに結論だけ答えたり、「可能ですか?」と聞かれているのに背景説明から始めたりすると、ずれます。

最初に、相手が何を一番知りたいかを一語で決めます。

答えは最初の一文に置く

「この方法は中学生にも使えますか?」と聞かれたなら、

はい、基本部分は使えます。ただし、例題の難度は学年に合わせる必要があります。

と始めます。

「まずこの方法が生まれた背景から説明します」と始めると、聞き手は答えを待ち続けます。

結論→条件→補足の順にすると、短時間でも必要な情報を返せます。

分からない質問は無理に埋めない

質問に答える情報を持っていない場合は、

その数値は今ここでは確認できません。確認してから回答します。

と答える方が安全です。

曖昧な記憶から数字を作ったり、質問の意味を推測して別のことを答えたりすると、質疑応答の信頼性が下がります。

「分からない」と「答えたくない」と「質問の意味が分からない」は別です。

質問の意味が曖昧なら確認する

「効果はありますか?」だけでは、何の効果を、誰に、どの期間で見るのか分からないことがあります。

その場合は、

テスト得点への効果という意味でしょうか。それとも学習時間の短縮でしょうか。

のように範囲を確認します。

ただし何でも聞き返すのではなく、自分で合理的に解釈できる範囲なら、解釈を明示して答えます。

理由は一つずつ出す

質問への回答で理由が三つあるなら、最初に全部混ぜません。

主な理由は二つあります。第一に…。第二に…。

と分けます。

一文が長くなるほど、聞き手はどこが答えでどこが例なのか分からなくなります。

話すときは、文章より短い単位で区切る方が伝わりやすいことがあります。

具体例は答えを補強するときだけ使う

質問に直接答えた後、必要なら例を足します。

「どんな生徒に向いていますか?」なら、

自分の間違い方を説明できる生徒に特に使いやすいです。たとえば、計算ミスと問題文の読み落としを区別できる場合です。

例が答えを具体化しています。

一方、面白いエピソードでも質問と関係が薄ければ、質疑応答では削ります。

反対意見が来てもすぐ防御しない

「その方法では時間がかかりすぎませんか?」という質問に対して、

そんなことはありません。

と反射的に否定すると、相手の懸念を扱っていません。

その懸念はあります。初回は時間がかかります。ただ、二回目以降は記録を再利用できます。

のように、相手の前提を一度受けてから、自分の見解を示します。

同意することと、質問を正確に受け取ることは別です。

一つの質問に二つ答えを返さない

「AとBのどちらを優先しますか?」と聞かれたのに、Aの良さとBの良さを両方説明して終わると、優先順位への答えがありません。

今回はAを優先します。理由は…。

と選んでからBの条件を補足します。

答えをぼかしたいときでも、「条件によります」と言うだけでなく、どの条件で変わるかを示します。

想定質問は発表内容の穴を見つける道具

発表前に、聞き手になったつもりで質問を作ります。

  • その数字の根拠は?
  • 他の方法との違いは?
  • 例外は?
  • 誰には向かない?
  • 費用や時間は?
  • なぜその結論?

答えられない質問があれば、発表本文の根拠が不足している可能性があります。

質疑応答対策は、回答文を暗記するだけでなく、本文の弱点を見つける作業でもあります。

練習:30秒で答える

次の質問へ30秒以内で答えます。

なぜこの方法を選んだのですか?

構造は、

  1. 答え
  2. 理由
  3. 具体例か条件
    の三つだけです。

一度録音し、最初の10秒で答えが出ているか確認します。

長い質問は要点を言い換えてから答える

質問者が長く話し、論点が複数ある場合は、

ご質問は、費用面と実施時間の二点だと理解しました。まず費用から答えます。

と分けます。

相手の質問を勝手に縮めすぎないよう注意しつつ、何に答えるかを共有します。

答えた後は「質問に戻る」

説明しているうちに別の話へ広がったら、最後に、

したがって、今回の質問への答えはAです。

と戻します。

最初と最後に答えがあると、補足が長くても聞き手が結論を拾いやすくなります。

質疑応答は勝ち負けではない

難しい質問を受けたとき、質問者を言い負かすことが目的ではありません。

発表内容を明確にし、聞き手の疑問を解消し、必要なら自分の説明の不足を認める場です。

質問によって発表の弱点が見つかったなら、それも成果です。

次は「答え・理由・条件」の三行メモで練習する

想定質問を一つ選び、紙に三行だけ書きます。

  • 答え:
  • 理由:
  • 条件・例:

その三行だけを見て口頭で答えます。

文章を丸暗記するのではなく、回答の骨組みを保持しながら、その場の質問に合わせて言葉を選ぶことができれば、未知の質問にも対応しやすくなります。

参考資料

  • 名古屋大学 科学コミュニケーション Starter's Kit「質疑応答」
おすすめの記事