
授業で班を作るとき、「人数を同じにすれば公平」と思いがちです。でも、人数が同じでも、経験の差や役割の負担が大きく違えば、不公平と感じる人がいるかもしれません。反対に、一人ずつの力を完全にそろえようとすると、友達と組みたい人の希望を無視することになります。
班分けには一つの正解があるというより、何を大事にするかによって良い分け方が変わるという特徴があります。数学の「制約」と「評価基準」を使って考えてみましょう。
人数が等しいことと、作業が等しいことは違う
架空の12人のクラスを、4人ずつ三つの班に分けます。人数だけなら、どの班も同じです。しかし発表資料を作るとき、ある班にはパソコン操作に慣れた人が4人、別の班にはまだ操作を練習している人が4人集まったとします。作業の進み方が違う可能性があります。
このとき「操作が得意な人を一人ずつ配置すれば公平」と考えられます。ただし、得意な人に指導役の負担が集中するかもしれません。能力を均等に分ければ、作業負担まで均等になるとは限りません。
最初に「公平にしたいもの」を決める必要があります。参加する機会なのか、仕事量なのか、完成する作品の条件なのか。どれも重要ですが、一度に完全にそろえるのは難しい場合があります。
数字で見える分け方と、数字で見えない分け方
12人に架空の「作業経験点」を付け、4人ずつの班の合計をすべて12点にできたとします。経験点の合計なら均等です。しかし、得意分野が資料調査なのか発表なのかでは、同じ12点でも必要な役割を満たせないかもしれません。
経験点は人の価値を表す数字ではありません。班分けの一つの条件を見えるようにしただけです。安易に人を点数づけして序列を決めるために使うべきではありません。むしろ、この単純な点数では見えないことが多いと気づくことが目的です。
実際の班分けでは、「発表したくない」「人前で緊張する」「一人で調べるのが得意」などの事情もあります。本人の同意なく能力や個人情報をさらすのは避ける必要があります。人を数として扱うときほど、数字にできない事情を考えることが重要になります。
全員の希望を同時に満たせるとは限らない
今度は6人を2人組にします。AさんはBさんと、BさんはCさんと、CさんはAさんと組みたいと希望したとします。三人の希望をすべて満たす2人組は作れません。誰かの希望が通れば、別の希望は通らないからです。
この状況を「先生の分け方が下手だから」とだけ考えると、そもそも条件が両立しないことを見落とします。必要なのは、希望が衝突しているとき何を優先するかというルールです。
「希望の優先順位を一つだけ出してもらう」「今回は抽選で決め、次回は組合せを変える」「活動の目的に合う組合せを先に考える」。どれにも利点と弱点があります。絶対に不満が生じない方法を探す前に、なぜすべての希望を満たせないのかを確かめます。
抽選は公平でも、結果は均等にならないことがある
くじ引きで決めれば誰にもえこひいきしない、という考え方があります。選ばれ方の機会をそろえるという意味では、抽選は分かりやすい方法です。ただし、結果のばらつきまで防げるわけではありません。
例えば6枚のくじのうち、3枚が赤、3枚が青で、無作為に引けば、特定の人がどちらに入るかは予測できません。その結果、経験のある人がたまたま同じ班に集まる可能性もあります。「機会の公平」と「結果の均等」は異なるので、どちらを優先したいかを考える必要があります。
経験を分散させることを最優先する授業と、新しい人と交流することを最優先する授業では、望ましい分け方も変わるでしょう。目的を無視して、どんな場合も抽選が最良だと決めることはできません。
実験:班分けルールを三つ作る
架空の8人を4人ずつ二班に分けるとします。条件は「男女などの個人属性を使わない」「希望は必ず本人から聞く」「作業に必要な役割を両班にそろえる」です。さらに「仲のよい友達と組みたい」という希望もあるとします。
A案は完全抽選、B案は得意な役割を各班に分ける、C案は希望を優先し、足りない役割を教師が補助する方法です。どの案にも得られるものと失うものがあるはずです。
表に「希望」「必要な役割」「抽選の納得感」「教師の補助量」という列を書き、各案を比べます。点数を付けるときも、その点数が誰にとっての評価なのかを考えてください。児童と教師では重視するものが違う可能性があります。
一度の班分けだけで評価しない
ある一回の班分けで希望が通らなかった人でも、次の活動では希望を通しやすくする仕組みがあれば、長い期間での納得感が変わるかもしれません。毎回同じ人が同じ負担を背負うことを避けるなら、過去の組合せや役割の履歴を確認する方法があります。
ただし、過去に不満を言わなかった人が負担を感じていなかったとは限りません。班分け後に困りごとを相談できること、役割を調整できることも大切です。公平さは最初の組合せだけでなく、途中で直せるかどうかにも関係します。
公平さを説明できることも、一つの価値です
班分けの方法を決める側は、「なぜこの組合せにしたか」を後から説明できるでしょうか。「何となく仲が良さそうだから」よりも、「必要な役割をそろえ、本人の希望を聞いて、衝突した部分は抽選にした」と説明できる方が、結果に不満があった人とも話し合いやすくなります。ただし、説明のために個人の苦手なことや家庭の事情を公表してはいけません。公平な手続きを考えることと、プライバシーを守ることは同時に必要です。
まとめ
グループ分けに唯一の公平な答えがあるとは限りません。人数をそろえる、希望を尊重する、役割を分散する、抽選の機会を等しくするといった基準が、場合によって衝突するからです。まず目的と守るべき条件を明らかにすると、どこで判断が分かれたのかを説明しやすくなります。

