一番売れた商品が一番もうかる? 売上・粗利益・在庫を比べる

店の販売ランキングで一位の商品は、その店に最も利益をもたらしているのでしょうか。たくさん売れていることは分かっても、仕入れにいくらかかったか、売れ残りがどれだけあるかまではランキングに書いてありません。

架空の雑貨店の数字を使い、「売れた数」「売上高」「粗利益」を別々に並べてみましょう。文化祭で値段をどう付けるかという問題とは違い、すでに扱っている複数商品の成績をどう評価するかが今回のテーマです。

3つの商品を同じ表に置く

Aはノートで、販売価格200円、1冊の仕入れ原価120円、販売数100冊とします。Bはペンケースで、価格800円、原価500円、販売数35個です。Cは限定ポーチで、価格1,500円、原価900円、販売数20個です。数字は学習用の仮定であり、実在商品のデータではありません。

商品 販売数 売上高 仕入れ原価合計 粗利益
A ノート 100 20,000円 12,000円 8,000円
B ペンケース 35 28,000円 17,500円 10,500円
C ポーチ 20 30,000円 18,000円 12,000円

売れた数の一位はA、売上高の一位はC、粗利益の一位もCです。しかし、同じ数の一位だからといって、今後の仕入れ先としてCが必ず最善とは限りません。

利益を計算する式の意味

ここで使った粗利益は「売上高−売れた商品の仕入れ原価」です。Aは200円×100冊=20,000円の売上があり、120円×100冊=12,000円が原価なので、粗利益は8,000円です。Bは(800−500)円×35個=10,500円、Cは(1,500−900)円×20個=12,000円です。

ただし、店の家賃、人件費、決済手数料、包装費、廃棄などの費用はまだ引いていません。ここで「粗利益=店が手元に残せる最終利益」と言うと誤りです。売上が大きい店でも、運営費が高ければ最終的な利益は小さくなり得ます。

販売ランキングは目的によって役立ちます。たくさんの人に届けたいなら販売数、売場の売上を知りたいなら売上高、商品ごとの収益への寄与を見たいなら粗利益を確認します。ランキングの順位より、何を並べ替えたランキングなのかが大切です。

粗利率と粗利額は違う

Aの粗利益8,000円を売上20,000円で割ると、粗利率は40%です。Bは10,500÷28,000=37.5%、Cは12,000÷30,000=40%です。AとCの粗利率は同じですが、粗利額はCの方が4,000円多くなりました。

「率が高いから最も良い商品」と判断すると、何個売れたかが抜けます。逆に「額が大きいから良い」とすると、在庫の置き場所や作業時間が抜けます。小さな商品を短時間で多数売る店と、大きな商品を時間をかけて販売する店では、比べたい制約が変わるはずです。

売れ残りがあるとどうなる?

仮にCを50個仕入れて、20個しか売れなかったとします。売れた20個の粗利益は12,000円ですが、未販売の30個には900円×30=27,000円の仕入れ資金がまだ使われたままです。売れ残りを直ちに損失27,000円と扱うわけではありません。後日売れる可能性があるからです。ただし、資金が回収できていないことは事実です。

もし商品の流行が終わったり、傷んだりして値下げが必要になれば、当初の計画通りの利益を得られない可能性があります。粗利だけの表に、仕入れ数量、残数、いつまで売れる商品かを加えると見え方が変わります。

値下げして完売させた方が良い?

Bのペンケースを例に、追加で10個が売れ残っているとします。原価500円の商品を通常価格800円で5個売ると、追加粗利益は300円×5=1,500円です。価格を650円に下げて10個売り切れれば、追加粗利益は150円×10=1,500円です。粗利益だけなら同じでも、売れ残り数量は違います。

ただし、値下げの広告費や接客の手間は含みません。また「価格を下げれば10個全部売れる」というのは仮定で、保証はありません。予測に不確実さがある場合は、両方の売上が計画から外れたケースも計算します。

自分で試す:目的を変えて順位を作る

身近な架空の3商品を用意し、価格、原価、販売数を自由に決めてください。売上高と粗利益を計算し、それぞれの一位を探します。次に「売場がとても狭い」「仕入れ資金が少ない」「来店客へ低価格で提供したい」という条件を一つずつ加えてみましょう。

順位が変わらなくても、評価の理由は変わるかもしれません。商品選びは数式だけで終わる問題ではなく、何を実現したいかという目的が必要です。売上ランキングは一つの答えであって、商品の総合成績表ではありません。

作業の時間を使って商品を比べる

ある商品の梱包に毎回5分かかるのに対し、別の商品は30秒で済むとします。一日に対応できる時間が限られる店では、粗利益だけを比べると作業負担の違いを見落とします。

架空の条件として、A商品の粗利益は1個80円、梱包30秒。C商品の粗利益は1個600円、梱包5分とします。梱包作業60分だけを使えるとき、理論上はAを120個で9,600円、Cを12個で7,200円の粗利益を得られます。しかしこれは注文が十分あり、作業が一定で、ほかの費用がない場合です。売れる数量の上限が小さければ、計算結果は実現しません。

「商品一つの粗利」と「限られた時間で得られる粗利」は別です。だから店全体の都合を考えるときは、何が足りない資源なのかを確認します。時間が足りないのか、売場が狭いのか、仕入れ資金が限られているのかで、同じ商品表の読み方が変わります。

新商品を試すなら最初から大きく仕入れない方法もある

架空の新商品を50個仕入れると、全部売れれば大きな粗利益になるかもしれません。しかし売れ行きが分からない段階では、少ない数量を試して反応を見る選択肢もあります。最初の小ロットでは仕入れ単価が高くなる可能性もあるので、少量が必ず得だとまでは言えません。

自分で考えるなら「売れる見込みが外れた場合、どれくらい資金が残るか」を計算してみます。好調な場合の最大利益だけでなく、半分しか売れなかった場合も並べます。売上ランキングでは分からない在庫の危険が、判断へ入ってきます。

まとめ

売れた数、売上高、粗利益、粗利率、在庫はそれぞれ異なる数字です。一番売れた商品を最も利益の大きい商品と決めつけず、どの数字を比べたいのかを先に明確にしましょう。

おすすめの記事