記憶学 記憶学Web版 第12章 最初の一か月 ── 小さく始めて、子どもに渡す 2026年7月29日 『記憶学について』全体の目次へ新しいことを始める日、 人は、張り切る。 初日に、二時間やる。 三日目に、一時間やる。 五日目に、忙しくなる。 七日目に、思い出さなくなる。 だから今回は、逆をいく。 初日から、五分しかやらない。 この一か月の、たった一つの目的 ここまでの章で、道具箱はいっぱいになった。三工程。枝。変な絵... ゆきむら
記憶学 記憶学Web版 第11章 つまずきには、型がある ── タイプ別の処方箋 2026年7月29日 『記憶学について』全体の目次へ兄には、効いた。 変な絵を作ったら、 面白がって、すぐ覚えた。 同じやり方を、弟にやってみた。 固まってしまった。 「絵って、何?」 同じ家の、同じ食卓で、 同じ言葉を覚えるのに、 兄と弟は、 違う場所でつまずいていた。 同じ「覚えられない」の下に、違う子がいる ここまで渡してきた道具は、... ゆきむら
記憶学 記憶学Web版 第10章 教えない勇気 ── 親の役割は、質問すること 2026年7月29日 『記憶学について』全体の目次へその夜も、教えていた。 三回、説明した。 四回目で、声が大きくなった。 「なんでわからないの」 子どもは、下を向いた。 夜、寝顔を見ながら思う。 あんな言い方、 したかったわけじゃないのに。 明日こそ、穏やかに。 そう思って、また同じ夜が来る。 あの声は、悪意ではない 第4部は、技術ではな... ゆきむら
記憶学 記憶学Web版 第9章 漢字・歴史・理科・算数 ── 見えないものを、見えるようにする 2026年7月29日 『記憶学について』全体の目次へリビングのテーブルに、 漢字ドリルが置いてある。 その横に、歴史の一問一答。 理科のワーク。 算数のプリント。 教科が四つ。悩みも四つ。 親は、どこから手を付ければいいのか、 わからなくなる。 でも、よく見てほしい。 四つの山は、同じ形をしている。 漢字が覚えられないときに、この章で見るこ... ゆきむら
記憶学 記憶学Web版 第8章 英単語 ── 音でつかまえ、映像で住まわせる 2026年7月29日 『記憶学について』全体の目次へ子どもの単語帳は、 角が折れている。 赤シートも、くたびれている。 「三周した」と、本人は言う。 嘘ではないのだろう。 でも、テストの余白には、 空欄が並んでいた。 三周、通り過ぎただけの道に、 住人は、いなかった。 英単語が覚えられないときに、この章で見ること 単語帳を何周しても残らない... ゆきむら
記憶学 記憶学Web版 第7章 100個の言葉を置く ── 家を増やし、記憶の住所を作る 2026年7月29日 『記憶学について』全体の目次へ十個、覚えられた。 目を閉じて、家の中を歩いて、 十個、ぜんぶ言えた。 子どもが、顔を上げて言う。 「ねえ、もっとできる?」 その一言を、 私は何度も待っていた。 十の次は、百関連して読む第5章 最初の10地点を作る第6章 地点で事件を起こす 前の章までで、子どもは十個覚えられるようになっ... ゆきむら
記憶学 記憶学Web版 第6章 物語の中でなら、子どもは覚える ── 物語型メモリーパレス 2026年7月29日 『記憶学について』全体の目次へ昨日の授業の内容は、 思い出せないと言う。 その同じ口で、 去年見た映画のあらすじを、 話し始める。 登場人物の名前。 裏切りの場面。 最後のセリフまで。 一度しか、見ていないのに。 子どもの記憶は、物語の形をしている うちの子は覚えられない、という相談を受けるたび、私はその子と少し雑談を... ゆきむら
記憶学 記憶学Web版 第5章 場所は、忘れない ── メモリーパレス入門 2026年7月29日 『記憶学について』全体の目次へ十年前に住んでいた部屋を、 いまでも歩ける。 目を閉じれば、 玄関のドアの重さ。 三歩目で軋む、廊下の板。 換気扇の音。 窓から見えた、隣の家の屋根。 覚えようとしたことは、 一度もないのに。 あなたは、覚えようとしなかったものほど、覚えている ここまでの三章で、入れる・残す・取り出すとい... ゆきむら
記憶学 記憶学Web版 第4章 取り出す ── 思い出すたびに、記憶は強くなる 2026年7月29日 『記憶学について』全体の目次へ「じゃあ、思い出してみて」 そう言った瞬間、 子どもの顔が、変わる。 さっきまで、笑っていたのに。 肩が、少し上がる。 目が、机の一点を見る。 まだ何も間違えていないのに、 もう叱られる準備をしている。 覚えたはずなのに思い出せないときに、この章で見ること 答えを見れば「知っていた」と思え... ゆきむら
記憶学 記憶学Web版 第3章 残す ── 記憶は保存ではなく、手入れである 2026年7月29日 『記憶学について』全体の目次へ久しぶりに、実家に帰った。 自分の部屋が、そのまま残っている。 ベッドの位置も、カーテンの色も、 あの頃のままだ。 机の引き出しを、開けてみる。 何が入っていたか、思い出せない。 毎日、開けていた引き出しなのに。 部屋は残っている。 でも、道のほうが、消えかけている。 忘れることは、故障で... ゆきむら