
朝5時に起きた人が「今日は2時間も得した」と言いました。普段7時に起きるなら、朝の時間が2時間増えたように感じます。けれども、前の晩に2時間早く寝ていたら、起きている時間の合計は変わらないかもしれません。早起きで増えるのは、一日が24時間より長くなることではなく、起きている時間の配置です。
早起きを勧める話と、夜の方が活動しやすいという話が食い違うときも、まず何を増やしたいのか考えると整理しやすくなります。
24時間の中で何が移動する?
架空の一日を計算します。Aさんは23時に寝て7時に起きます。睡眠時間は8時間、起きている時間は16時間です。翌日は21時に寝て5時に起きました。この日も睡眠8時間、起きている時間は16時間です。朝の活動時間は増えましたが、夜の活動時間はその分減っています。
同じ人が23時に寝たまま5時に起きたなら、睡眠は6時間です。起きている時間は18時間になりますが、睡眠を2時間削っています。仕事や勉強に使える時間が本当に2時間増えたかは、日中の眠気や集中力なども考えなければ分かりません。
ここからは「早起きするのが悪い」という結論にはなりません。大切なのは、時間を増やしたつもりで何を移動し、何を減らしているのかをはっきりさせることです。
自由時間と、使いやすい時間は別です
Aさんの生活をもう少し細かく見ます。朝7時に起きる日は、家族が活動していて身支度に30分かかり、勉強の時間が取りにくいとします。5時に起きる日は家が静かなので、同じ30分でも集中しやすいかもしれません。
ただし、人によっては朝の30分は眠く、夕方の30分の方が頭が働くこともあります。時間帯を変えることと、作業の質が良くなることは同じではありません。「早起きしたから集中できた」と感じても、睡眠量、周囲の静かさ、仕事の難しさなど複数の条件が変わっているかもしれません。
早起きを評価するなら、起床時刻だけでなく、前夜の就寝時刻と、その時間帯で実際に何ができたかをセットで見る必要があります。
30分早起きして、一週間で何が変わる?
架空の例として、毎日30分早く起きて、週5日だけ朝に本を読むとしましょう。計画した読書時間は30分×5=150分、2時間30分です。ここで「一週間で2時間30分増えた」と言うためには、その読書が、もともと別の時間帯にしていた活動の移動ではないかも考える必要があります。
例えば、以前は夜に30分読んでいた本を朝に移しただけなら、読書の総時間は増えていません。以前は読書せず動画を見ていた時間を朝の読書に変えたなら、読書時間は増えていますが、その分動画を見る時間は減っています。増えたのは時間そのものではなく、何に使うかという配分です。
同じ2時間30分でも、本人が望んだ活動に使えたなら価値があります。目的が明確なら、時間を「得した」と表現する感覚にも理由があります。
睡眠を削って時間を作る方法には注意する
必要な睡眠時間には個人差があり、年齢などによっても変わります。成人・子どもを問わず、「何時間にすれば誰でも元気」と一つの数値だけで判断できません。早起きのために無理に睡眠を減らし、日中の活動に支障が出るなら、その計画を見直す必要があります。
勉強や仕事の時間を増やしたいときは、まず一日の記録を見て、必要でない活動を減らす、通学・通勤や家事の順番を調整する、集中しやすい時間へ移動するといった別の方法も考えられます。睡眠を削ることだけが選択肢ではありません。
また、無理に理想の起床時刻を決めるより、今の生活を崩さずに続けられることを優先してよいでしょう。
実験:起床時刻ではなく「使えた時間」を記録する
三日間、起きた時刻・寝た時刻・実際に取り組んだ活動を書いてみます。例えば「7時起床・勉強20分」「6時30分起床・勉強25分」「7時起床・勉強35分」だったとします。早起きした日より、普段どおり起きた三日目の方が長く勉強できています。
この結果だけで「早起きは意味がない」とは言えません。勉強する内容や気分が違った可能性があるからです。ただ、起床時刻を唯一の原因として扱うには無理があると分かります。
次は、寝た時刻を無理に変えず、勉強を始める前の準備を減らすなど、一つの条件を変えて試します。何が影響したのか完全に確かめるのは難しくても、自分にとって使いやすい時間帯を探す材料が増えます。
時計を前に動かすより、目的をはっきりさせる
「毎朝5時に起きる」は時刻についての目標です。「落ち着いて15分、英単語を思い出す時間を作る」は活動についての目標です。後者が目的なら、必ずしも5時に起きなくても達成できるかもしれません。
家族の生活や仕事、通学、体調によって使える時間は違います。他人が早起きで成功した例を見ても、同じ時刻を自分へそのまま当てはめる必要はありません。自分が増やしたい活動と、そのために変更してよい条件を分けて考えることができます。
早い時刻にできないこともある
図書館やお店の営業時間、家族との食事の時間、公共交通機関の運行時刻は、自分の起床時刻を変えても同じとは限りません。早起きした時間に目的の施設を使えないなら、その活動を前倒しにできない場合があります。逆に朝に家事を済ませて夜に別の予定を入れられる人もいるでしょう。自分だけの時計を動かす前に、周囲の予定や必要なサービスがどの時間帯に使えるかを確認します。
まとめ
早起きは、一日の長さを変えるのではなく、活動を置く時間帯を変える方法です。睡眠を削っているのか、夜の活動を朝に移したのか、望む活動が増えたのかを区別すると、自分の生活に合う工夫を考えられます。「何時に起きたか」だけでなく「何に使えたか」を確認してみましょう。

