選ばなかった案は失敗だった? 実現しなかった未来をどう評価するか

A案を選んだあとで結果が悪いと、「B案にしておけばよかった」と思うことがあります。しかし、B案を選んだ世界は実際には起きていません。別の案ならどうなったかを考えることは大切ですが、起きなかった出来事を確定した事実のように語ることはできません。

傘を買ったのは失敗だった?

架空の例として、雨が降るかもしれない日に傘を1,000円で購入したとします。その日は雨が降らず、買わなくても困りませんでした。結果だけを見れば、1,000円を使わない方が手元のお金は多かったでしょう。

しかし購入時点では、雨が降る可能性や濡れたときの不便も考えていたはずです。買わなかった場合に必ず晴れていたことは、あとから分かった結果です。「買った判断が悪かった」と結論づけるには、買った時点にどんな情報があったかを確認する必要があります。

判断の質と結果の良し悪しを分ける

架空の抽選で、当たる確率が90%の箱Aと10%の箱Bがあり、当たると同じ景品がもらえるとします。ほかの費用が同じなら、当たる可能性だけを重視する判断ではAが有利です。

それでも、Aで外れ、Bを選んだ人が当たることはあります。その一回の結果だけで「Bを選ぶべきだった」とは言えません。判断は当時の情報と目的に照らして評価し、結果はその後に分かった事実として別に扱います。

選ばなかった案には何が見えていない?

アルバイト先をA店に決めた人が、B店ならもっと働きやすかったと想像するとします。しかしB店に行った経験がなければ、実際の人間関係やシフトの状況は分かりません。求人票の条件は確認できても、日々の働きやすさまで完全に予測できるわけではありません。

ここで「Bの方が必ず良かった」という結論を作ると、起きなかった未来へ都合のよい条件だけを当てはめてしまいます。良かった可能性だけでなく、悪かった可能性もあると考える必要があります。

比較実験では何を工夫している?

新しい勉強方法Aと従来の方法Bを比べたい場合、一人の生徒が同じ日時・同じ問題で両方を同時に経験することはできません。そこで、条件が近い人たちを複数のグループに分け、結果を比較する方法があります。

ただし、偶然の差やもともとの学力差などが残る場合があります。比較実験の工夫は、起きなかった未来を直接見るためではなく、別の条件なら結果がどう違ったかを、できるだけ筋道立てて推測するためのものです。

「後悔」と「次の改善」を混ぜない

選ばなかった案を思い出して後悔するとき、私たちは結果への感情と判断の検証を一緒にしてしまうことがあります。感情そのものを否定する必要はありません。ただし次回の判断を良くしたいなら、何を知らなかったか、何を見落としたかを具体的に探す方が役立ちます。

例えば、店を選んだあとで予想以上に移動時間がかかったなら、次回は距離だけでなく乗り換え時間も確認する、と改善できます。「店Bならすべてうまくいった」と考えるより、次の選択に使える情報が残ります。

損した額を一つに決められない場合

A案を選んで費用が1万円、B案は見積もり8,000円だったとします。単純な差は2,000円です。しかしB案では追加料金が発生したかもしれず、実際には分かりません。見積もり金額と確定した支払額は、同じ確実さの数字ではありません。

比較するなら「Aで確定した1万円」「Bの事前見積もり8,000円」「Bの追加費用は未確認」と分けて書きます。未確認の金額を0円と決めつけないだけでも、判断の記録が正確になります。

記録を使った小さな検証

何かを選ぶ前に、選択肢ごとの利点・心配な点・まだ分からない点を三列で書いておきます。一週間後や一か月後に、実際に起きた結果を追加してください。このとき「当初は想定していたが起きなかったこと」と「予想していなかったこと」を分けます。

選ばなかった案については、あとから確認できた事実だけ追記します。例えば、別の店の営業時間が変更されたことは確認できるかもしれません。しかし「自分がそこで働いていたら楽しかった」は依然として想像です。この境界を保ちましょう。

前に使ったお金とは別の問題です

これからどうするかを決めるとき、すでに支払って取り戻せない費用に引きずられる問題があります。一方、ここで扱っているのは、選ばなかった結果を確定できないという問題です。どちらも判断を難しくしますが、混同しない方が考えやすくなります。

「いま持っている情報で、次に何を選ぶか」と「もしあのとき違う選択をしていたら」は別の問いです。後者の答えを断定できなくても、前者を改善することはできます。

結果がよかったから判断も正しい?

逆の例も考えてみます。十分に確認せずに商品を買ったのに、たまたま期待通りだった場合です。結果が良かったこと自体は事実ですが、確認を省いた方法がいつでも良いとは限りません。

一度うまくいった方法を次回も使うなら、なぜ良かったのか、どんな条件なら失敗しうるかを検討します。結果から学ぶことと、結果で過去の判断をすべて正当化することは違います。

二つの選択肢を後から比較する表

選択前にA案について「費用が確定」「時間は予想」、B案について「費用も時間も見積もり」と書いたとします。選択後にA案の実績が分かったとしても、B案の時間はまだ見積もりのままです。

この表では「確定」「予想」「未確認」という表示を消さずに残します。きれいな数字を並べるより、どの情報の確かさが違うかを読める方が、次回の判断の改善につながります。

誰かの判断を評価するとき

他人の選択について、結果を知っている私たちは「あの時ああすればよかった」と考えがちです。しかし本人が当時知りえた情報は、後から記事や資料で知った情報とは違うかもしれません。

過去の決断を評価するなら、その時点の条件、得られた情報、実際の選択を分けます。結果への批判が必要な場合でも、起きなかった未来を確定した事実にすることは避けましょう。

起きなかった結果は、仮説として使う

選択の失敗から学ぶために、別案を考えることには価値があります。ただし、選ばなかった世界を実際に見たかのように扱わないことが重要です。確定した結果、当時分かっていた情報、あとから考えた可能性を分けると、後悔を次の判断へ生かしやすくなります。

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