平均点が上がったら全員が伸びた? 数字に隠れた違いを調べる

あるクラスの数学テストの平均点が、前回の60点から今回の70点へ上がりました。「クラス全体の成績がよくなった」と言えそうです。では、クラスの全員が前回より高い点を取ったのでしょうか。

平均点が10点上がったという情報だけでは、そこまでは分かりません。 同じ平均点でも、誰が伸びたか、点数がどれくらい散らばっているかによって、クラスの姿は変わります。実際に数字を作って確かめてみましょう。

平均点は、合計を人数で割ったもの

今回は5人の架空のクラスを考えます。前回の点数を40点、50点、60点、70点、80点とします。合計は300点なので平均は60点です。

今回の点数が50点、60点、70点、80点、90点なら、合計350点、平均70点。5人とも10点ずつ上がっています。この例では「全員が伸びた」という判断は正しいです。

一方、今回が30点、50点、70点、100点、100点 だった場合を考えます。合計は350点で平均70点。前回と同じ順に対応づければ、一人目は40→30点へ下がり、二人目は50→50点で変わらず、三人目は60→70点、四人目は70→100点、五人目は80→100点です。

平均は10点上がりましたが、5人のうち1人は下がり、1人は変わっていません。平均だけでは誰の得点が上がったか判断できないことが分かります。

同じ平均70点でも、散らばり方が違う

さらに、今回の得点が70点、70点、70点、70点、70点でも合計は350点で平均70点です。こちらは全員が同じ点数です。

今回の得点例 5人の得点 平均点 最高点と最低点の差
例A 50, 60, 70, 80, 90 70点 40点
例B 30, 50, 70, 100, 100 70点 70点
例C 70, 70, 70, 70, 70 70点 0点

同じ平均でも、例Cは全員同じ点数、例Bは差が大きい集団です。この違いを表す方法には「範囲(最大値-最小値)」や「分散」「標準偏差」などがあります。平均と散らばりを組み合わせると、同じ数字の裏側をより詳しく見ることができます。

ただし、この表では点数の分布を比べただけです。誰がどれだけ伸びたかを知るには、前回と今回の得点を一人ずつ対応させる情報が必要です。同じ5人の平均が上がっても、その情報がなければ個人の変化は分かりません。

「平均が上がった理由」は別に調べる

平均点が上がった原因も、平均値だけでは分かりません。授業が分かりやすくなったのか、生徒がよく勉強したのか、問題が易しくなったのか、受験した生徒の構成が変わったのか。複数の可能性があります。

例えば前回より今回の問題が簡単なら、点数が上がっても同じ力が伸びたとは限りません。逆に難しい問題で同じ点数なら、力が伸びている場合もあります。

ここで重要なのは、平均の変化という観測した事実と、その変化を生んだ原因についての推測を分けることです。グラフがきれいに右上がりでも、それだけで原因まで証明されたわけではありません。

グループ分けが変わると平均も変わる

同じクラスの同じ5人を比べるならまだ分かりやすいのですが、前回と今回で参加者が違う場合はさらに注意が必要です。

例えば前回は10人全員が受け、今回だけ欠席者がいて成績上位の5人だけが受けたなら、平均が上がってもクラス全体の学力向上を示しません。テストに参加した人が違うためです。

身近な例では、店の平均客単価、スポーツ選手の平均得点、商品の平均レビュー評価なども同様です。集計する人や対象が途中で変われば、平均の比較が難しくなります。「何の平均か」「誰を含めた平均か」をまず確認しましょう。

自分で試そう:平均を固定して差を広げる

5人の得点がすべて70点なら、平均70点で差は0点です。次に二人の得点を60点と80点へ変え、残り三人は70点のままにします。合計は変わらないので平均は70点ですが、差は20点になります。

さらに二人を40点と100点へ変えれば、平均は70点のまま、差は60点です。合計を変えずに、点数の散らばりだけを大きくできました。

この実験で分かるのは、平均は中心の位置を一つの数で表すが、ばらつきまでは教えてくれないということです。現実の集団を判断するとき、平均だけでなく分布を見たくなる理由が見えてきます。

では、何を確かめればいい?

学力が上がったか調べるなら、最初に比較するテストの難易度・受験者・採点方法がそろっているか確認します。次に、個人の前後の得点差を見て、上がった人、変わらない人、下がった人が何人いるか数えます。

さらに、平均だけでなく中央値や散らばりも見ると、一部の人の大きな変化に引っ張られていないかを考える助けになります。中央値は点数を小さい順に並べたときの真ん中の値です。人数が奇数なら中央の一人の値になります。ただし、平均との差を比べることと、誰が伸びたかを判定することは別です。例えば平均70点の5人の答案を名前なしで渡されたら、前回の答案との対応を決められません。得点が30点の人が前回40点だったのか、前回20点だったのかでは、同じ今回の30点でも変化の方向が逆になります。個人の伸びを論じるなら、同じ人の前後の記録を対応させる必要があります。

ただし、中央値も万能ではありません。平均も中央値も、集団を短く説明するための数字であり、一人ひとりの状況を完全に表すものではないからです。

まとめ:平均から分かることと、分からないこと

平均点が上がったのは、得点の合計を人数で割った値が上がったということです。それ自体は有益な情報ですが、全員が伸びたことや、授業の効果が原因だったことまで示すわけではありません。

平均を見たら、人数は同じか・誰が変化したか・散らばりはどうか・測り方は同じかも確かめてみましょう。数字を疑うためではなく、数字が本当に教えてくれる範囲を正しく知るためです。

おすすめの記事