右肩上がりのグラフを延ばせば未来が分かる? 5日間のデータで予測を試す

一週間ほど続けて、何かの数字が毎日増えていたとします。例えば学校の図書委員会が、休み時間に貸し出した本の冊数を記録していたら、毎日少しずつ増えている。「このままなら来週はもっと増える」と予想したくなるかもしれません。

でも、グラフの線を右に伸ばせば、未来がその通りになるのでしょうか。過去の数字を説明することと、未来の数字を当てることは別の仕事です。架空の記録を使って、どこで予測が外れやすくなるかを試してみましょう。

きれいな一直線を作ってみる

ある架空の図書室で、一日に貸し出された本の冊数を次のようにします。

日 月 火 水 木 金
貸出冊数 10 15 20 25 30

一日たつごとに5冊ずつ増えています。この五つの点をグラフにすると、きれいな直線上に並びます。そこで土曜日を35冊、日曜日を40冊と予測するとしましょう。

数学的な規則として「毎日必ず5冊増える」と条件を決めた問題なら、この答えで正しいです。しかし現実の図書室では、土日は学校が閉まっているかもしれません。図書室へ来る人数が変わることもあります。グラフの数字は同じでも、どの条件が続くか分からなければ予測にならないのです。

まず「何の日のデータなのか」を確かめるだけで、延長した線の意味が変わります。

いくつまで増え続けると考えてよい?

今度は教室の本棚に置ける本が最大50冊で、そこへ毎日5冊ずつ追加していると想像してください。最初に10冊あり、五日目に30冊、さらに日数がたつと45冊、50冊と増えます。

もし毎日5冊増える線をそのまま延ばすと、九日目には50冊、十日目には55冊になります。しかし「本棚には50冊まで」という条件を守るなら、55冊は入りません。

線の計算自体が間違っているわけではありません。「毎日5冊増える」という規則と「50冊まで」という制約を同時に守れない地点が出てきたのです。

これは予測が現実を越えてしまう分かりやすい例です。人の数、座席、作業時間、予算など、現実には増え続けられないものがあります。グラフを延ばすなら、いつか止まる条件はないかも調べなければなりません。

一つの線では分からない三つのこと

たとえば五日間の貸出冊数だけを見ても、次のことは分かりません。

最初に、同じ人が何冊も借りたのか、利用者そのものが増えたのか。次に、図書室で何かのイベントが行われたのか。最後に、次の週も同じ日程や条件が続くのか。

同じ「5冊ずつ増えた」という数列でも、理由が異なれば翌週の予想は変わります。「図書室の利用者が増えている」と言いたいなら、貸出冊数とは別に利用者数を調べる必要があります。貸出が30冊の日に10人が来た場合と、30人が来た場合は、見えてくる姿が違うからです。

このように、一つの数字が増えた理由を一つに決めないことが重要です。グラフは変化を示す助けになりますが、変化の原因を自動的に教えてはくれません。

明日の予測を三種類作って比べよう

金曜日の値が30冊だったとします。そこで土曜日の予測を三つ書いてみます。

A「これまで通り5冊増えて35冊」。B「休日で閉館するなら0冊」。C「特別開館で来館者が増えるなら50冊近くになるかもしれない」。どれが正しいかは、追加の条件を確かめなければ決められません。

ただし、BとCは実際の結果ではなく条件付きの仮説です。今見えているデータだけで「必ず休館だ」「イベントがあるはずだ」と断定することはできません。条件を置くことと、条件が事実であることを区別する必要があります。

この練習では、単に予測を当てるよりも、「自分はどんな前提を置いているか」を言葉にすることが目的です。同じデータから複数の予測を作ってみると、一つの線を疑うための材料が増えます。

次の日の数字が出たら、何を振り返る?

仮に実際の土曜日は0冊だったとします。するとAの35冊という予測は外れました。だからといって「グラフを使ったのが悪い」と考える必要はありません。足りなかった条件が「休館日」だったと分かります。

もし実際の土曜日が32冊なら、35冊と少しずれています。この場合は休館日以外の要因や、毎日5冊という規則がどこまで続くかを考えられます。結果を見たあとで予測の前提を修正することが、次の予測をよくするための一歩です。

ここで気を付けたいのは、結果を知ってから「最初から分かっていた」と言い換えないこと。事前の予測とその理由を一行だけでも残せば、自分の考え方を後から検証できます。

線を引く前に、線の外を想像する

グラフを読むことと、原因を調べることと、未来を予測することはつながっていますが、同じではありません。

五日間の記録から分かったのは「五日間で5冊ずつ増えた」ということです。そこから先の数字は、条件が続くという仮説の上に立っています。

あたまの道具箱の思考OSでいう「仮説と検証」をこの場面に使うなら、未来の線を描くことが第一歩、実際の値と比べて前提を見直すことが次の一歩になります。グラフの延長線は、未来そのものではなく、試してみる仮説です。そう考えると、外れた予測も次の理解に役立てられます。

すべての数値・学校の条件は説明のための架空例です。特定の学校の利用実績ではありません。

関連するOS・記憶学

伸び続けるグラフを予想するときは、休館日や上限など、予想を外す条件も調べてみます。この見方を別の場面にも広げたいときは、思考OS 第3章「仮説と検証」を読んでみてください。

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