
夜空の星は全部同じように動く?
夜のはじめと数時間後では、星座の位置が変わっています。星たちが短時間で地球の周りを一周しているように見えますが、主な原因は地球の自転です。ところが北の空にある北極星だけは、ほとんど同じ場所にとどまるように見えます。北極星だけほかの星と同じく地球の自転による見かけの運動をします。地球の回転軸が向いている方向に近いことが理由です。
地球儀を自転軸の周りに回すと、その軸を延長した先の方向は、地球儀が一回転してもほとんど変わりません。空には北側の自転軸を延長した方向にあたる「天の北極」があります。北極星は現在、この天の北極の近くに見える恒星です。だから周りの星が円を描いて動いても、北極星自身の見かけの動きは小さいのです。
「北極星は完全に動かない」は正しくない
現在の北極星は天の北極からおよそ0.7度離れています。そのため完全に動かない点ではなく、長い時間をかけて撮影すると天の北極の近くを小さな円を描くように動いて見えます。
北極星は天の北極と完全に同じ場所にはありません。国立天文台の解説では、北極星は天の北極から少し離れたところにあり、長時間の観測では小さな円を描くことが説明されています。短い時間に肉眼で見ると変わらないように見える、という表現の方が正確です。
例えばカメラを三脚で固定し、北の空を長時間撮影すると、多くの星が弧を描く写真になります。北極星も中心から少しずれた場所で短い弧を描くことがあります。撮影では三脚の安定、光害、露光時間なども影響します。「線が短い=完全な静止」ではなく、「回転中心に近いほど動きが小さく見える」と理解すると納得できます。
北極星が示す「北」とは何か
北極星は、北の方角を知るための目安として使われてきました。けれども、北極星を真上に見られる場所と、地平線に近く見える場所があります。北半球では、自分のいる地点の緯度が高いほど北極星が空の高い位置に見える傾向があります。理想的な幾何学では、北極星にほぼ一致する天の北極の高度は観測地点の北緯に近くなります。
例えば北緯約35度にいる人なら、天の北極は地平線から約35度の高さです。北極星を見ただけで磁石の北と完全に一致すると決めつけてはいけません。方位磁針が示す磁北、地理上の北、空における天の北極は、似ていても基準が異なるものです。大まかな目印として便利でも、精密な位置決めには測定と補正が必要です。
星座から北極星を探すとき
北極星を探す方法には北斗七星やカシオペヤ座を目印にするものがあります。ただし北斗七星がいつでも空の同じ高さに見えるわけではありません。季節や時刻、観測する緯度によって、地平線に近くなったり、建物や地形に隠れたりします。北極星自身も都市部の明るい空では見つけにくいことがあります。
観察するなら、信頼できる星図で北の方向を確認してから、街灯を直接見ない位置で空を見上げます。望遠鏡は必要ありません。暗い場所へ移動する場合は安全な場所を選んでください。スマートフォンの方位表示も周辺の金属や磁石でずれることがあるので、複数の手掛かりを使うと確かめやすくなります。
何千年後も同じ北極星なの?
地球の自転軸が向く方向は長い時間をかけて少しずつ変化します。「歳差」と呼ばれる運動です。国立天文台によると地軸の方向は約2万6000年の周期で大きく一回りするため、将来も現在の北極星がずっと最も便利な目印であるとは限りません。昔は別の星が天の北極の近くに見えていた時期もあります。
一晩という短い時間で考えると、北極星は動かないように見えます。しかし何千年という長さで考えれば、基準となる地軸の方向そのものが変わります。「変わらない」という主張は、観測する時間の幅を決めなければ評価できません。一晩の観察と地球の長い歴史を、同じ意味の「いつも」でまとめないことが大切です。
空の回転中心を見つける図の描き方
紙に小さな点を中心として置き、その周囲へ半径の違う三つの円を描いてみます。中心に近い円では、同じ角度だけ回転しても移動する距離は短く、外側の円では長くなります。回転の角度は同じでも、見かけの移動量が違うという関係です。北極星は天の北極に近いため、この図の内側にいる星にたとえられます。遠い星が動く大きさと、北極星がほとんど動かないことを同じ回転の仕組みで理解できます。
また、「北極星はどの国からでも見える」という話も正しくありません。北半球では観測しやすい場所が多い一方、南半球のほぼ全域では地平線の下になるため見えません。日本国内でも山や建物の陰になる場合があります。地球の中心から見た方向と、自分の立つ場所からの見え方を混同しないようにしましょう。地球儀の上に自分の地点と観測者の視線を描くと、同じ恒星でも見える高さが変わる理由が分かります。
北極星を基準に星の距離感を考えるとき
北極星の周りを回って見える星は、すべて同じ速さで宇宙空間をぐるぐる飛んでいるわけではありません。地球の自転による見かけの運動を、天の北極を中心とした円で表しているのです。北極星から角度として離れた星ほど、同じ時間に描く弧が長くなるのは、紙に描いた大きな円と小さな円の違いに似ています。しかし、これは星までの実際の距離が遠いことを意味しません。天球上の角度の差と、宇宙空間で何光年離れているかは別の測定です。見かけの位置の図から、本当の距離を読み取らないようにしましょう。
同じ星でも観測の時間尺度で答えが変わる
数分なら北極星の位置の変化は見つけにくく、数時間の写真なら少し動いていることが分かり、何千年という歴史では別の星が北の目印になり得ます。三つの説明は矛盾しません。扱っている時間尺度が違うためです。科学では何を「変化」と呼ぶかも、どこまで細かく測るかで変わります。
次に夜空を見るときは、北極星とその周囲にある別の星の位置を記録し、同じ夜にもう一度見てください。観測は大まかなスケッチだけでも構いません。北極星から離れた星ほど大きな弧を描くように見える理由を、自分の言葉で説明できれば、地球の自転と天の北極の関係が理解できています。

